学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
図のような、柱と梁が剛接合された2階と、柱頭及び柱脚がピン接合され、筋かいを有する1階からなる架構が、水平荷重3P及びPを受けている。次の記述のうち、誤っているものはどれか。ただし、部材は等質等断面で伸縮はないものとし、部材の自重は無視する。
選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
軸力は部材の長さ方向に押したり引いたりする力、せん断力は部材を横にずらす力です。本問では、2階を曲げで支える四角い骨組と、1階を斜材Eで支える三角形を分けて読むと整理できます。2階へ右向きに3Pを加えると、骨組を時計回りに回す作用が生じます。これを幅の左右の鉛直力の対で支えるので、その力はです。
この結果、1階左柱Cにはの引張力が伝わります。一方、1階全体が負担する横力は上階からの3Pとその階のPの和で4Pです。斜材Eの形は水平、鉛直、長さの直角三角形。軸力の水平成分がなので、より、鉛直成分は3Pです。
引張斜材Eは右上の接点を左下へ引きます。その下向き3Pも右柱Dが支えるため、Dの圧縮軸力は、次のとおりです。
したがって軸力の大きさの比は。選択肢3の3:10が誤りです。柱CとDに生じる力の向きは引張りと圧縮で違いますが、ここでは「大きさ」の比なので正の値同士で比較します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)柱Aには、上階の水平力3Pの半分であるのせん断力が生じます。左右の柱が同じ条件で並び、鉛直部材の伸縮を無視する対称な骨組なので、左右が分担します。この上階の矩形骨組では柱・梁の端部モーメントの大きさがとなり、梁Bのせん断力は両端のモーメントを幅で結ぶ、次のとおりです。
よって
となり、記述と一致します。
選択肢2
(2)部材の接続点へ外から回す力を加えていないため、そこで柱の端部モーメントと梁の端部モーメントはつり合います。本図の2階は柱と梁が固く接合された矩形で、途中に分布荷重などがないので、曲げモーメントの大きな箇所は部材端です。端部の大きさが柱側と梁側で一致し、それぞれの最大値も等しくなります。これは本図の荷重・接合条件での結果で、どんな骨組でも柱と梁の最大値が等しいという意味ではありません。
選択肢3
(3)3:10は、筋かいによって右柱に付け加わる鉛直力を正しく数えられていません。Cは引張り、Dは圧縮、次のとおりです。
斜材の水平成分4Pを、そのまま鉛直成分としてDへ足すことはできません。傾きから鉛直成分は3Pと分解する必要があります。左右柱を単純に同じ軸力とすることも、斜材の全軸力5Pを丸ごと縦の力にすることも、この接点の上下のつり合いを満たしません。
選択肢4
(4)1階を上部から切り離して見ると、そこへ流れ込む水平力はです。上下端がピンの鉛直柱C・Dは、理想化した本図では曲げによる水平抵抗を担わないため、斜材Eが水平力を受け持ちます。斜材の軸力のうち横方向へ働く割合はなので、、です。右上の接点を左へ引き戻す向きになることから、圧縮ではなく引張りである点も図から確認できます。
周辺知識
骨組を考えるときの基本は、横方向の力、縦方向の力、回そうとする作用の三つがそれぞれつり合うことです。例えば右向きの力を上階へ加えると、建物全体を倒すモーメントが生じます。左右の柱の一方を引き抜き、他方を押し込む鉛直力の対が、その回転を止めます。水平荷重しか描かれていなくても、柱には鉛直の軸力が生じる理由です。
筋かいは斜めの方向にしか力を伝えない部材として扱います。その一本の力を、水平と鉛直の二つの成分へ分けて接点のつり合いに使います。の三角形なら、長さ5に相当する全軸力のうち、横が、縦がです。横力の計算と縦力の計算を別々にする際も、元は同じ一本の斜材の力なので、両成分を忘れずに追います。
層せん断力は、その階より上にある水平荷重を合計したものです。本問は2階で3P、1階で4Pとなります。各階に直接描かれた矢印だけを見ると、下階の負担をPと誤解してしまいます。また、引張り・圧縮の符号を付けた計算結果と、正の数で比べる「大きさ」は区別します。