学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の用途の制限に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、用途地域以外の地域、地区等の指定はなく、また、特定行政庁の許可等は考慮しないものとする。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。大学は、工業地域で原則として建築できない用途に含まれます。延べ面積20,000m²、地上3階建てという規模を問う前に、大学という用途が禁止の区分に入るため、本問の許可等を考慮しない条件では新築できません。
工業地域は、工業の利便を増すための地域です。工場で行われる作業の音、振動、交通等と、学習や療養等に必要な環境との衝突を避けるため、学校や病院など一定の用途を制限します。工業地域では住宅等を認める部分もありますが、それを理由に大学も当然に建てられるとはいえません。認める用途は法の表で個別に決められています。
一方、第一種住居地域の消防署は公共上必要な用途として一般の面積制限の例外に関わり、準住居地域の演芸場は客席面積200m²未満という範囲で扱います。準工業地域の火薬倉庫は、火薬の数量が20tを超えるかで判定し、ちょうど20tは範囲内です。このように、用途そのもの、建物の面積、客席の面積、危険物の量という、判断の物差しが肢ごとに異なります。地域の名前や建物全体の大きさだけで結論を出さず、何を制限する区分かを確定して比較します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。消防署は、第一種住居地域で一般の用途面積の制限の例外として認められる公共施設です。そのため、延べ面積3,500m²という規模を理由に新築を禁止するものではありません。消防活動の拠点は住宅地の安全を支える必要な施設です。ただし、用途が認められても、5階建ての形態に対する高さ、容積率、建ぺい率等の他の規定は別に満たす必要があります。一般の店舗・事務所等の面積上限を、用途の例外を確認せず消防署へ当てはめないようにします。
選択肢2
(2)適当です。準住居地域では、劇場、映画館、演芸場等のうち、客席部分の床面積合計が200m²未満のものを認める範囲があります。本肢は客席180m²なので条件に入ります。延べ面積500m²を200m²と比較するのではなく、客席の部分だけを比較します。客席は観客が集まる場所で、周囲への交通等の影響を考える規模の指標です。200m²ちょうどは『未満』に入りませんが、180m²は入るという境目も確認します。
選択肢3
(3)適当です。準工業地域の火薬の貯蔵では、施行令の表で20tを超える数量が用途制限の対象となります。本肢は20tちょうどなので、数量による禁止の範囲には入りません。危険物は種類によって基準が異なり、火薬と爆薬等を同じ値で扱わないことが重要です。建築基準法の用途制限として建築できることは、火薬類の保安等に関する他法の許可や構造基準が不要という意味ではありません。用途の可否と、実際に安全に貯蔵する条件は別に確認します。
選択肢4
(4)誤りです。工業地域では大学を原則として建てられません。大学は学校として、工業の利便を増す地域との用途の調整上、禁止される区分に入ります。20,000m²を小さくすれば同じ用途が自動的に認められるという問題ではありません。工業地域で認められる別の施設や、幼保連携型認定こども園等の例外を、大学へ広げることもできません。用途表の学校の区分とその限定を読み、地域名に工業が付くから大規模施設なら何でもよいと考えないようにします。
周辺知識
用途地域の制限は、建物を用途ごとに単純に並べるだけでなく、生活環境、商業活動、工業活動の関係を調整します。学校には学習する環境、消防署には地域の安全を守る拠点、演芸場には観客の集客、火薬倉庫には数量に応じた危険が関係します。その役割に応じて、認める用途や規模の条件が異なります。
面積や数量を比較する前に、制限の対象を確認します。消防署は用途の例外、演芸場は客席180m²、火薬倉庫は貯蔵20t、大学は用途そのものの禁止が要点です。延べ面積は全ての肢に共通する万能の物差しではありません。問題に複数の面積があるときは、『全体』『作業場』『客席』などの名前を数字に付けて読むと取り違えを防げます。
また、『超える』と『未満』では境目の含み方が違います。20tを超える場合を制限するなら20tちょうどはその禁止に入らず、200m²未満を許容するなら200m²ちょうどは入りません。法律上の用途の可否が分かっても、他の防火・構造・保安等の基準は残ります。工業地域・準工業地域・工業専用地域も同じではないので、問われた地域の表を使うことが重要です。