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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問24

問題・正答・学習用解説

問題

耐震構造、免震構造及び制振構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築物の耐震性は、一般に、強度と靱性によって評価され、靱性が低い場合には、強度を十分に大きくする必要がある。
  2. (2)
    免震構造に用いられる、積層ゴムアイソレータの2次形状係数S2\displaystyle S_2(全ゴム層厚に対するゴム直径の比)は、主に座屈荷重や水平剛性に関係する。
  3. (3)
    免震構造用の積層ゴムにおいて、積層ゴムを構成するゴム1層の厚みを大きくすることは、一般に、鉛直支持能力を向上させる効果がある。
  4. (4)
    制振構造に用いられる鋼材ダンパー等の履歴減衰型の制振部材は、鋼材等の履歴エネルギー吸収能力を利用するものであり、大地震時には層間変形が小さい段階から当該部材を塑性化させることが有効である。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

積層ゴム一層の厚さを大きくすれば、鉛直支持能力が向上するという記述が逆です。積層ゴムは薄いゴムと鋼板を交互に重ね、鉛直には建物の重さを支え、水平方向には柔らかく変形できるようにした免震装置です。
ゴムを上から押すと、体積をあまり変えずに横へ膨らもうとします。上下に接着した鋼板はこの横膨らみを抑えますが、一層が厚いと鋼板から離れた部分が膨らみやすくなり、拘束の効果が弱くなります。従って他の条件が同様なら、一層を厚くすることは鉛直方向の支持能力を低下させる方向です。
一層の受圧面積を側面積で割る一次形状係数S1\displaystyle S_1は、同じ平面形状で層を薄くすると大きくなります。一方、二次形状係数S2\displaystyle S_2はゴム直径を全ゴム層厚で割ったもので、装置全体の座屈や水平剛性などに関わります。「一層の厚さ」と「全層を足した厚さ」は異なる寸法です。鉛直支持を保ちながら水平変形を許すため、薄い層を何層も重ねる設計の意味を理解することが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)靱性が低い建物は、大きく変形しながらエネルギーを吸収することを期待しにくいため、その分、強度を十分に確保する必要があります。強度は抵抗できる力の大きさ、靱性は抵抗を保って変形できる能力です。同じ最大強度でも、少し変形して急に壊れる場合と、長く粘る場合では大地震への対応が異なります。ただし強度を上げるだけで全ての安全条件を代替できるわけではなく、必要な変形や接合部の確認も行います。

選択肢2

(2)S2\displaystyle S_2はゴム直径Dを全ゴム層厚Hで割ったDH\displaystyle \frac{D}{H}です。装置全体が細長いか低く広いかという性質に対応し、座屈荷重と水平剛性などに関係するので記述は適切です。単純な水平剛性はKh=GAH\displaystyle K_h=\frac{GA}{H}で表され、Gはゴムのせん断弾性係数、Aは有効断面積です。全厚が増すと水平に変形しやすくなりますが、鉛直荷重下の安定性も変わります。水平に柔らかくする条件と、重さを支え続ける条件を合わせて確認します。

選択肢3

(3)一層を厚くすると、上下の鋼板によるゴムの横膨らみの拘束が弱くなり、一般に鉛直支持能力は低下します。従って向上するとした記述は誤りです。ゴムを厚くすれば頑丈になるという材料量の印象では判断できません。薄い層を鋼板で繰り返し拘束することが、鉛直方向の強い抵抗を得る仕組みです。ただし装置全体の性能は直径、層数、全厚、材料、変形量なども含むため、一つの寸法だけで最終的な安全性を断定しません。

選択肢4

(4)鋼材ダンパーは、鋼材が降伏して繰り返し塑性変形する際の履歴エネルギー吸収を利用します。主要な柱梁が大きく損傷する前の、小さい層間変形からダンパーを塑性化させると、早くからエネルギーを消費でき有効です。ただし早期降伏させるだけでなく、必要な繰返し変形に耐える能力と、装置へ力を伝える支持部材・接合部が必要です。ダンパーが壊れるまで変形することと、計画的に降伏して働くことを区別します。

周辺知識

免震装置には、重さを支える機能、水平に動きやすくする機能、元の位置へ戻す機能、エネルギーを吸収する機能などが必要です。一つの装置で複数を担う場合も、積層ゴムと別のダンパーを組み合わせる場合もあります。
積層ゴムの鋼板は、ゴムの横膨らみを抑えて鉛直方向に硬くする一方、ゴム層のせん断変形は許します。消しゴムを横へずらすような変形が各層に積み重なるため、水平方向には大きく動けます。形状係数は、その二つの方向の性能を整理するための指標です。
制振ダンパーでは、装置が力を受けながら変形した一往復の履歴の面積が、消費したエネルギーに対応します。周辺部材だけが変形して装置が動かなければ、期待した吸収量は得られません。免震・制振とも、装置単体のカタログ性能だけでなく、建物に組み込んだときの荷重、変形、接合、空間が設計の前提と一致することを確認します。