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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問6

問題・正答・学習用解説

問題

中心圧縮力を受ける正方形断面の長柱の弾性座屈荷重Pe\displaystyle P_eに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、柱は全長にわたって等質等断面とする。

選択肢

  1. (1)
    Pe\displaystyle P_eは、正方形断面を保ちながら柱断面積が2倍になると4倍になる。
  2. (2)
    Pe\displaystyle P_eは、柱材のヤング係数が2倍になると2倍になる。
  3. (3)
    Pe\displaystyle P_eは、柱の材端条件が「両端ピンの場合」に比べて「一端自由他端固定の場合」のほうが大きくなる。
  4. (4)
    Pe\displaystyle P_eは、柱の材端条件が「一端ピン他端固定の場合」に比べて「両端ピンの場合」のほうが小さくなる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

一端自由・他端固定の方が両端ピンより座屈荷重が大きいという(3)が誤りです。座屈は、細長い柱を圧縮したとき、材料が押しつぶされる前に横へ曲がり、まっすぐな状態を保てなくなる現象です。弾性長柱の座屈荷重はPe=π2EIlk2\displaystyle P_e=\frac{\pi^2EI}{l_k^2}で表します。E\displaystyle Eはヤング係数、I\displaystyle Iは断面二次モーメント、lk\displaystyle l_kは支え方に応じた座屈長さです。
柱の実際の長さをLとすると、両端ピンではlk=L\displaystyle l_k=L、一端自由・他端固定ではlk=2L\displaystyle l_k=2Lです。自由端が横へ動ける柱は、両端を横移動しないよう支えた柱より曲がりやすくなります。式へ入れると、一端自由の座屈荷重は
π2EI(2L)2=π2EI4L2\frac{\pi^2EI}{(2L)^2}=\frac{\pi^2EI}{4L^2}
で、両端ピンの4分の1です。
「片側が固定だからピンより強い」と端部一つだけを比べるのは不適切です。他端が自由に移動する影響を含めて支え方全体を見ます。一端ピン・他端固定では両端とも横移動せず、さらに片端の回転を抑えるため、座屈長さが約0.7L\displaystyle 0.7Lとなり、両端ピンより座屈荷重は大きくなります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正方形の一辺をbとすると面積はA=b2\displaystyle A=b^2、断面二次モーメントは、次のとおりです。
I=b412=A212\begin{aligned}I&=\frac{b^4}{12}\\[4pt]&=\frac{A^2}{12}\end{aligned}
正方形を保ちながら面積を2倍にすると、辺は2\displaystyle \sqrt2倍で、Iは(2)4=4\displaystyle (\sqrt2)^4=4倍になります。座屈荷重はIに比例するので4倍となり、記述は適切です。面積が2倍だから座屈荷重も2倍という計算ではありません。圧縮材の断面積だけでなく、材料が中心からどれだけ離れて配置されているかが横曲がりへの抵抗を決めます。

選択肢2

(2)弾性座屈荷重の式ではEが分子にあり、断面と長さ・支持条件が同じならEを2倍にするとPe\displaystyle P_eも2倍です。Eは材料が弾性的に伸縮しにくい性質を表し、曲げ剛性EI\displaystyle EIの一部です。したがって記述は適切です。ただし鋼材の降伏点を2倍にすることと、ヤング係数を2倍にすることは同じではありません。高強度の鋼材へ替えてもEがほぼ同じなら、同じ断面の弾性座屈荷重は同じようには増えません。

選択肢3

(3)両端ピンの座屈長さはL、一端自由・他端固定は2L\displaystyle 2Lです。座屈荷重は座屈長さの2乗に反比例するため、一端自由の方が4分の1と小さくなります。自由端は回転だけでなく横移動もでき、柱全体が片持ち状に大きくたわみやすくなります。固定端の回転拘束だけを見て有利と考えず、もう一方の端を横から支えていない不利を含めて判断します。記述の「大きくなる」を「小さくなる」へ直す必要があります。

選択肢4

(4)一端ピン・他端固定では、両端ピンより回転の拘束が増えるため、座屈長さが短くなり、座屈荷重は大きくなります。従って、それと比べた両端ピンの座屈荷重は小さいという記述は適切です。理想的な条件では一端ピン・他端固定の座屈長さは約0.7L\displaystyle 0.7Lなので、座屈荷重は両端ピンのおよそ10.72≈2.04\displaystyle \frac{1}{0.7^2}\approx2.04倍です。実際の骨組では接合部の回転や節点の横移動もあるため、対応した座屈長さを評価します。

周辺知識

座屈長さは、実際の柱の支え方を、両端ピンの柱の長さへ換算したものです。両端ピンを基準のLとし、両端固定は0.5L\displaystyle 0.5L、一端ピン・他端固定は約0.7L\displaystyle 0.7L、一端自由・他端固定は2L\displaystyle 2Lとなります。これらは理想的な端部条件と、所定の横移動の拘束を前提とした値です。
固定端では回転を止めるために曲げモーメントが生じます。ピン端は回転できますが、支点として横移動を止めることができます。自由端は回転も横移動も止めません。端の回転と移動を別々に見分けると、座屈の形と長さの大小が理解しやすくなります。
オイラーの式は弾性範囲で座屈する長柱の式です。短い柱では材料の降伏や圧縮破壊が先行し、同じ式を無条件に使うことはできません。また初期の曲がりや荷重の偏心がある実部材では、まっすぐで中心圧縮だけを受ける理想柱から性能が変わります。問題が長柱・弾性・中心圧縮という条件を指定するのは、どの現象と式で比較するかを明確にするためです。