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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問21

問題・正答・学習用解説

問題

建築士に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築士は、延べ面積が2,000m²を超える建築物の建築設備に係る設計について、建築設備士の意見を聴いたときは、設計図書においてその旨を明記するように努めなければならない。
  2. (2)
    工事監理を行う建築士は、建築設備士の意見を聴いたときには、その旨を明らかにしたうえで、工事監理終了後、直ちに、その結果を建築主に報告しなければならない。
  3. (3)
    一級建築士は、他の一級建築士の設計した設計図書の一部を変更しようとする場合は、当該一級建築士の承諾を求め、承諾が得られなかったときは、自己の責任において、その設計図書の一部を変更することができる。
  4. (4)
    建築士は、設計及び工事監理に必要な知識及び技能の維持向上に努めるとともに、設計の委託者に対し、設計の内容に関して適切な説明を行うように努めなければならない。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。建築設備の設計で建築設備士の意見を聴いた場合、その旨を設計図書で明らかにすることは義務です。『明記するように努める』という努力義務へ弱めた点が誤りです。意見を聴くことについての規定と、聴いた事実を明示する規定を区別します。
建築設備士は、空調、給排水、電気等の建築設備について専門的な知識を持ち、設計や工事監理を行う建築士へ助言する資格者です。延べ面積2,000m²を超える建物の設備の設計・工事監理では、所定の例外を除き、その意見を聴くよう努める規定があります。しかし、実際に意見を聴いたなら、設計図書や監理の結果報告で、その関与を明らかにする必要があります。
例えば空調の計画について設備士の助言を受けた場合、後から図書を読む建築主や関係者が、その設計にどの専門的な関与があったかを追えるようにします。聞く段階が努力義務だから、記録する段階も任意とはいえません。また2,000m²という面積は意見聴取の努力義務の対象に関わるもので、意見を聴いた事実の明示を大規模建物だけへ限定する理由ではありません。行為の段階と条文の義務の強さを、一つずつ対応させることが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)誤りです。建築設備士の意見を聴いた場合は、設計図書にその旨を明らかにしなければなりません。意見を聴くよう努める規定と、聴いた後に明示する義務を混同しています。建築設備は空調、給排水、電気等の設備で、専門的な助言を受けた経緯を記録して責任や関与を明確にします。『努めなければならない』は努力義務、『明らかにしなければならない』は行う義務なので、条文の語尾だけでなく対象行為の違いも確認します。

選択肢2

(2)適当です。工事監理で建築設備士の意見を聴いた場合は、その事実を明らかにし、監理終了後直ちに結果を建築主へ報告します。工事監理は、実際の工事が設計図書どおりかを照合・確認する仕事です。設備について専門家の助言を受けたなら、その関与も結果報告に残すことで、建築主が確認の内容や体制を理解できます。設計図書だけに明示すればよいのではなく、工事監理で聴いた場合には監理報告の中で明らかにするという、業務に応じた扱いです。

選択肢3

(3)適当です。他の建築士の設計図書の一部を変更するときは、まず元の設計者の承諾を求めます。ただし、承諾を求められない事情がある場合や、承諾が得られない場合には、自分の責任で変更できる規定です。承諾を求める義務と、承諾を必ず得なければ変更不能という条件は違います。元の設計意図を尊重しつつ、必要な変更の責任を明確にする制度です。変更する者は、自分が変更した内容の法適合性や図書への表示等について責任を負います。

選択肢4

(4)適当です。建築士は、設計・工事監理に必要な知識と技能の維持向上に努め、設計を委託した人へ内容を適切に説明するよう努めます。法令や技術が変わる中で能力を保ち、専門知識のない依頼者にも設計の意図等を伝えるためです。この一般的な努力義務と、契約前の重要事項説明や設備士の意見を聴いた旨の明示など、個別に義務として定める行為は区別します。全ての説明が任意だとまとめることも、全て同じ法定手続だとまとめることも誤りです。

周辺知識

建築士法は、専門家の能力、他の専門家との協力、依頼者への説明、業務の記録をそれぞれ定めています。意見を聴くことは専門知識を補う行為で、その関与を図書に明らかにすることは記録と責任を追えるようにする行為です。似た文章でも、目的が違うので義務の形も同じとは限りません。
『努力義務』は、法律がその行為へ努力することを求めるものです。何をしても構わないという意味ではありませんが、必ずその結果を実現する義務と同じではありません。条文を読むときは、主語、対象行為、条件、語尾を一組で確認します。本問なら『建築士が、設備士の意見を聴いた場合、設計図書等でその旨を明らかにする』が義務です。
設計変更では、他の設計者の図書を変更する際の承諾を求めることと、得られなかった場合の自己責任による変更を分けます。自己責任という言葉は、法令に違反してよい意味ではありません。変更後も法適合性を確保し、誰が変更したかを図書上で明らかにする必要があります。協力を求める手続と、最終的に担う専門家の責任を両方理解すると、義務の取り違えを防げます。