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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問16

問題・正答・学習用解説

問題

総合病院の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    病室の出入口の有効幅員は、円滑に患者をベッドごと搬送できるように、1.35 mとした。
  2. (2)
    下部内視鏡検査を行う部門の患者待合エリアには、検査衣に着替えるための更衣室や前処置のためのトイレを併設した。
  3. (3)
    中央材料部門は、手術室で使用した器材の洗浄・滅菌を行うため、手術部と専用の搬送設備で直結させたうえで、手術部以外の部門に対しては廊下経由の搬送経路を確保した。
  4. (4)
    産科部門は、LDR(Labor Delivery Recovery)を採用し、陣痛・分娩・回復という出産の過程に応じて、専用の部屋をそれぞれ設けた。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。LDRは、Labor(陣痛)、Delivery(分娩)、Recovery(回復)の三つの段階を、原則として同じ部屋で過ごせるようにする方式です。三つの言葉が並ぶので三つの別室と思いやすいですが、この方式の特徴は、出産する人が段階ごとに移動しなくてよいことです。
陣痛で身体的な負担が大きいときに、ベッドを乗り換えたり廊下を移動したりすると、疲労や不安が増します。同じ室で必要な対応を続けられれば、落ち着いた環境とプライバシーを保ちやすく、家族が付き添う場合にも場所の移動を減らせます。そのため室には、普段の居室らしい居心地に加え、分娩に必要な設備や医療者の作業空間を用意します。
もちろん、緊急の手術など医療上必要な移動までなくすという意味ではありません。また、産後の入院期間全体を必ず同じ室で過ごすという意味でもありません。本肢は「段階に応じて専用の部屋をそれぞれ設けた」とし、LDRの基本的な空間構成を逆に説明しているため不適当です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。有効幅員は、図面上の扉枠全体の幅ではなく、扉を開けたときに実際に通れる幅です。病室では歩行者だけでなく、患者が寝たままのベッドや付随する機器を通すため、人一人分の幅では足りません。1.35mはその搬送を考慮した幅として適切です。ただし入口の幅だけで通れるとは限らず、廊下から曲がるときのベッドの軌跡や、開いた扉、家具との干渉も確認します。寸法は搬送の一連の動作と結び付けて考えます。

選択肢2

(2)適当です。下部内視鏡検査は大腸などを調べる検査で、検査の前には着替えや腸内をきれいにする準備が必要になります。そのため、待合の近くに更衣室と前処置用のトイレを設けると、検査衣で遠い場所まで行き来する負担を減らせます。ここでいう前処置は、検査を安全かつ観察しやすい状態で行うための準備です。トイレの数や位置、他の患者との動線、プライバシーを合わせて考え、単に通常の外来待合を置くだけで済ませない計画です。

選択肢3

(3)適当です。中央材料部門は、再使用する器材を集めて洗浄・滅菌し、再び必要な部門へ供給する拠点です。滅菌は器材を清潔に再使用するための処理で、見た目の汚れを落とすだけとは異なります。器材の使用量が多い手術部とは専用搬送設備で結ぶと効率的です。一方、他部門にも器材を供給するため、廊下経由の経路も必要です。使用済み器材と処理済みの器材を適切に分け、清潔性を保つ搬送方法と運用を組み合わせます。

選択肢4

(4)不適当です。LDRは陣痛から分娩、出産直後の回復までを同じ室で扱い、出産する人の移動を少なくする方式です。陣痛室、分娩室、回復室を別々に置き、それぞれへ移動する説明は従来の分離した構成に当たります。LDRでは部屋を移す代わりに、同じ室で医療者が必要な設備や環境を整えます。三つの段階を示す略語の意味と、それらを一室にまとめる計画上の目的を結び付ければ、名称だけの暗記による取り違えを防げます。

周辺知識

病院の計画では、人と物の流れを分けて描くと部門の位置関係を理解しやすくなります。歩ける外来患者、ベッドで移動する入院患者、医療者、器材、廃棄物では、必要な通路幅や清潔性、移動の頻度が違います。例えば患者用の近道が、使用済み器材を運ぶ経路と常に交錯する配置は、使いやすさと衛生管理の両面で検討が必要です。
部門を「近くする」方法にも、隣接させる、上下階で専用搬送設備を通す、同じ室に機能をまとめる、といった違いがあります。中央材料部門と手術部は大量の物を効率よく運ぶ関係、前処置室と検査室は患者の準備を途切れさせない関係、LDRは患者自身の移動を減らす関係です。いずれも距離だけでなく、何がどの状態で動くかが理由になります。
また、患者の安全を考えるには、器材をきれいにする作業と、処理後の状態を保って運ぶ作業の両方が必要です。洗浄、消毒、滅菌を同義と扱わず、部門間でどのような器材を運ぶのかも整理しましょう。本問の寸法や配置は、具体的な利用者と作業を思い浮かべることで意味が分かります。