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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問15

問題・正答・学習用解説

問題

公共建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    美術館において、紫外線カットフィルムを用いたハイサイドライトから自然採光によって展示室全体の均質照度を確保し、光量不足を補うためにLED照明による調光を行った。
  2. (2)
    保育所において、4 階に保育室を設置するため、特別避難階段に準じた屋内避難階段の付室には排煙設備を設け、乳幼児が安全に一定時間待避できるよう十分な広さを確保した。
  3. (3)
    地域図書館において、児童開架室に設けたお話しコーナーは床座としたので、靴の履き替えをスムーズに行わせるために100 mmの段差を設けた。
  4. (4)
    公民館において、避難所としての利用を想定し、マンホールトイレを避難時の居住エリアから離れた人目につきにくい場所に設置できる計画とした。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。避難所のトイレは、居住場所から安全に行けて、必要なときに安心して利用できる位置に計画します。遠くて人目につかない場所へ隔離すると、夜間の転倒や犯罪への不安が増し、子ども、高齢者、移動に時間がかかる人などが使いにくくなります。
マンホールトイレは、あらかじめ設けた排水系統等の上に便器や囲いを設置して、災害時に使えるようにするトイレです。便器を置けるだけでは十分ではなく、そこまでの経路、夜間の照明、個室の施錠や目隠し、待つ場所、清掃や汚物の処理まで計画する必要があります。排水方式によって下水道の被害や洗浄用水の確保との関係も確認します。
プライバシーを守ることは、周囲から助けを得られない場所に隠すことではありません。出入口や経路には適度に人の目が届き、個室内部は見えないという両立が大切です。においや音への配慮も必要ですが、それだけを理由に居住エリアから遠ざけると、災害時に最も支援が必要な人の利用を妨げてしまいます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。ハイサイドライトは壁の高い位置に設ける採光窓で、光を天井や壁で拡散させると室内の明るさを均質にしやすくなります。紫外線を減らすフィルムは展示品の劣化を抑えるため、調光できるLEDは天候による不足分を補うための工夫です。ただし、紫外線を除けばどれだけ照らしてもよいわけではありません。可視光による退色もあり、作品の材質に応じて照度や展示時間、直射光の有無も管理する計画として理解します。

選択肢2

(2)適当です。乳幼児は自分だけで素早く階段を下りられず、保育者が抱いたり誘導したりする時間が必要です。4階の保育室では、火災の煙を階段に入れにくくする付室と、その排煙が特に重要になります。付室は室内と階段の間に設ける緩衝空間です。そこで安全に一時待避できる広さを確保することは、全員が一度に階段へ移れない状況への配慮です。単に広いだけでなく、煙を防ぐ区画や戸、避難を助ける運用も一緒に整えます。

選択肢3

(3)適当です。お話しコーナーを床座にすると、子どもが靴を脱いで落ち着いて座れる場になります。100mm、つまり10cm程度の高さの違いを付けると、靴を履く領域と脱いで入る領域を認識しやすく、履き替えの境界をつくれます。これは特定の床座コーナーの計画であり、主な通路に自由に段差を設けてよいという意味ではありません。つまずきの防止や段差の見やすさ、車椅子利用者等も活動に参加できる経路や場所を合わせて考えます。

選択肢4

(4)不適当です。居住エリアから遠い、人目につきにくいという配置は、夜間の利用や見守り、安全確保に不利です。利用をためらえば、トイレを我慢するなど避難生活の負担にもつながります。避難所のトイレは、安全で分かりやすい経路から行ける位置に置き、照明や施錠を備えます。内部を見せない目隠しと、出入口周辺で異常に気付きやすい配置を両立させることが大切です。「人目を避けるほどプライバシーに優れる」という単純な考え方を訂正します。

周辺知識

公共建築物は、平均的な大人が平常時に使う場だけを想定しては計画できません。乳幼児、車椅子利用者、見えにくさのある人、災害で疲れている人など、利用者の状態により必要な支援が変わります。美術館では人の見やすさに加えて作品の保護、保育所では職員が援助して避難する時間、図書館では靴を脱ぐ活動と通行のしやすさを合わせて考えます。
避難所は、集会施設が一時的な生活の場へ変わる例です。日帰りの集会なら少なくて済む配慮でも、就寝や着替え、夜間のトイレが続くと問題になります。マンホールトイレも、給排水設備の図だけでなく、寝ている場所から暗い中で歩いて行き、待ち、使い、戻るまでを順番に想像すると、不足する設備を発見できます。
安全性とプライバシーは対立するものとは限りません。個室内部は隠し、経路は明るくして周囲に助けを求めやすくする、と役割を分ければ両立できます。施設計画では、一つの対策だけを大きくするのではなく、利用の流れ全体を成立させることが大切です。