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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問8

問題・正答・学習用解説

問題

建築基準法における建築物の構造計算に用いる風圧力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    風圧力を計算するに当たって用いる風力係数は、風洞試験によらない場合、建築物の断面及び平面の形状に応じて定める数値によらなければならない。
  2. (2)
    単位面積当たりの風圧力については、一般に、「外装材に用いる風圧力」より「構造骨組に用いる風圧力」のほうが小さい。
  3. (3)
    ガスト影響係数Gf\displaystyle G_fは、風の時間的変動により建築物が揺れた場合に発生する最大の力を計算するために用いる係数である。
  4. (4)
    風圧力を計算するに当たって用いる速度圧qは、建築物の高さと軒の高さとの平均Hの平方根に比例する。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

速度圧qは、風の速さを、面積1 m2\displaystyle 1\,\mathrm{m^2}当たりに作用する圧力の尺度へ換算した値です。構造骨組に用いる基本式はq=0.6EV02\displaystyle q=0.6EV_0^2で、V0\displaystyle V_0は地域ごとに定める基準風速、Eは高さや地表面の状態、風の変動の影響をまとめた係数です。qの単位はN/m2\displaystyle \mathrm{N/m^2}、風速の単位はm/s\displaystyle \mathrm{m/s}です。
EはE=Er2Gf\displaystyle E=E_r^2G_fと表し、Er\displaystyle E_rは平均風速の高さ方向の変化、Gf\displaystyle G_fは風の時間的な変動と建物の応答を表します。高いところほど風が速くなる傾向はありますが、その変化は周辺が開けた場所か、建物が密集する場所かでも異なり、一定の高さ以下では扱いも変わります。したがって、どの建物でもq∝H\displaystyle q\propto\sqrt Hになるという選択肢4は成り立ちません。
例えば同じEで基準風速が30 m/s\displaystyle 30\,\mathrm{m/s}から60 m/s\displaystyle 60\,\mathrm{m/s}へ2倍になると、速度圧は二乗により4倍です。しかし高さHを2倍にしたときは、Eの算定条件を確かめなければ倍率を決められません。風速の二乗と高さの平方根を混同しないこと、qに建物形状による風力係数を掛けて実際の風圧力を求めることが、この問題の整理の軸になります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)同じ速さの風でも、平らな壁に正面から当たる場合、屋根の端で流れが剥がれる場合、建物の内側に圧力が生じる場合では、表面に働く力が違います。その形状や内外圧の違いを表すのが風力係数です。風洞試験でその建物の性状を調べない場合は、告示などで断面・平面形状に応じて定められた値を用います。設計者の印象で係数を小さくしたり、形の違う建物の係数を無条件に使ったりするものではありません。

選択肢2

(2)外装材は窓ガラスや屋根材など比較的小さな部分を指し、その場所で一瞬だけ生じる大きな吸引力などを直接受けます。一方、柱・梁の骨組全体が受ける力は、建物の広い面に作用する風圧の合計です。各場所の最大値は同時刻にそろうとは限らないため、単位面積当たりでは外装材用のほうが大きくなるのが一般的です。骨組全体の力の合計が小さいという意味ではなく、対象面積と局所的な最大圧の扱いの違いです。

選択肢3

(3)ガストは、平均的な風速の周りに生じる強弱の変動、いわば風の息です。建物はその変動で揺れるため、平均的な力だけでは最大の作用を捉えられません。ガスト影響係数Gf\displaystyle G_fは、その変動や建物の揺れを考慮して最大の力を評価するために使います。風が一様に一定速度で流れている状態の係数ではありません。また、地域の基準風速や、建物形状による風力係数とは別の役割なので、それらの代わりに用いることもできません。

選択肢4

(4)高さHの平方根に一律に比例すると、地表面の粗さが違っても高さを4倍にすれば常に速度圧が2倍という関係になります。しかし実際の式では、Hは地表面粗度区分などに応じてEr\displaystyle E_rへ反映され、さらにGf\displaystyle G_fも組み合わされます。基本式q=0.6EV02\displaystyle q=0.6EV_0^2の二乗は風速に付くもので、高さの関係を直接決めているわけではありません。「高いほど大きい」という傾向と、特定のべき乗へ比例するという数式上の断定を区別します。

周辺知識

風圧は風上の壁を押すだけではありません。建物の横や屋根の上で空気の流れが速くなったり剥がれたりすると、外向きへ引く負圧が生じます。強風で屋根材が浮き上がるのは、この吸い上げる作用のためです。窓や屋根の設計では、内側の圧力と外側の圧力の差も考える必要があります。
周囲に障害物が少ない海岸や平地と、建物が密集する市街地では、地表近くの平均風速や乱れ方が違います。これを地表面粗度区分として扱います。「粗い」は地面の表面を手で触った感触ではなく、風を遮る建物や地形の状況を意味します。高さの影響を考える際に、この区分を抜かしてはいけません。
構造骨組用の風圧力は、おおむね速度圧qと風力係数の積で表されます。単位面積当たりの圧力へ負担面積を掛けると、部材や接合部に働く力になります。例えば1,000 N/m2\displaystyle 1,000\,\mathrm{N/m^2}が2 m2\displaystyle 2\,\mathrm{m^2}の面へ一様に働けば合計2,000 N\displaystyle 2,000\,\mathrm{N}です。ただし、屋根の隅など局部的な圧力が大きい場所を、全面の平均値で薄めて評価することはできません。計算対象が建物全体か一枚の外装材かを先に決めます。