学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
商業建築物等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。避難安全の性能設計は、火災時に人が安全な場所へ逃げ終わるまで、煙や熱によって危険な状態にならないかを、具体的な建物の条件に基づいて確認する方法です。国土交通大臣の個別認定を受ける方法は、将来の間仕切りやテナントを無条件に自由変更できる許可ではありません。
例えば、大きな売場を壁で細分化すると、出口までの歩行距離や煙が広がる範囲が変わります。店舗の用途が変われば、想定する人の数や燃える物の量が変わることもあります。これらは安全性を示した計算や評価の前提です。変更後も認定の範囲内か確認し、内容によっては再検証や認定等の手続が必要になります。
したがって「竣工後、短期間で容易に入替えや区画変更をするため」という理由は、この方法の選択理由として不適当です。性能設計には空間計画の自由度を得られる利点がありますが、それは安全性を立証した条件のもとでの自由度です。全ての変更が必ず再認定になるとも限りませんが、自由な変更を当然の前提にしてはいけません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。個別認定は、特定の避難経路、室の区画、排煙計画、在館者などの条件に基づきます。テナント変更に伴う壁や出口の移動がその条件を外れる場合、認定時の安全性の説明をそのまま使えません。変更の影響と必要な手続を確かめるため、短期間で容易な変更を常に保証する方式ではありません。建設時に仕様規定では実現しにくい空間を成立させる利点と、運用後の変更手続の少なさを取り違えた点が誤りです。
選択肢2
(2)適当です。明るい屋外から急に暗い客席へ入ると、暗い所を見る目の働きが十分に追い付かず、段差が見えにくくなります。アプローチの明るさを段階的に下げると、その変化に慣れる時間を確保できます。また、暗所の視覚を担う桿体は長波長の赤い光への感度が低く、赤を基調とする空間は暗順応への配慮として使われます。赤い材料なら照度にかかわらず安全になるわけではなく、通路や段差を認識できる照明も必要です。
選択肢3
(3)適当です。車椅子使用者用駐車スペースは、車を止める広さに加え、扉を開けて車椅子へ乗り移る空間などを確保する区画です。一般区画と同じ見た目では用途が伝わりにくいため、青い路面などで区別すると見つけやすくなり、対象外の駐車を抑える助けになります。青色そのものだけで利用が適正化されるわけではないので、標識、乗降用空間の表示、管理者による案内等も組み合わせます。本肢はその視覚的な区分の工夫です。
選択肢4
(4)適当です。風は高層建物に当たると下方へ流れたり、角を回り込んで速くなったりします。出隅を曲面にする方法は角周辺の流れを緩和する対策の一つです。クスノキやシラカシのような常緑高木は冬にも葉を保ち、地上付近の風を弱める働きが期待できます。ただし、樹木の大きさや密度、周辺の建物、風向に左右されるため、植えるだけで解決するとは限りません。必要に応じて風洞実験等で効果を確かめます。
周辺知識
建築の安全性は、「造った時の状態」と「使い続ける間の変化」をつなげて考えます。特に商業施設は、売場や商品の配置、来客数が変わりやすいため、将来の運用を初期設計で想定することが大切です。避難安全検証で使う人の数や歩行距離は、単なる書類の数値ではなく、実際に出口へ向かう人の動きに対応しています。
安全を説明する基本は、避難が終わるまでの時間と、煙などによって危険になるまでの時間を比較することです。壁や天井の変更で煙のたまり方が変われば、同じ出口を残しても同じ結果とは限りません。建物の所有者や管理者にも、どの条件を維持すべきか伝わるようにしておく必要があります。
また劇場の暗順応、駐車場の色分け、ビル風対策は、人の知覚や行動、自然現象への配慮です。色や形には効果がありますが、その効果が出る条件もあります。赤色内装、青色塗装、常緑樹という単語を万能な対策として暗記せず、どんな困難をどの仕組みで軽減するのかを確認しましょう。