学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨構造の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
断面二次半径iは、断面積が座屈する軸からどのくらい広がって配置されているかを表す長さで、です。Iは断面二次モーメント、Aは断面積です。有効細長比はで、は支え方を反映した座屈長さです。同じのままiが小さくなるとは大きくなり、圧縮で横へ逃げやすくなります。
したがって許容圧縮応力度は大きくなるのではなく、一般に小さくなります。選択肢4が不適当です。例えば座屈長さがで、iがなら、iがならです。弾性座屈応力度の形で比較すると、が2倍なら値はです。実際の許容値には材料の降伏や規定の安全性も反映しますが、iが小さいほど不利という向きは確認できます。
鋼材が同じでも、材料を断面の中心近くに集めるか、軸から離して配置するかで座屈のしやすさは変わります。材料強度だけで圧縮材を設計できない理由です。他の選択肢は、降伏後の余裕、曲げの方向、横座屈を防ぐ補剛の条件を述べています。鉄骨では「材料が強いこと」と「部材の形を安定して保てること」を分けて考えます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)降伏比は降伏点を引張強さで割った値です。一般に降伏比が小さいほど、降伏を始めた後に最大強度へ達するまでの余裕があり、塑性変形を部材へ広げやすくなります。例えば降伏比0.9では降伏点が最大強度に近く、0.6なら相対的に離れています。ただし、この比だけで実際の伸びや接合部の性能が全て決まるわけではありません。幅厚比、横補剛、溶接部なども適切にして、鋼材の性質を梁の変形能力として生かします。
選択肢2
(2)H形鋼には、同じ断面でも曲がりにくい強軸と、曲がりやすい弱軸があります。弱軸回りの曲げでは、強軸曲げの圧縮フランジが横へ逃げてねじれる横座屈と扱いが異なり、幅厚比の制限を満たす条件で許容曲げ応力度を許容引張応力度と同じ値にできます。応力度の許容値が同じでも、弱軸の断面係数は小さいため、許容できる曲げモーメントまで強軸と同じになるわけではありません。値と断面形状を掛け合わせて判断します。
選択肢3
(3)SN490BはSN400Bより高い降伏強度を持つ側の鋼材ですが、ヤング係数まで同じ割合で大きくなるわけではありません。高い曲げ応力度へ到達するまで横座屈を防ぎ、塑性変形を確保するには、横補剛の間隔により厳しい条件が必要になります。本問の弱軸回りの細長比200、均等間隔という条件では、SN490Bのほうが必要箇所数は多くなります。強い鋼へ交換しただけで補剛を減らせると考えず、降伏と座屈の両方を比較します。
選択肢4
(4)断面二次半径iが小さいと、有効細長比は大きくなります。圧縮力を受けた部材は、材料が降伏する前に横へ曲がる座屈が起きやすくなるため、許容圧縮応力度を大きくできません。例えば同じ長さでiを半分にするとは2倍です。面積だけを増やしても、材料が座屈軸の近くへ集まる形ではiが十分に増えない場合があります。どの軸回りに座屈するかを確かめ、その軸についてIとiを用います。
周辺知識
紙を平らなまま縦へ立てると弱くても、筒に丸めると同じ量の紙で重さを支えやすくなります。材料の強さが変わったのではなく、断面が広がり、曲がりにくさが増えたためです。鉄骨のIやiも、この断面の配置の効果を数値化しています。H形鋼が効率的なのも、曲げに役立つ離れた位置へフランジを配置するためです。
鉄骨の不安定な変形には、部材全体が曲がる座屈、フランジやウェブの板が波打つ局部座屈、梁が横へ逃げながらねじれる横座屈があります。局部座屈には板の幅と厚さの比、横座屈には横補剛の位置や間隔などが関係します。全てを単に「座屈」とだけ覚えると、どこを補強すべきかが分かりにくくなります。
弱軸は力の向きの名前ではなく、断面がその軸回りに曲がりにくい程度を比べた呼び名です。同じ柱にも軸ごとに違うiがあります。計算では最も不利な座屈の向きと支持条件を確認します。高強度鋼を使う場合も、弾性の曲がりにくさEはほぼ同程度なので、材料強度の増加を生かすために座屈を十分抑える必要があります。