学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」に照らして、最も不適当なものは、次のうちどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。問題が指定する四会連合協定の約款では、受託者が設計業務、監理業務又は調査・企画業務の全部を、一括して第三者へ委託することは禁止されています。「書面で同意を得れば全部を丸ごと任せてよい」という規定ではありません。
委託者は仕事を頼む側、受託者は頼まれた仕事を引き受ける側です。委託者は受託者の技術力や仕事の進め方を見て依頼しています。それなのに受託者が実質的な仕事をすべて別の者へ移してしまうと、誰に何を期待して契約したのかが失われ、責任の所在も分かりにくくなります。そこで、全部の一括再委託と、専門家に一部分を協力してもらう再委託を区別しています。
例えば設計の一部を他の建築士事務所へ委託する場合は、業務の概要や相手方の情報等を書面で示し、趣旨を説明して承諾を得るという扱いです。一部の再委託ができる場合でも、受託者が委託者に対する責任から離れるわけではありません。本肢は、この一部の再委託の考え方を「全部」に広げた点が誤りです。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。敷地の情報、建てたい建物の用途、必要な部屋、予算や運営上の条件などが分からないままでは、受託者は適切な設計を進められません。約款は、業務に必要な情報を受託者の求めに応じて速やかに提供する役割を、委託者に定めています。設計者が専門家だから何も伝えなくてよいという関係ではありません。例えば将来の増設予定を委託者だけが知っているなら、その情報を共有して初めて将来に対応した配置を検討できます。
選択肢2
(2)不適当です。約款は、設計、監理、調査・企画の業務の全部を一括して第三者へ委託することを認めていません。委託者の書面同意があれば例外になる、と読み替えることはできません。一部の再委託について、事前の書面交付、説明、承諾などを求める規定と混同しています。「全部か一部か」は実質的な業務の分担に関わる重要な語です。第三者へ協力を頼むこと自体が全面禁止なのでも、同意があれば丸投げ自由なのでもありません。
選択肢3
(3)適当です。著作建築物は、著作物に該当する建築物を指します。本約款では、受託者がそこへ実名又は変名、つまり本名や別の活動名を表示する際、委託者の承諾を得る扱いです。創作した人としての権利があることと、依頼者が所有・利用する建物にどのような表示を置くかは、分けて調整します。例えば外壁に設計者名の表示を設けたい場合、著作者だから無断で決めてよいとせず、契約に沿って承諾を得るということです。
選択肢4
(4)適当です。約款では、契約に定めがある場合に加え、委託者の請求があるときにも、受託者は業務の進捗を説明・報告します。「毎週報告する」という個別の取り決めがないことを理由に、依頼者から求められた説明を拒めるわけではありません。どこまで検討が進み、何が未決定で、今後どの判断が必要かを共有することは、誤解や手戻りを減らす助けになります。完成した図面を最後に渡すだけで、途中の説明が不要になる関係ではありません。
周辺知識
業務委託契約は、「図面を作ってお金を受け取る」という一文だけでは運用できません。誰が必要な情報を渡すか、何を成果物として提出するか、途中で条件が変わったらどうするか、第三者の協力をどう扱うかなどを、当事者間で明確にする必要があります。約款は、こうした共通の取り決めをまとめた契約条件です。
本問でいう監理は、現場で人員や工程を直接動かす施工管理とは異なります。工事が設計図書に合っているかを確認する工事監理等を含む業務であり、設計や調査と同様に、専門性と責任を持って引き受けます。再委託で他者が関わる場合も、業務範囲と責任関係を曖昧にしないことが重要です。
契約文を読む際は、「及び」と「又は」、「全部」と「一部」、「承諾」と「通知」といった語を具体的な行動に置き換えます。相手に知らせるだけなのか、相手の了承が必要なのかで手続は違います。また本問は指定された約款への適合を問うため、別の工事請負約款や一般的な契約のイメージをそのまま当てはめないようにしましょう。