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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問4

問題・正答・学習用解説

問題

図は、2層のラーメンに水平荷重Pが作用したときの、正しい崩壊メカニズムを示したものである。次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、柱及び梁の全塑性モーメントはMp\displaystyle M_pとする。問4の図1

選択肢

  1. (1)
    図のせん断力Qb\displaystyle Q_bは、Mpl\displaystyle \frac{M_p}{l}である。
  2. (2)
    図の鉛直反力V\displaystyle Vは、2Mpl\displaystyle \frac{2M_p}{l}である。
  3. (3)
    図の水平荷重P\displaystyle Pは、2Mpl\displaystyle \frac{2M_p}{l}である。
  4. (4)
    図のせん断力Qc\displaystyle Q_cは、4Mpl\displaystyle \frac{4M_p}{l}である。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

4Mpl\displaystyle \frac{4M_p}{l}は1階全体が伝える水平力であり、図の右柱一本のQc\displaystyle Q_cではありません。正しいQc\displaystyle Q_cは2Mpl\displaystyle \frac{2M_p}{l}です。黒丸は全塑性モーメントMp\displaystyle M_pを保ちながら回転する塑性ヒンジで、梁端4か所と柱脚2か所の計6か所にあります。
柱が微小な角度θ\displaystyle \thetaだけ傾くと、1階の水平移動はlθ\displaystyle l\theta、屋根は2lθ\displaystyle 2l\thetaです。二つの荷重が行う外力仕事はP(lθ)+P(2lθ)=3Plθ\displaystyle P(l\theta)+P(2l\theta)=3Pl\theta。梁は水平を保ち、6か所の塑性ヒンジにはそれぞれθ\displaystyle \thetaの相対回転が生じるので、内部で消費する仕事は6Mpθ\displaystyle 6M_p\thetaです。両者を等しくしてP=2Mpl\displaystyle P=\frac{2M_p}{l}を得ます。
1階の柱は上下二つの荷重を受け渡すため、左右の柱のせん断力の合計は2P=4Mpl\displaystyle 2P=\frac{4M_p}{l}です。左右対称の部材と機構で等分するので、右柱のQc=P=2Mpl\displaystyle Q_c=P=\frac{2M_p}{l}となります。屋根梁は両端モーメントの和をスパン2l\displaystyle 2lで割り、
Qb=2Mp2l=Mpl\begin{aligned}Q_b&=\frac{2M_p}{2l}\\[4pt]&=\frac{M_p}{l}\end{aligned}
全体の転倒つり合いでは、柱脚二つの抵抗モーメントも含めて2lV+2Mp=3Pl\displaystyle 2lV+2M_p=3Plです。先ほどのPを代入するとV=2Mpl\displaystyle V=\frac{2M_p}{l}となり、(1)〜(3)は一致します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)屋根梁の両端の塑性ヒンジは、それぞれ大きさMp\displaystyle M_pの曲げモーメントを保っています。梁に途中の鉛直荷重がないので、梁を切り出したモーメントのつり合いから、せん断力とスパンの積が両端の曲げの和になります。したがってQb(2l)=Mp+Mp\displaystyle Q_b(2l)=M_p+M_p、Qb=Mpl\displaystyle Q_b=\frac{M_p}{l}で適切です。梁端の曲げモーメント図の符号と、切り出した部材に作用する端モーメントの向きを取り違え、差を0としないようにします。

選択肢2

(2)左柱脚回りで、二つの水平荷重は合計Pl+P(2l)=3Pl\displaystyle Pl+P(2l)=3Plの転倒モーメントを作ります。右鉛直反力の抵抗2lV\displaystyle 2lVに加え、左右の固定柱脚で各Mp\displaystyle M_pの抵抗があるので、2lV+2Mp=3Pl\displaystyle 2lV+2M_p=3Plです。P=2Mpl\displaystyle P=\frac{2M_p}{l}を入れると2lV=4Mp\displaystyle 2lV=4M_p、V=2Mpl\displaystyle V=\frac{2M_p}{l}になります。柱脚に黒丸があっても、普通の自由なピンではなくMp\displaystyle M_pを伝える塑性ヒンジなので、そのモーメントを省略してはいけません。

選択肢3

(3)図の機構では、同じ柱の傾きθ\displaystyle \thetaに対して上階ほど大きく動きます。外力仕事は荷重の数だけでなく、それぞれの作用点の移動量を掛けて3Plθ\displaystyle 3Pl\thetaです。内部仕事は6か所のMpθ\displaystyle M_p\thetaで6Mpθ\displaystyle 6M_p\thetaとなり、つり合いからP=2Mpl\displaystyle P=\frac{2M_p}{l}です。屋根の変位を1階と同じlθ\displaystyle l\thetaとすると荷重を過大に計算します。塑性ヒンジの個数だけ数えず、各ヒンジの相対回転と各荷重点の移動を対応させる必要があります。

選択肢4

(4)1階全体の層せん断力は2P=4Mpl\displaystyle 2P=\frac{4M_p}{l}ですが、Qc\displaystyle Q_cは右の柱一本に表示されています。左右の柱が等しく分担するため、その半分の2Mpl\displaystyle \frac{2M_p}{l}が正しい値です。図の切断線が建物の階全体を切っているのか、一本の部材を切っているのかを見分けます。右柱の値を4Mpl\displaystyle \frac{4M_p}{l}とすると、左右の合計が8Mpl\displaystyle \frac{8M_p}{l}となり、外から加わる二つの水平荷重の合計と一致しなくなります。全体の水平力のつり合いからも誤りを検出できます。

周辺知識

塑性ヒンジは、部材のある断面が全塑性モーメントへ達し、その曲げ抵抗をおおむね保ったまま回転が進むという理想化です。普通のピン接合は曲げモーメントを伝えませんが、塑性ヒンジはMp\displaystyle M_pを伝えるため、両者を同じ扱いにしないことが重要です。
崩壊機構が分かっている問題では、ごく小さく動いたと仮定し、外力が行う仕事と、塑性ヒンジで消費される仕事を等しくします。力の仕事は力×移動量\displaystyle \text{力}\times\text{移動量}、モーメントの仕事はモーメント×回転角\displaystyle \text{モーメント}\times\text{回転角}です。角度をラジアンで表すと、微小変形では高さ×角度\displaystyle \text{高さ}\times\text{角度}が横移動になります。
仕事で荷重を求めた後は、梁、柱、骨組全体をそれぞれ切り出して静力学のつり合いを確かめます。本問では梁のせん断、柱一本のせん断、階全体のせん断、基礎反力が別々の量です。単位が全て力だからといって同じ値にはなりません。何を切り出し、その中にどの荷重と端モーメントを含めたかを図へ書き込むと整理できます。