学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問3
問題・正答・学習用解説
問題
図のようなラーメンにおいて、A点に鉛直荷重P及びB点に水平荷重が作用したとき、A点における曲げモーメントが0になるためのの値として、正しいものは次のうちどれか。ただし、全ての部材は全長にわたって等質等断面の弾性部材とし、自重は無視する。
選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
右支点の鉛直反力を求め、Aの右側部分のモーメントを考えると、です。左支点は水平・鉛直方向を支えるピン、右支点は鉛直方向だけを支えるローラーです。全幅は、梁の高さはで、Pは中央Aに下向き、は右上Bに左向きに作用します。
左支点回りの反時計回りを正にすると、右の鉛直反力による、左向き水平荷重による、下向き荷重によるがつり合います。よって、です。
次にAで切り、右側の梁と柱だけを取り出します。AとBは同じ高さなので、Bの水平力の作用線はAを通り、A回りのモーメントは0です。右支点の鉛直反力には水平距離の腕があるため、Aの断面曲げの大きさはとなります。これを0にするには、すなわちが必要です。
では左支点の鉛直反力が、水平反力も右向きとなり、全体の力もつり合います。Aに荷重が直接作用していても、その点の曲げが必ず0以外になるわけではありません。力の作用線と距離を分けて判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)を全体のつり合いへ入れると、次のとおりです。
Aから右支点までの水平距離はなので、Aには大きさの曲げモーメントが必要となり、0にはなりません。水平荷重は鉛直荷重の転倒モーメントを一部だけ打ち消しています。荷重の比を半分にすれば中央の曲げが消えるという関係ではなく、両荷重の左支点回りの腕がともにであることを使ってつり合いを求めます。
選択肢2
(2)なら、左支点回りで水平荷重のと鉛直荷重のがちょうど打ち消し合い、右の鉛直反力は0になります。Aの右側を取り出したとき、Bの水平力はAと同じ高さにあり、A回りの曲げを生じません。このためAの断面モーメントも0となり、条件を満たします。右側に力が全くないという意味ではなく、梁には水平荷重を伝える軸力があり得ます。曲げ0と、全ての断面力0を区別します。
選択肢3
(3)では
となり、Aには大きさの曲げが残ります。負の反力は、上向きを正として置いた反力が下向きになることを表し、0ではありません。水平荷重の転倒作用が必要量を超えた状態です。実物のローラーが下向き反力を伝えられなければ浮上がりの問題もありますが、この問題の条件を満たすかの判定では、まずAの曲げが0になるかをつり合いで確認します。
選択肢4
(4)を代入すると、次のとおりです。
Aに対する反力の腕により、大きさの曲げが必要となり、0にはなりません。全幅がだから水平荷重を鉛直荷重の2倍にするという判断は不適切です。水平荷重のモーメントの腕は高さ、鉛直荷重の腕は左支点から中央までのです。モーメントには、荷重と直角方向の最短距離を使うことを確認します。
周辺知識
平面の静力学では、水平方向の力、鉛直方向の力、任意の点回りのモーメントの三つのつり合いを使います。モーメントの腕は部材に沿った距離ではなく、基準点から力の作用線までの直角距離です。水平力なら高さの差、鉛直力なら水平距離で計算します。
断面力を求めるときは、全体の反力を求めてから目的の場所で切り、左右のうち力が少ない側を取り出すと計算しやすくなります。本問のA右側では、水平力の作用線がAを通り、右の支点には鉛直反力しかないので、曲げを0にする条件が簡単に得られます。
ピン支点やローラー支点は支え方を表しますが、Aは支点でもヒンジでもありません。荷重の組合せによって、その断面の曲げが偶然0になる条件を求めています。断面の曲げ0、せん断0、軸力0はそれぞれ別の条件です。どの力を消す問題かを整理し、必要なつり合い式を立てることが大切です。