資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問19

問題・正答・学習用解説

問題

土質及び地盤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    圧密沈下は、有効応力の増加により、間隙水の排出を伴いながら地盤が徐々に沈下していく現象である。
  2. (2)
    地盤の許容支持力度は、標準貫入試験によるN値が同じ場合、一般に、粘性土地盤に比べて砂質土地盤のほうが大きい。
  3. (3)
    地盤の極限鉛直支持力は、一般に、土のせん断破壊が生じることにより決定される。
  4. (4)
    主働土圧は、地下壁や擁壁が地盤から離れる方向に変位するときに、最終的に一定値に落ち着いた状態で発揮される土圧である。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

N\displaystyle \mathrm{N}値は、標準貫入試験で所定の重りを落とし、試験器を土へ所定の長さ貫入させるために要した打撃回数です。地盤の硬さや締まり具合を判断する指標ですが、支持力度そのものの単位ではありません。同じN\displaystyle \mathrm{N}値でも、砂質土と粘性土では粒の大きさ、水の抜け方、力への抵抗の仕方が異なり、同じ換算関係では評価できません。
一般的な目安では、同じN\displaystyle \mathrm{N}値を比較した場合の許容支持力度は、砂質土地盤より粘性土地盤のほうが大きい側になります。したがって砂質土のほうが大きいとした選択肢2が不適当です。ただし、これは「全ての粘土は全ての砂より安全」という意味ではありません。N\displaystyle \mathrm{N}値をそろえた比較であり、実際の許容支持力度は土の強度、基礎の幅や深さ、沈下などを考慮して決めます。
許容支持力度は、基礎底面1 m2\displaystyle 1\,\mathrm{m^2}当たりに設計上許せる力で、単位はkN/m2\displaystyle \mathrm{kN/m^2}などです。例えば100 kN/m2\displaystyle 100\,\mathrm{kN/m^2}の地盤へ2 m2\displaystyle 2\,\mathrm{m^2}の面で一様に力を渡すなら、面積を掛けた力の尺度は200 kN\displaystyle 200\,\mathrm{kN}となります。しかし、地盤が破壊しなくても沈下が大きければ使い続けられないため、支持の強さと変形を別々に確かめます。他の選択肢は、時間を伴う圧密、極限支持力、擁壁の移動と土圧の関係です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)土の粒のすき間にある水を間隙水と呼び、粒同士の接触を通じて伝わる応力を有効応力と呼びます。粘土などに荷重を加えると、最初は間隙水圧が増え、その水がゆっくり抜けるにつれて粒の骨組が荷重を負担する割合が増えます。粒の間隔が狭まって体積が減り、地盤が沈むのが圧密沈下です。短時間でその場の形が変わる即時沈下とは違い、水が抜ける速さに支配されるので、荷重を載せた後も長期間進む場合があります。

選択肢2

(2)N\displaystyle \mathrm{N}値は一定の試験方法に対する貫入抵抗の指標で、砂と粘土に同じ支持力の換算式を使える数字ではありません。同じN\displaystyle \mathrm{N}値なら一般に粘性土のほうが大きい許容支持力度の目安となるため、記述の大小が逆です。砂では主に粒同士の摩擦、粘性土では粘着力などが支持に関わり、試験値との対応が異なります。砂のほうが水を通しやすく沈下が早く収束しやすいことと、同じN\displaystyle \mathrm{N}値での支持力度の大小も、別の性質として扱います。

選択肢3

(3)基礎が地面を押す力を増やすと、基礎下の土が外側へ押し出され、ある面に沿って滑ろうとします。土のせん断抵抗を超えて滑りが広がり、これ以上安定して力を受けられない状態が、極限鉛直支持力を決める基本の破壊です。土の粒を全て粉々に押しつぶす強さで決まるわけではありません。実際の設計ではこの極限値へそのまま荷重を載せず、安全率や沈下の制限を考慮して許容支持力を設定します。

選択肢4

(4)壁が土から離れる側へ動くと、背後の土は少し横へ広がることができ、壁を押す土圧が減ります。土がせん断抵抗を十分に発揮した限界状態で落ち着く土圧が主働土圧です。反対に壁が土へ押し込まれると抵抗が増し、受働土圧の状態へ近づきます。全く動かない壁の静止土圧とも区別します。主働は「壁が積極的に土を押す」という意味ではなく、土が壁を動かす側の状態に付いた名称と捉えると方向を間違えにくくなります。

周辺知識

地盤は固体の塊ではなく、土粒子とすき間の水・空気から成る集合体です。飽和した土で全体に加わる応力をσ\displaystyle \sigma、水圧をuとすると、粒の骨組が受け持つ有効応力はσ′=σ−u\displaystyle \sigma'=\sigma-uで表されます。同じ全応力でも、水圧が上がれば粒同士が押し合う力が減り、せん断に抵抗しにくくなる場合があります。地震時の液状化を考える際にも、この区別が基になります。
圧密では余分な間隙水圧が消えて有効応力が増すにつれ、粒の骨組が詰まり、体積が減ります。粘土は水が通りにくいため、この過程に時間がかかります。砂の即時的な変形、粘土の圧密、地震による水圧上昇は、いずれも沈下へ関係していても、仕組みと時間の尺度が違います。
支持力の単位も確認します。「支持力」は基礎全体が受ける力でkN\displaystyle \mathrm{kN}、「支持力度」は面積当たりでkN/m2\displaystyle \mathrm{kN/m^2}です。N\displaystyle \mathrm{N}値には回数という試験上の意味があり、支持力度と直接同じにはできません。土質の種類と試験条件を確かめ、地盤の強さと沈下の両方を検討することが、安全な基礎選択につながります。