学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問29
問題・正答・学習用解説
問題
延べ面積2,000m²の「寄宿舎」を「有料老人ホーム」に用途の変更(大規模の修繕又は大規模の模様替は伴わないものとする。)をする場合の取扱いについて、次の記述のうち、建築基準法その他の建築関係法令の規定の適用に関する内容として、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。2,000m²の寄宿舎を有料老人ホームへ用途変更する場合、建築確認は必要ですが、用途変更の工事完了後に行うのは原則として工事完了の届出です。新築等と同じ完了検査の申請まで必要とした点が誤りです。本問は大規模修繕・模様替を伴わないという条件です。
用途変更は、建物の形が大きく変わらなくても、そこで誰がどのように生活・活動するかが変わる行為です。寄宿舎と有料老人ホームは、どちらも寝泊まりする人がいるものの、避難時に必要な介助や、廊下・便所等の使いやすさの条件が異なります。したがって、建物が既にあるから手続や設備はそのままでよいとはいえません。変更後の用途に応じて、建築基準法、消防法、バリアフリー法等を確認します。
本問の変更部分は200m²を超える特殊建築物の用途変更で、確認が必要となる範囲です。しかし、そのことから工事完了時の手続も全て新築と同じと推測してはいけません。用途変更に準用する条文では、完了時の扱いが工事完了届に読み替えられます。また、完了検査申請が不要だから、変更後の避難・消防設備やバリアフリーの基準が任意になるわけではありません。工事前の確認、完了時の届出、実際に満たす設備等を三つに分けて理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。有料老人ホームはバリアフリー法の特別特定建築物に当たり、2,000m²の用途変更は適合義務の対象です。変更前に基準へ適合していなければ、廊下、階段、便所等の建築物特定施設の構造・配置を、所定の基準に適合させます。高齢者が日常的に使う施設として、段差や狭さによる利用の難しさを減らす必要があります。新築だけが義務の対象ではなく、所定用途への変更も対象となるため、既存の形をそのまま引き継げると考えないようにします。
選択肢2
(2)適当です。寄宿舎の寝室には非常用照明の設置規定の除外がありますが、有料老人ホームの居室へ用途変更した後も、その除外をそのまま引き継ぐことはできません。変更後の用途では原則として非常用照明が必要です。停電時に利用者や職員が床面や段差等を見分け、安全に移動するための設備です。同じ部屋で寝泊まりを続ける場合でも、法律上の用途の分類が変われば設備の要否も変わります。家具の配置より先に、変更後の法令上の用途を確定して判断します。
選択肢3
(3)適当です。用途変更後は、有料老人ホームとしてのスプリンクラー等の消防用設備等の基準へ適合させる必要があります。寄宿舎としての設備で足りていたとしても、避難に介助を要する人等が利用する施設では、早期の発見・消火等の要求が変わります。設備の具体的な種類や範囲は入居者の状況等の区分も確認しますが、本肢の変更後基準に合わせるという方向は正しいものです。用途変更が建物の骨組の大工事を伴わないことを、消防設備を見直さない理由にはできません。
選択肢4
(4)誤りです。用途変更では、工事前の建築確認に加え、工事終了後は工事完了の届出を行います。用途変更だけについて、新築と同じ完了検査の申請を要求する記述は誤りです。本問は大規模修繕や大規模模様替を伴わないと明示しているので、別の建築工事の手続を加えて判断しません。確認が必要な行為は全て完了検査まで同じ、という覚え方を避けます。完了届でも、確認した計画どおりに法令の基準を満たす責任は引き続きあります。
周辺知識
用途変更では、建物の名称だけでなく利用者と利用方法が変わります。寄宿舎では自力で避難できる人が主に生活することが想定される一方、有料老人ホームでは移動や避難に助けが必要な人等も暮らします。火災の発見、消火、避難の支援、日常の移動や便所の利用に必要な条件が変わるため、複数の法律を見直す必要があります。
建築基準法は採光、避難、防火等の建物の条件を、消防法は消防用設備等を、バリアフリー法は移動や利用のための施設の条件を定めます。ある法律で変更前の建物に例外があっても、他の法律や変更後の用途に同じ例外があるとは限りません。寄宿舎の寝室の非常用照明の除外が、老人ホームへ自動的に移らないことがその例です。
手続は、行為の種類に応じて確認します。用途変更の確認は、予定する新用途が必要な規定へ適合するかを工事前に確かめる入口です。完了時は工事完了届という取扱いで、新築工事の完了検査と区別します。ただし、増築や大規模修繕等を同時に行うなら、その行為による別の手続も考えます。本問の『伴わない』という条件を守り、必要以上の工事を想定せずに判断することが大切です。