学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問17
問題・正答・学習用解説
問題
駅及び駅前施設(所在地)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事で目指した外観は、戦災後の復興工事による2階建ての姿ではなく、創建時の3階建てと南北のドーム屋根を備えた姿です。現在まで残った部分をできるだけ保存しながら、失われた部分を調査に基づいて復原しています。
ここで「保存」は既存の価値ある部材や姿を守ること、「復原」は失われた過去の状態を根拠に基づいて戻すことです。古く見える建物なら、どの時代の外観でも同じというわけではありません。東京駅では、創建、戦災、応急的な復興、保存・復原という時間の順序を整理する必要があります。
本肢の免震構造や駅・ホテル・ギャラリーの複合という部分は適切です。免震は、建物と地盤側との間に地震の揺れを伝わりにくくする装置を置く仕組みで、歴史的な駅舎を使い続けるための安全性を高めています。歴史的な外観の復原と現代の構造技術の導入は両立します。誤りは「戦災後の復興工事による外観を保存」と、復原の目標時点を取り違えた部分です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。岩見沢複合駅舎は、駅と交流機能等を組み合わせ、地域の歴史を材料にも表した建築です。カーテンウォールは建物の外側を覆う非耐力の外壁で、その縦の区切り材がマリオンです。ここに古い鉄道レールを使い、レンガの壁と組み合わせることで、鉄道とともに発展した街の記憶を表しています。レールを展示品として置くだけでなく、外観の構成要素として再利用している点が事例の特徴です。
選択肢2
(2)不適当です。戦災後は創建時とは異なる2階建て等の姿になっていましたが、保存・復原工事では創建時の3階建てとドームの外観へ戻しています。免震化したことや、ホテル・ギャラリー等を併せ持つことは誤りではありません。複数の正しい特徴が並んでいても、「どの時代の姿を残すか」という一箇所を確認します。既存のレンガ等の保存と、失われた上部の復原、地下部等を利用した免震化を組み合わせた事例です。
選択肢3
(3)適当です。京都駅ビルは、中央コンコースを大きな谷のような空間として捉え、東西に段状の構成を広げた複合建築です。アトリウムは、複数階にわたる吹抜け等の大きな内部空間を指し、ガラスで覆われた中央部に特徴があります。駅の通過動線だけでなく、段丘状の空間や階段を介して商業、宿泊などの機能へつなぎます。地形の言葉を使った説明は比喩ですが、実際の断面や人の移動に対応した空間構成を表しています。
選択肢4
(4)適当です。エンクロスは、鉄道やバスを待つ場所に読書や市民活動の機能を重ね、駅前を通過するだけでなく滞在できる場にしています。グリッドは格子状の並びを意味し、柱と梁を繰り返す骨組みが空間の基本になります。プレキャストコンクリートはあらかじめ製作したコンクリート部材です。既存駅舎との関係を考えた柱梁の構成と、広場などの周辺空間まで含めた整備を、機能と形の両面から理解します。
周辺知識
駅は列車に乗るための施設であると同時に、多くの人が日常的に通る街の接点です。交流施設、図書閲覧、店舗、ホテルなどを組み合わせると、通勤客以外も訪れる理由が生まれます。ただし機能を詰め込めばよいのではなく、乗換えを急ぐ人とゆっくり滞在する人の流れを整理し、誰でも使える通路や広場を分かりやすく確保する必要があります。
本問の四例は、街との関係を異なる方法で表しています。岩見沢はレンガとレールという材料の記憶、東京駅は歴史的な外観と継続利用、京都駅は谷や段丘に例えられる大きな立体空間、エンクロスは身近な市民活動と待合の重なりが特徴です。材料、断面、歴史、運営という異なる観点で整理すると混同しにくくなります。
歴史的建築では、保存・復原・改修の違いも大切です。外観を過去の状態に戻しても、設備や安全性まで過去の水準へ戻す必要はありません。どの価値を継承し、現代の利用をどの技術で支えるかが、長く使い続けるための計画の中心になります。