学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問23
問題・正答・学習用解説
問題
各種建築構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
埋込み型SRC柱脚で、鉄骨断面の曲げ終局耐力と、埋込み部の支圧による曲げ終局耐力をそのまま足す記述が誤りです。支圧は、埋め込んだ鉄骨が周囲のコンクリートを局部的に押す作用です。柱から入る曲げを鉄骨が運び、その力を埋込み部でコンクリートへ伝えるため、両者は同じ力の伝達経路上にあります。
鉄骨が大きな曲げに耐えられても、埋込み部のコンクリートが先に支圧破壊すれば、その大きな力を基礎へ渡せません。逆に埋込み部が十分強くても、鉄骨断面の限界を超えた曲げを運ぶことはできません。したがって鉄骨に対応する抵抗は、鉄骨断面と埋込み部の伝達能力の小さい側で制限されます。その上で、RC部分の抵抗を所定の方法に従って評価します。
たとえば同じ経路の二か所が100と150の力に耐えられるとしても、その経路で250を伝えられるわけではなく、100の部分が先に限界になります。これは直列の鎖の弱い箇所が全体を制限するのと同じ考え方です。SRCだから全ての耐力を足せるのではなく、並んで分担する抵抗か、順番に力を受け渡す抵抗かを区別する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)壁式RCでは、コンクリートの設計基準強度が高いほど壁の抵抗が増すため、所定の条件の範囲で必要壁量を小さくできる扱いがあります。壁量は床面積に対してどれだけの耐力壁を設けるかという量です。ただし強度だけを上げれば壁を際限なく減らせるわけではありません。最小壁量、壁厚、配置、開口、接合、変形等の条件を満たします。材料強度の効果を壁量へ反映することと、他の仕様や構造計画を省略することは別です。
選択肢2
(2)現場で一体に打つ壁式RCと、工場等で製作した部材を接合する壁式プレキャストRCは、必要な接合・力の伝達等の条件を満たせば同じ階へ混用できます。現場打ちかプレキャストかが違っても、壁と床を通じて荷重を支える構造として一体性を確保することが要点です。部材境界でせん断や引張りを伝える接合、変形の適合、施工順序を確認します。異なる製作方法であることだけを理由に、必ず建物を分離しなければならないわけではありません。
選択肢3
(3)鉄骨断面の曲げ抵抗と、その力を周囲へ渡す埋込み部の支圧抵抗は、同じ伝達経路の二つの限界です。両方の最大値を足すことはできず、小さい側によって鉄骨部分の発揮できる抵抗が制限されます。RC部分の抵抗を含む柱脚全体の評価は、これらの関係を踏まえた所定の方法で行います。埋込みを深くすると支圧の伝達能力は増す方向ですが、鉄骨断面の耐力まで無条件に増えるわけではありません。どの箇所が先に限界になるかを確認します。
選択肢4
(4)充腹形はウェブが連続した鋼板である鉄骨、非充腹形は格子や斜材などで構成した鉄骨です。フルウェブの充腹形はせん断力を連続した板で受け持ちやすく、コンクリートのせん断破壊などによる急な耐力低下を抑える上で有利となります。そのため格子形より靱性の向上を期待でき、記述は適切です。ただし部材の全性能が形式名だけで決まるわけではなく、軸力、配筋、幅厚比、接合部などの条件も満たす必要があります。
周辺知識
SRCは鉄骨とRCが協力する構造ですが、抵抗の全てを機械的に足す構造ではありません。断面内で同時に力を分担するものは所定の累加で評価できる場合がある一方、その力を後段へ渡す接合や支圧の能力が不足すれば、そこで全体の抵抗が制限されます。
埋込み柱脚では、柱の曲げにより埋込み部の上側と下側が反対方向にコンクリートを押し、離れた支圧の組合せが曲げを基礎へ伝えます。埋込み深さ、鉄骨の有効幅、コンクリートの強度や補強などがその能力に関わります。鉄骨断面の強さと伝達部の強さを別々に求め、使える抵抗を判断します。
壁式構造でも、壁・床の強度と、それらをつなぐ接合部の伝達能力が必要です。プレキャストの部材自体が高強度でも、接合面ですべれば期待した一体性を保てません。部材の材料と形状、境界の接合、基礎への伝達を順にたどると、累加できる抵抗と、弱い側で制限される抵抗を理解しやすくなります。