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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問9

問題・正答・学習用解説

問題

木造軸組工法による地上2階建ての建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    圧縮力を負担する構造耐力上主要な部分である柱の有効細長比を150以下とした。
  2. (2)
    9cm角の木材の筋かいを入れた軸組の倍率(壁倍率)を3とし、9cm角の木材の筋かいをたすき掛けに入れた軸組の倍率(壁倍率)を5とした。
  3. (3)
    布基礎の底盤の厚さを、所定の構造計算を行わず、12cmとした。
  4. (4)
    建築物の高さが7m、延べ面積が300m²であったので、壁量の検討及び耐力壁の釣合いのよい配置の検討を行い、許容応力度計算は行わなかった。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

布基礎は、壁や柱の下に沿って連続する帯状の基礎です。地面へ接する横に広い部分が「底盤」、その上に立つ縦の部分が「立上り」です。建物の重さを底盤で広い地盤へ渡すため、底盤には地面からの押し返しを受ける曲げやせん断が生じます。形が違う部分の寸法を、同じ「基礎の厚さ」として覚えないことが大切です。
所定の構造計算によらずに布基礎を設ける場合、底盤の厚さは15 cm\displaystyle 15\,\mathrm{cm}以上とします。選択肢3の12 cm\displaystyle 12\,\mathrm{cm}は、この最低厚さより3 cm\displaystyle 3\,\mathrm{cm}薄く不適当です。立上り部分の厚さに用いられる12 cm\displaystyle 12\,\mathrm{cm}という値との取り違えに注意します。底盤を幅広くするだけでも、厚さ不足が自動的に補われるわけではありません。広く張り出すほど、その部分を曲げようとする作用も変わります。
この問題の他の選択肢は、圧縮される木の柱が座屈しないための細長比、筋かい入りの壁の評価、建物規模に応じた構造計算の扱いです。いずれも部材を単独で強くすれば済む話ではありません。柱・壁で受けた地震や風の力を接合部から基礎、地盤へ連続して流せるよう、寸法・壁量・配置をそろえて確認します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)有効細長比は、支え方を反映した柱の長さを、断面の広がりを表す断面二次半径で割った値です。数が大きいほど、細く長い定規を縦から押すように横へ曲がりやすくなります。木造の構造耐力上主要な圧縮柱について150以下とする記述は適切です。柱の断面積が圧縮力に耐えられても、途中が大きく横へ逃げる座屈が先に起きる可能性があるため、材料の圧縮強度とは別に細長さを制限しています。

選択肢2

(2)壁倍率は、耐力壁の水平抵抗を基準の壁に対する倍率として扱う数値です。9 cm\displaystyle 9\,\mathrm{cm}角の木材の筋かい一本を入れた軸組は3、同じものを交差させたたすき掛けは5として扱う記述です。一本の倍率3を単純に二倍して6とはしません。交差する二本がそれぞれ独立して無制限に抵抗できるわけではなく、柱・梁や接合部も同じ壁の力を伝えるため、告示に定められた組合せと上限に従って評価する必要があります。

選択肢3

(3)底盤厚さ12 cm\displaystyle 12\,\mathrm{cm}は、構造計算を省略して仕様規定で設ける布基礎の15 cm\displaystyle 15\,\mathrm{cm}以上という条件を満たしません。立上りの幅、地面からの立上り高さ、地中に埋める根入れ深さ、底盤厚さは、それぞれ別の寸法です。12 cm\displaystyle 12\,\mathrm{cm}という数字を知っていても、どの部分の基準かが違えば使えません。本問は「所定の構造計算を行わず」と明記されているので、別途計算で安全性を確認する扱いを仮定して適切とすることもできません。

選択肢4

(4)地上2階、高さ7 m\displaystyle 7\,\mathrm{m}、延べ面積300 m2\displaystyle 300\,\mathrm{m^2}という本問の規模では、壁量や耐力壁の配置を確認したうえで、許容応力度計算によらない設計の扱いが可能です。許容応力度計算は、部材へ生じる力を求め、材料が安全に受けられる応力度以下かを一つずつ照合する方法です。それを行わないことは、構造安全を全く調べないという意味ではありません。階数・高さ・面積で適用範囲を確かめ、仕様規定の壁量・配置・接合部などを満たす必要があります。

周辺知識

木造軸組の柱と梁だけで作った四角形を横から押すと、接合部が回って平行四辺形になりやすくなります。斜めの筋かいや構造用合板などを設けてこの変形を抑える壁が耐力壁です。必要な量を満たしていても、一方の側へ壁が集中すると、その側だけが動きにくくなって建物がねじれます。そのため「どれだけあるか」と「どこにあるか」を別に確認します。
壁倍率×壁の長さ\displaystyle \text{壁倍率}\times\text{壁の長さ}を合計したものが、壁量の評価の基本になります。ここでいう壁量は、壁の重さや面積をそのまま足した値ではありません。筋かいの種類、面材、接合金物などが定められた構成で初めて、その倍率を使えます。強い材料を一本置くだけで、規定の耐力壁になるわけではありません。
地震時には耐力壁の端の柱を引き抜く力も生じます。柱から土台、アンカーボルト、鉄筋コンクリート基礎へと力を渡し、最後に地盤で支えることが必要です。底盤の厚さや鉄筋が重要なのは、上部の壁を強くしても、その力を受ける基礎が先に壊れれば建物全体の抵抗が成立しないからです。部材・接合部・基礎を一続きの経路として見ます。