資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問5

問題・正答・学習用解説

問題

図のような集中荷重Pを受けるトラスA、トラスB及びトラスCにおいて、それぞれのローラー支持点の水平変位δA\displaystyle \delta_A、δB\displaystyle \delta_B及びδC\displaystyle \delta_Cの大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、各部材は同一材質の弾性部材とし、斜材の断面積はいずれもa、水平材の断面積はトラスA及びトラスBがa、トラスCが2aとする。問5の図1

選択肢

  1. (1)
    δA=δC<δB\displaystyle \delta_A=\delta_C<\delta_B
  2. (2)
    δA<δC<δB\displaystyle \delta_A<\delta_C<\delta_B
  3. (3)
    δC<δA=δB\displaystyle \delta_C<\delta_A=\delta_B
  4. (4)
    δC<δA<δB\displaystyle \delta_C<\delta_A<\delta_B

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

右のローラーは水平方向へ動けますが、左右の支点を直接つなぐ水平材の両端でもあります。左支点の水平変位は0なので、右支点の水平移動量は、この水平材の伸びに等しくなります。まず三つの水平材の軸力を調べると、いずれもP2\displaystyle \frac{P}{2}の引張りです。
Aは左右対称なので右支点の鉛直反力はP2\displaystyle \frac{P}{2}です。右端の45度斜材が押す力の鉛直成分と水平成分は等しく、水平材にはP2\displaystyle \frac{P}{2}の引張りが必要です。BとCでは、頂点の右向きPが左支点回りにPl\displaystyle Plの時計回りモーメントを作るため、VR(2l)=Pl\displaystyle V_R(2l)=Pl、右反力はやはりP2\displaystyle \frac{P}{2}です。右端節点の同じ45度のつり合いから、水平材の引張りもP2\displaystyle \frac{P}{2}となります。
弾性棒の伸びはδ=NLEA\displaystyle \delta=\frac{NL}{EA}です。長さは全て2l\displaystyle 2l、AとBの断面積はaなので、
δA=δB=(P2)(2l)Ea=PlEa\begin{aligned}\delta_A&=\delta_B\\[4pt]&=\frac{(\frac{P}{2})(2l)}{Ea}\\[4pt]&=\frac{Pl}{Ea}\end{aligned}
Cは水平材だけ断面積が2a\displaystyle 2aで、δC=Pl2Ea\displaystyle \delta_C=\frac{Pl}{2Ea}になります。
よってδC<δA=δB\displaystyle \delta_C<\delta_A=\delta_Bの(3)が正解です。斜材の伸縮は頂点の移動などに影響しますが、本問のローラーの水平移動へ、その伸びを別に加える必要はありません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)AとCが等しいとしていますが、両者の水平材の軸力は同じP2\displaystyle \frac{P}{2}でも、Cの水平材断面積はAの2倍です。長さと材質が同じなら、伸びは断面積に反比例するのでCはAの半分になります。またBの水平材もAと同じ軸力・長さ・断面積であり、Bだけが大きくなる理由はありません。荷重の方向や斜材の伸縮の印象ではなく、求める変位を直接決める水平材についてN,L,E,A\displaystyle N,L,E,Aの四つを比較します。

選択肢2

(2)CをAより大きいとした点が逆です。水平材の断面積が大きいCは、同じ引張力で伸びにくくなり、Aの半分の変位です。さらにBとAは、荷重方向が違っても右支点の鉛直反力が同じP2\displaystyle \frac{P}{2}で、45度斜材を介して水平材へ入る軸力も同じです。そのためδA=δB\displaystyle \delta_A=\delta_Bとなります。横向きの荷重があるからローラーの横移動も必ず大きい、という直接的な推測では判定できない問題です。

選択肢3

(3)各水平材の長さは2l\displaystyle 2l、軸力はP2\displaystyle \frac{P}{2}で共通です。AとBは断面積aなので伸びが等しく、Cは断面積2a\displaystyle 2aなので半分になります。左端が動かず、右端が水平に移動できるため、この伸びがそのまま求めるローラー変位です。したがってδC<δA=δB\displaystyle \delta_C<\delta_A=\delta_Bが条件に一致します。静定トラスでは、この範囲の微小変形の軸力はつり合いで決まり、Cの断面積を増やしたから水平材の軸力も2倍になるわけではありません。

選択肢4

(4)Cが最小という前半は正しいですが、AとBの間に大小はありません。Bの右反力は、水平荷重Pと高さlのモーメントを全幅2l\displaystyle 2lで支えるためP2\displaystyle \frac{P}{2}となり、Aの対称荷重時の右反力と一致します。右節点のつり合いも同じなので、水平材の引張力も一致します。斜材の変形をローラー変位へ独立に足すと、この水平材の長さと両端移動の関係に合わなくなります。変形後も部材の両端が同じ節点でつながる条件を守ります。

周辺知識

トラスは、節点をピンで接合し、荷重が節点に作用すると理想化した構造です。各部材は主に伸び縮みする軸力で働き、引張りなら伸び、圧縮なら縮みます。応力度はNA\displaystyle \frac{N}{A}、ひずみは応力度をヤング係数Eで割ったNEA\displaystyle \frac{N}{EA}なので、長さLを掛けて伸縮量NLEA\displaystyle \frac{NL}{EA}を得ます。
変位を求める際は、まずつり合いで軸力を求め、次にその軸力が生む部材の伸縮を求め、最後に節点の移動との関係を考えます。本問では支点間に一本の水平材があるため、最後の関係が特に簡単です。左端を固定した棒の右端が動く距離が、棒の伸びに等しいことを使えます。
一般のトラスで任意の点の変位を求める場合は、複数部材の伸縮と幾何学的な関係を考える必要があります。本問で斜材を直接計算しなくてよいことを、全てのトラス変位の計算へ一般化してはいけません。求める点と方向を確認し、それを直接拘束する部材があるかを最初に調べると、必要な計算を見通せます。