学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
建築基準法における建築物の構造計算に用いる地震力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
水平震度kは、重さの何倍を水平方向の地震力として見込むかを表す、単位のない係数です。例えば重さにを掛ければ、水平地震力はになります。天気予報などで聞く「震度6」とは別の量です。
建築物の地下部分では、地盤面からの深さHをで表し、を用います。Zは地域の地震活動を反映する地震地域係数で、Hがを超える部分ではとして計算します。例えばなら、地盤面でのとき、深さで、深さで0.05です。深さが増えるほど括弧の中が小さくなるため、選択肢1の「大きくなる」が逆です。以深でも減らし続けて0や負の力にするわけではありません。
地上部分は別の式で、地盤の種類、建物の揺れの周期、階の高さによる分布などを組み合わせます。地下のk、上階への地震力の配分を表す、大地震に対する標準せん断力係数を混ぜずに、まずどの部分・どの設計段階の係数かを区別します。選択肢2~4はその地上部分の扱いとして適切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)地下の水平震度は、深さHが0~の範囲で小さくなります。式のでは、Hを増やすと引く数が大きくなるためです。周囲の地盤とともに動く地下部分について、地表面に近い部分と同じ扱いを深部まで続けない規定になっています。ただし、地下階が支える地震層せん断力には、地下自身の地震力だけでなく地上から伝わる力も含まれます。kが小さくなることを、地下階全体の負担が必ず小さいと読み替えてはいけません。
選択肢2
(2)一次固有周期Tは、建物が主な揺れ方で一往復する時間です。第一種地盤は硬い側、第三種地盤は軟らかい側の区分で、長い周期の揺れに対する増幅の傾向が違います。Tが長い建物では、軟らかい第三種地盤で振動特性係数が大きくなるため、同じ重量や地域係数なら設計地震力が大きくなるのが一般的です。「軟らかい地盤はクッションだから常に地震力が小さい」という理解では、地盤と建物の周期の関係を捉えられません。
選択肢3
(3)は、建物の各階がどれだけ地震力を負担するかという高さ方向の分布を調整する係数です。一般に上の階ほど値が大きく、Tが長い場合にも上階で大きくなる傾向があります。上部が下部に対して大きく動く揺れ方を反映するためです。ただし、実際の層せん断力は係数だけでなく、その階より上の重量も掛けて求めます。上階でが大きいことから、上階のせん断力そのものが下階より必ず大きいとはいえません。
選択肢4
(4)必要保有水平耐力は、大地震で倒壊を防ぐため、その階に必要となる水平の強さです。この検討の基になる地震力では標準せん断力係数を1.0以上とします。普段の使用に近い段階で部材を弾性範囲に収める検討の0.2とは、想定する地震の大きさと確認する性能が異なります。最終的な必要耐力は構造特性係数や形状の偏りの係数も用いるので、「建物の重さと同じ力を全ての部材へ直接加える」という意味ではありません。
周辺知識
電車が急に発進すると、体は元の場所へとどまろうとして後ろへ傾きます。地震でも地面が動いたとき、建物の質量に同じ慣性の作用が生まれ、柱や壁へ水平力が伝わります。建物を重くすれば、同じ加速度でも必要な力は大きくなります。地震力の式で建物の重量を掛けるのは、この力と質量の関係を表すためです。
地上部分の地震層せん断力係数はです。地域の違いをZ、地盤と揺れの周期の組合せを、高さ方向の配分を、設計する地震の段階をで表します。それぞれを単なる暗記記号にせず、「どの違いを調整するための係数か」に分けると、増減の問題も整理できます。
耐震設計では、比較的起こりやすい地震で大きな損傷を避けることと、まれな大地震で人命を守ることを段階的に確かめます。大地震では一部に元へ戻らない変形が生じることを許しつつ、急激に力を支えられなくならない性能が重要です。地下と地上の式の違い、地震の段階の違いを混ぜず、過去問の対象部分と計算目的から読み始めます。