学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問26
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の構造計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
両妻面の耐力壁の負担せん断力が、剛床の場合より大きくなるという記述が逆です。剛床は、床が水平面内ではほとんど変形せず、離れた骨組や壁を一緒に動かすという仮定です。細長い平面で両端の妻面だけに耐力壁を設けると、床は中央付近の地震力を遠い壁まで運ぶ必要があります。
床が面内に柔らかいと、中央部分が両端より大きく変形し、近くの柱・骨組がより多くの水平力を負担します。両妻面の硬い壁へ伝わる力は、剛床としたときより小さくなる方向です。その一方で中央付近の骨組の変形や負担が大きくなるため、壁の負担が減ったことを建物全体が安全になると解釈してはいけません。
たとえば硬い板なら中央を押した力を両端へよく伝えますが、柔らかい板では中央だけがたわみやすくなります。建物の床も同じように、その面内剛性が水平力の流れを左右します。両端の壁だけを強くすれば中央の力まで必ず届くのではなく、床の長さ、厚さ、開口、梁との接合などを評価して、剛床の仮定が使えるかを確認する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)剛床なら各骨組をほぼ同じ水平変形に拘束するため、硬い妻面の壁へ多くの力が集まります。床が柔らかいと中央付近が独自に大きく変形し、周辺の骨組が力を負担する割合が増え、妻面壁の負担は一般に小さくなる方向です。従って記述は逆です。壁が受ける力だけを比較して終わらず、増える中央部分の応力や床の面内変形・せん断を確認します。全体の水平力が消えるのではなく、伝わる経路と分担が変化しています。
選択肢2
(2)鉛直力Pが、水平にだけずれた位置に作用すると、という追加のモーメントが生じます。これがさらに水平変形を増やす作用を-効果と呼ぶので、記述は適切です。最初の形のままで力のつり合いを求める一次の解析では、この作用を十分に表せません。重い建物や大きく変形する架構では重要となり、追加モーメントが復元する抵抗を弱め、安定性に影響することもあります。
選択肢3
(3)RC柱は圧縮荷重へ効率よく抵抗し、鉄骨梁は長スパンを軽く架けやすいという長所があります。しかし接合部では鉄骨梁から入る曲げ・せん断を、RC柱のコンクリートや鉄筋へ受け渡す必要があります。その支圧、せん断、補強、定着等を考慮する記述は適切です。違う材料の部材を図面上で接触させるだけでは成立しません。梁の力が柱のどの部分へ入り、局部破壊を起こさず断面全体へ広がるかを確認します。
選択肢4
(4)ピロティ階は壁が少なく、上階に比べて柔らかくなりやすい階です。その独立柱の曲げ降伏で層崩壊することを想定するなら、地震時の変形とエネルギー消費がその階へ集中するため、十分な保有水平耐力等を確保する必要があります。一般の全体崩壊形と同じ変形分散を期待してはいけません。曲げ降伏を先行させることに加え、柱のせん断破壊、軸力支持の喪失、付加的な変形の増大等を防ぐ設計が重要です。
周辺知識
床は鉛直荷重を支える板であると同時に、地震時の水平力を柱・壁・筋かいへ伝える部材です。剛床という仮定は後者の面内変形に関するもので、鉛直方向に全くたわまないという意味ではありません。細長い平面、大きな吹抜け、段差などでは面内変形の影響に注意します。
地震時に変形が大きくなると、初めの配置で求めた力だけでは足りない場合があります。柱頭が横へずれたまま重さを受けると転倒側のモーメントが増すため、-効果を評価します。変形を一部の階へ集中させる計画では、その影響も大きくなりやすくなります。
構造計画では、強い壁や部材の配置と、それへ力を届ける床・接合の性能を合わせます。異種材料の柱梁でも、剛性の違いと接合部の力の流れを考えます。部材単独の耐力、水平力の分配、変形の集中、変形後の安定性を連続して確認することで、見かけ上は強い部分があっても弱い箇所が先に壊れる計画を避けられます。