学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。老人ホーム等のエレベーターの昇降路、共用の廊下・階段の用途部分を容積率算定用の延べ面積へ算入しない扱いには、本肢の『床面積合計の3分の1まで』という上限はありません。住宅等の地階の容積率の特例で使う3分の1の限度を、別の不算入の対象へ取り違えています。
容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合です。ただし、利用者が移動するための共用空間等を確保しやすくするため、所定の昇降路や共用廊下・階段について、容積率の計算から除く規定があります。本肢の対象部分の面積が多くなったからといって、それを3分の1で切り捨てる条件を付けることはできません。
例えば老人ホームの床面積合計が1,200m²で、対象となる共用廊下等が450m²あると仮定します。本肢の誤った考え方ならまでしか除かず、50m²を算入してしまいます。しかし、対象用途に該当する部分の不算入へ、この3分の1の上限はありません。もちろん、個室や事務室等まで共用廊下と称して除けるわけではなく、実際の用途によって対象を確定します。面積を除外する特例は、対象部分、算定目的、上限の有無をそれぞれ区別することが必要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。防火区画に接する外壁で、幅90cm以上の部分を準耐火構造とする規定には、所定の突出部で防火上有効に遮る代替方法があります。外壁から50cm以上出る準耐火構造のひさし、床、袖壁等で、炎が外壁を伝って区画の向こうへ回り込むことを防ぐ方法です。普通の小さなひさしでよいのではなく、寸法、構造、防火上有効な配置が条件です。区画の壁だけでなく、建物外側を通る火の経路まで考える規定として理解します。
選択肢2
(2)適当です。病院の患者が談話等に使う居室には通常の採光の規定がありますが、地階の居室には、通常の必要採光面積によらない扱いがあります。そのため本肢の地階の談話室で、床面積の10分の1以上の採光開口を確保しない計画が認められる場合があります。地上の病室や談話室に無条件に同じ扱いを広げてはいけません。また採光の特例があることは、換気、湿気、照明等の衛生的な環境や、避難・防火上の規定が不要になる意味ではありません。
選択肢3
(3)誤りです。老人ホームの昇降路や所定の共用廊下・階段の床面積を容積率算定から除く規定には、3分の1という上限はありません。3分の1の限度は、住宅等の地階に関する別の特例で使う条件です。対象が違う特例の上限を追加すると、法が除外する共用空間の一部を誤って算入してしまいます。まず実際に昇降路や共用通路の用途部分かを確定し、その不算入規定に付く条件をそのまま使います。一般の延べ面積と容積率算定用の延べ面積も分けます。
選択肢4
(4)適当です。幅3mを超える階段には通常、中間の手すりを設けますが、蹴上げ15cm以下かつ踏面30cm以上の緩やかな階段には、その中間手すりを省ける例外があります。蹴上げは一段の高さ、踏面は足を載せる奥行です。段が低く奥行がある階段は昇降しやすいことを考慮した扱いです。ただし、省けるのは幅の途中に設ける中間の手すりであり、階段の側面等に必要な手すりまで全てなくしてよいという意味ではありません。
周辺知識
容積率の不算入には、共用通路、住宅等の地階、防災備蓄倉庫、自動車車庫等、目的の異なる対象があります。それぞれ、対象部分、上限、分母とする面積、適用する容積率の規制が違います。一つの特例の3分の1や50分の1という割合を、別の対象へ横滑りさせないことが大切です。何を除ける規定かを名称と一緒に覚えます。
面積の不算入は、実際の建物からその空間が消える意味ではありません。廊下や階段は実際には床面積を持ち、避難や防火等の規定では、その用途・規模を適切に考慮します。ある容積率の計算で除外したことを、他の全ての面積の判定でも除外できる理由にはできません。計算する規制が何かを先に確定します。
本問の他の例外も、適用する部分が限定されています。50cmのひさし等は区画外側への炎の回り込みを防ぐ代替、地階居室は通常の採光面積の特例、緩い階段は中間手すりの例外です。それぞれの対象をはっきりさせれば、『壁が不要』『衛生の条件が不要』『手すりが全て不要』という過大な読み替えを防げます。法律が変える条件だけを正確に取り出すことが、複合問題の基本です。