学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問28
問題・正答・学習用解説
問題
次の「計画」について所管行政庁による認定を受けることで、技術的基準や容積率の特例の適用を受けるために必要な「認定基準の内容」との組合せとして、関係法令上、誤っているものはどれか。| 計画 | 認定基準の内容 | |
|---|---|---|
| 1. | 建築物の耐震改修の計画(建築物の耐震改修の促進に関する法律) | 建築物の耐震改修の事業の内容が、建築基準法で規定された基準を超え、かつ、地震に対する安全性の一層の向上の促進のために誘導すべき基準である「耐震関係規定」に適合していること。 |
| 2. | 特定建築物の建築等及び維持保全の計画(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律) | 建築物特定施設の構造等が、建築物移動等円滑化基準を超え、かつ、高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき基準である「建築物移動等円滑化誘導基準」に適合していること。 |
| 3. | 認定長期優良住宅建築等計画(長期優良住宅の普及の促進に関する法律) | 住宅の構造及び設備が、住宅を長期にわたり良好な状態で使用するために誘導すべき基準に適合する措置等が講じられた「長期使用構造等」であること。 |
| 4. | 建築物エネルギー消費性能向上計画(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律) | 建築物のエネルギー消費性能が、建築物エネルギー消費性能基準を超え、かつ、建築物のエネルギー消費性能の向上の一層の促進のために誘導すべき基準である「建築物エネルギー消費性能誘導基準」に適合するものであること。 |
選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。耐震関係規定は、建築基準法等が定める地震に対する安全性に関係する規定です。それを『建築基準法の基準を超える、さらに高い誘導水準』と定義した点が誤りです。耐震改修計画の認定に必要な安全の基準を、他の認定制度の誘導基準と同じ言葉で説明することはできません。
耐震改修は、地震に対する安全性が不十分な建物等を、安全な状態へ改善する取組です。既存建物の計画を認定する制度は、その改修が地震に対する基準へ適合すること等を確認し、工事を進めやすくする所定の特例につなげます。法が定める耐震の安全基準に合わせることと、その基準をさらに上回る独自の誘導水準を必須とすることは違います。
一方、バリアフリーや省エネの計画認定には、通常の基準を超えてより良い性能へ導く『誘導基準』が明示されています。長期優良住宅にも、長期間良好に使うための構造・設備等を求める認定基準があります。全てに認定という名前が付いているからといって、要求する基準の意味まで同じではありません。本問では、制度ごとの目的と基準の名称を対応させ、耐震関係規定へ別制度の『最低基準を超える誘導基準』という説明を付け足さないことが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。耐震関係規定は、建築基準法に基づく地震に対する安全性の規定であり、それを超える性能を誘導する別の上位基準という定義ではありません。耐震改修計画では、その内容が所定の耐震関係規定等に適合するかを確認します。認定を受けるために、法の基準をさらに超える水準が必ず必要だとしたことが誤りです。既存建物を法の地震安全の基準に合う状態へ改善する目的と、他制度の誘導基準の名称を分けて理解します。
選択肢2
(2)正しい組合せです。バリアフリーの計画認定では、出入口、廊下、階段、便所等の建築物特定施設を、建築物移動等円滑化誘導基準等へ適合させます。通常の基準より、高齢者や障害者等がさらに利用しやすい水準を求めるものです。例えば通路や出入口の広さ等を、認定制度に対応する基準で確認します。最低限の基準へ適合すれば、そのまま全ての認定条件を満たすというわけではありません。認定による特例を使うなら、その認定の基準を別に満たします。
選択肢3
(3)正しい組合せです。長期優良住宅では、構造・設備に、長い間良好に使い続けるための性能や措置を備えた長期使用構造等であることが必要です。丈夫さだけでなく、劣化しにくさ、点検や維持管理のしやすさ等が長期使用に関係します。認定では建てたときの性能と、将来の維持保全の計画等も確認します。単に築年数が長い住宅を長期優良住宅と呼ぶのではなく、長く使うための所定の性能と計画を認定する制度です。
選択肢4
(4)正しい組合せです。省エネ性能向上計画の認定では、通常の建築物エネルギー消費性能基準よりさらに高い性能へ誘導する基準等に適合する必要があります。断熱や空調・照明等を改善し、建物の機能を保ちながら消費するエネルギーを抑える水準を目指します。一般の新築で要求される基準への適合と、性能向上計画の認定を受ける条件を分けます。認定があるというだけで容積率の全てが免除されるわけではなく、特例の対象部分や限度も別に確認します。
周辺知識
認定制度は、行政がある計画や性能を法の基準に照らして認める仕組みですが、制度ごとの目的は異なります。耐震改修は地震に対する安全の改善、バリアフリーは多様な人の移動・利用、省エネはエネルギー消費の削減、長期優良住宅は長期の良好な使用を目指します。同じ認定という語だけで必要性能や特例をまとめないことが大切です。
『基準に適合する』と『基準を超える水準へ誘導する』は違います。通常の基準は、法が求める一定の安全や性能を確保するものです。誘導基準は、さらに良い性能を普及させるための水準として、制度の中で別に定めます。耐震関係規定という名称自体は、後者の誘導水準を意味しません。名称と定義を対応させて読む必要があります。
技術基準や容積率の特例を利用できる場合でも、認定を受けた計画に沿った措置が前提です。安全と無関係な増築部分を自由に除外したり、認定対象外の設備を省略したりできるわけではありません。どの計画を認定し、その認定に必要な基準は何で、何の規定の特例につながるかという三つを対応させれば、本問のような組合せの取り違えを見つけやすくなります。