学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問30
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、関係法令上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。耐震改修には、建物の増築、改築、修繕、模様替や一部の除却だけでなく、地震に対する安全性を高めるための『敷地の整備』も含まれます。本肢は耐震改修を建物本体の工事だけに限定しているため誤りです。
地震で建物に被害が出る原因は、柱や壁の強さの不足だけではありません。地盤や敷地を支える部分等に問題があり、その変形や崩れによって建物の安全が損なわれることもあります。そのため、建物の骨組に筋かい等を加える方法だけでなく、敷地の地震時の安全を改善する工事も、目的に応じて耐震改修の範囲に入ります。
例えば敷地を支える擁壁等を安全な状態へ整える工事が、地震に対する安全性向上を目的とする場合が考えられます。一方、花壇を造るなど地震安全と関係しない通常の外構工事まで、敷地内の工事という理由だけで耐震改修に含めるわけではありません。工事の場所と、その目的の両方を確認します。耐震診断は安全性を評価する行為、耐震改修は評価した問題等を改善する行為という区別も重要です。定義を建物の見える骨組だけへ狭めず、法が列挙した行為と地震安全の目的を対応させます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。認定された低炭素建築物新築等計画を変更する場合は、原則として所管行政庁の変更認定を受けます。軽微な変更等は別の扱いですが、認定後はどんな変更でも自由というわけではありません。断熱や設備等の条件を変えれば、当初認められた二酸化炭素の排出を抑える性能等を満たさなくなる場合があります。認定は特定の計画に対するものなので、変更後も基準へ適合するかを必要な手続で確認します。申請書等を出す前に、変更が軽微に当たるかを所定の条件で判定します。
選択肢2
(2)誤りです。地震に対する安全性向上を目的とする敷地の整備は、耐震改修促進法の耐震改修の定義に含まれます。建物の柱や壁を補強する工事だけが耐震改修ではありません。敷地やそれを支える部分の安全が損なわれれば、その上の建物にも危険が及ぶためです。ただし、あらゆる造園や外構工事を含めるのではなく、地震安全の向上という目的が必要です。定義の対象となる工事と目的をセットで読み、建物本体か敷地かという場所だけで除外しないようにします。
選択肢3
(3)適当です。令和5年1月1日から、所定の工事現場で技術者の専任を要する請負代金の下限は、建築一式工事では8,000万円へ引き上げられています。本肢の事務所の建築一式7,000万円はそれ未満なので、当該の専任義務はありません。前年までの7,000万円の基準を本年度へ使わないことが重要です。また、専任でなくてよいことは主任技術者等を配置しなくてよいという意味ではありません。現場の配置、専任、監理技術者となる下請金額等の条件は別に判断します。
選択肢4
(4)適当です。令和4年10月から、建築行為を伴わない既存住宅についても、所定の性能と維持保全計画等により長期優良住宅の認定を受ける制度があります。本肢は区分所有住宅を除く既存住宅で、構造・設備が長期使用構造等に該当する条件です。所有者が維持保全計画を作成して認定申請できます。新築時だけに認定機会を限らず、良質な既存住宅を長く使う取組も対象にします。古い住宅なら無条件に認定できるわけではなく、性能と計画の確認が必要です。
周辺知識
耐震診断と耐震改修は、評価と改善という関係です。診断で地震に対する安全性を調べ、必要に応じて柱・壁等の補強や、地震安全に関わる敷地の整備等を計画します。建物を強くする方法だけでなく、一部を除却して安全を改善する方法等も定義に含まれます。工事の名前より、地震に対する安全性向上という目的を確認することが重要です。
低炭素や長期優良住宅の認定は、計画した性能とその実施・維持が結び付いています。認定後の変更は元の性能に影響するため、変更認定等を確認します。長期優良住宅では、丈夫な構造や設備だけでなく、点検や補修を続ける維持保全の計画も必要です。認定を一度受ければ、その後の状態を問わないという仕組みではありません。
本問は改正時期にも注意します。建築一式工事の現場専任の基準は令和5年1月から8,000万円となり、建築行為を伴わない既存住宅の認定は令和4年10月から始まっています。問題年度の適用時点を確認して、前後の制度を混ぜないようにします。金額では、現場専任の請負代金と、特定建設業や監理技術者の配置に関わる下請代金を別の基準として整理する必要があります。