学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
建築設備に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。煙感知器と連動する自動開放装置を排煙口に設けても、原則として手動開放装置を設ける必要があります。自動で開く仕組みと、人が操作して開く仕組みは、どちらか一つがあれば必ず他を省ける関係ではありません。
排煙設備は、火災で生じた煙を外へ出し、避難や消防活動に支障が出ることを抑える設備です。排煙口が閉じたままでは、窓やダクト等の排出経路があっても十分に働きません。自動開放は感知器が煙を捉えたときに作動しますが、人が火災を発見して必要な操作をする場面もあります。そのため、法令は、通常、人が操作できる手動開放装置も備えることを求めています。
手動開放装置には、操作しやすい場所や高さ、操作方法の表示等の条件もあり、単に建物のどこかにスイッチがあるだけでは足りません。本肢は、『自動開放装置を設けた』という一条件から『手動は不要』という結論へ飛んでいます。非常用エレベーターの防火区画や配管貫通部の防火性能も同様で、一つの設備を備えたら関連する条件が全部なくなるわけではありません。機器の機能、操作方法、火災時に機能を保つ構造を、それぞれ確認する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。防火区画を貫く給水管や配電管等には、火災の反対側へ炎を出す原因となる損傷を生じないための基準があり、所定の大臣認定品を用いる方法があります。区画の床や壁が強くても、管が溶けて穴が開いたり、貫通部に隙間があったりすると火災が隣へ広がります。そこで、区画そのものと、そこを通る設備の部分を一体で守ります。大臣認定は対象となる構成や施工条件を含むため、認定の名前だけで異なる貫通部へ自由に使えるわけではありません。
選択肢2
(2)適当です。非常用エレベーターの昇降路は、原則として2基以内ごとに耐火構造の床・壁で囲みます。乗降ロビーも、所定の窓、排煙設備、出入口等を除いて耐火構造で囲みます。昇降路はかごが上下する空間、乗降ロビーは乗り降りする前室の空間です。火災時の消防活動等に使う設備なので、周囲の火や煙の影響を受けにくくする必要があります。必要な開口や主索・電線等の通る部分を含む規定の除外範囲も、設問どおりに確認します。
選択肢3
(3)誤りです。自動開放装置があっても、原則として手動開放装置が必要です。感知器の判断で自動的に開くことと、火災を発見した人がその場の状況に応じて開くことは、異なる操作の入口です。自動で作動するという便利さだけを理由に、法が求める手動操作を省略できません。また、手動装置は操作しやすい位置や高さ等の条件に従って設けます。排煙口の面積・位置だけでなく、必要なときに確実に開ける仕組みまでが排煙設備の計画です。
選択肢4
(4)適当です。共同住宅の住戸を、準耐火構造の床・壁や所定の防火設備で200m²以内に区画した場合、排煙設備の設置を省略できる例外があります。そのため、天井等から80cm以内の自然排煙に有効な窓が居室面積の50分の1未満でも、この区画の例外を使えます。窓の面積だけで設置義務を決めるのではなく、別の除外条件を確認します。普通の間仕切りで小さく分ければよいのではなく、住戸面積と区画の防火性能の両方が必要です。
周辺知識
排煙設備は、煙を集める区画、煙を取り出す排煙口、屋外まで運ぶ経路、必要に応じた排煙機、そして開放・起動の装置を組み合わせて働きます。窓が大きくても開かなければ排煙できず、開放装置があっても煙のたまる位置から離れていれば有効に排出できません。面積、位置、経路、操作をそれぞれ確認します。
自動と手動は、法令上必ず代替関係とは限りません。本問では煙感知器連動の自動開放と、人が操作する手動開放を併せて確保します。一方、排煙設備の設置そのものには、所定の用途・面積・区画等による例外があります。『自動だから手動不要』という誤った省略と、『所定の200m²以内の住戸区画なので設置を省略できる』という正しい例外を、根拠の違いで読み分けます。
防火区画は、壁だけを造って終わりではありません。管、電線、ダクト等の貫通部や、扉等の開口部に火が通る弱点が残ると、区画の目的を果たせません。非常用エレベーターも、機械だけでなく昇降路やロビーの耐火構造で機能を守ります。建築と設備を別々に完成させるのではなく、接する部分まで含めて防火・避難上の機能を確保するという考え方が共通しています。