学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問19
問題・正答・学習用解説
問題
建築積算に関する次の記述のうち、建築工事積算研究会「建築数量積算基準・同解説」に照らして、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。一つの工事科目で単独に使う仮設は「専用仮設」です。「直接仮設」は、工事種目ごとの複数の工事科目に共通して使う仮設を指すため、定義を取り違えています。
仮設とは、完成した建物の一部として残すことを主目的にするのではなく、工事を進めるために一時的に設ける設備や施設などです。例えば高い位置の作業のための足場は、完成品そのものではなく、完成品を安全に造るために必要なものです。工事の費用を計算する際は、その費用をどこにまとめるかを統一しないと、複数の工事で重ねて計上したり、どこにも入れず漏らしたりします。
工事種目は建築や電気設備などの大きな区分、工事科目はその中のより細かな仕事の区分として捉えます。複数種目に共通して使うものが共通仮設、一つの種目内の複数科目で使うものが直接仮設、一つの科目に専用のものが専用仮設です。身近な例なら、学校全体で使う道具、ある学年で共用する道具、一つの授業だけで使う道具を分けるように、使用範囲を順に狭めて理解できます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。「工事科目で単独に使用する」という本肢の内容は専用仮設の定義に対応します。直接仮設は、一つの工事種目の中の複数の科目で共通して使うものです。名称の「直接」から、一つの作業だけに直接使うと推測すると取り違えます。積算基準の区分は、どの範囲の工事が費用を共通に負担するかを揃えるためのものです。本肢の「直接仮設」を「専用仮設」と直すと、使用範囲と名称が対応します。
選択肢2
(2)適当です。災害防止の仮設は、工事中の墜落、物の落下などから作業者や第三者を守るための設備です。垂直養生は建物の外周等を縦方向に覆い、安全ネットや開口部の手すりは、人や物の落下を防ぐ役割を担います。工事敷地の中だけが対象ではなく、近くを通る人などの安全も含みます。完成後には撤去するものでも、工事中の安全のために必要である以上、その設置に要する数量と費用を適切に見込む必要があります。
選択肢3
(3)適当です。木造の軸組構法では、柱や梁の軸組、床を支える床組、屋根を支える小屋組などに分けて数量を整理します。小屋組は小さな別棟という意味ではなく、屋根の荷重を下へ伝える骨組みです。木材をそろえるだけでは建物にならず、接合金物や接合具で力を伝え、必要な防腐・防蟻処理で耐久性を確保します。したがって木材の本数や体積だけに注目せず、接合と処理等を含めて木躯体を扱うという本肢は適切です。
選択肢4
(4)適当です。柱と梁、梁と床板などが重なる部分を両方で数えると、コンクリートの体積を二重計上します。そこで基礎、柱、梁、床板、壁、階段等という定められた区分の順に従い、後の部分が先の部分へ接続するものとして数量を求めます。これは実際にコンクリートを打ち込む順序を指定する文章ではなく、数量上の境界の決め方です。部材の接合部も漏れなく一度だけ数えるための、共通の計測ルールと理解します。
周辺知識
積算は、設計図から必要な材料や作業の数量を読み取り、単価などを用いて費用を組み立てる仕事です。数量が合わなければ、単価が正しくても総額は合いません。そのため、何を含め、どの境界まで測り、どの区分に計上するかを、関係者が共通に理解することが大切です。
例えば、幅0.5m、長さ4m、厚さ0.2mの単純な直方体の体積は、です。しかし実際の梁や床板は柱と接続しているため、図面上の全長をそのまま各部材に使うと重なる部分が生じます。数量積算基準の接続の考え方は、この重複や隙間を防ぐためのものです。
また、工事費には目に見えて残る材料だけでなく、足場、安全設備、清掃、接合や処理なども関係します。完成した姿だけから費用を想像すると必要な仕事を見落とします。「完成品」「それを造る手段」「安全に作業する環境」という三つを分けて考えると、躯体と仮設の区分や、それぞれを積算する理由が分かります。