学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
団地再生及び災害復興(所在地)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。真野ふれあい住宅は、阪神・淡路大震災後の復興の中で整備された、3階建てのコレクティブ住宅です。平家建ての建物を中庭の左右に対称配置したグループハウスという本肢の説明とは一致しません。
コレクティブ住宅とは、各世帯の独立した住戸を確保したうえで、食事や交流などの一部を共同で行える場所と仕組みを組み合わせる住まい方です。真野ふれあい住宅には個々の住戸と共同の食堂・厨房等があり、自分の生活を保ちながら住民同士が関われるようにしています。全員が常に一つの家族のように暮らすことを強制する仕組みではなく、私生活と共同活動を両立させる点が重要です。
災害復興では建物を供給するだけでなく、それまでの近隣関係が失われた人の孤立を防ぐことも課題です。本問の各事例は、既存団地の移動しにくさの改善、地域に開く食堂、生活の気配が感じられる共用廊下など、建物と人のつながりを一緒に再生しています。目的が似ていても、階数や住戸構成まで別事例と混同しないようにします。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。階段室型住棟は、階段を挟んで住戸へ入る形式で、長い共用廊下を持たないものが典型です。その既存住棟へエレベーターと廊下を加えると、複数の住戸を新しい移動経路で結べます。ゆいま〜る多摩平の森では、さらに介護や食堂の機能を組み合わせ、地域の人も関われる環境を整えています。ただし、この事例のエレベーターは3階までで、4階には階段移動が残ります。増設したから全住戸への段差が完全になくなるとは読みません。
選択肢2
(2)適当です。堀川団地は、住まいと商店が一体になった戦後の集合住宅を、歴史や地域との関係を生かして再生した事例です。耐震補強は地震への安全性、エレベーターは移動のしやすさ、多世代向けの改修は住む人の幅を広げるための対策です。DIY可能な住戸では入居者自身の住まいへの工夫も取り入れます。古い外観を残すだけでなく、現在の生活や地域の活動に合う性能と使い方を加える点を理解します。
選択肢3
(3)適当です。リビングアクセスは、共用通路と住戸の居間など日常の生活空間を近づけ、人の出入りや気配が伝わるようにする考え方です。釜石市天神復興住宅では、縁側のような共用廊下を上下階で互い違いに巡らせ、多様な住戸と交流の機会をつくっています。高齢者が室内に閉じこもりにくい環境や、自然な見守りにつながる工夫です。ただし、廊下から私生活が常に見えることを目標にするのではなく、住民が関わり方を選べる配慮も必要です。
選択肢4
(4)不適当です。真野ふれあい住宅は3階建てのコレクティブ住宅で、独立した住戸と共同食堂・厨房等を組み合わせた計画です。本肢の平家建て、中央の中庭、左右対称の各ユニットという一連の特徴は、この事例の説明にはなりません。「共同の場を持つ住宅」という共通点だけで同じ形式と判断しないことが重要です。個別住戸を基本とする共同生活の仕組みと、少人数の居室を一つの生活単位にまとめるグループハウスの構成を区別します。
周辺知識
団地の再生を考えるときは、建物の寿命と住民の生活の変化を一緒に見ます。建設当初は階段を問題なく使えた人も、長年住むうちに上り下りが負担になることがあります。構造体がまだ使えても、動線や設備、間取りが現在の生活に合わなくなるのです。耐震補強、エレベーター、共用廊下、住戸改修は、それぞれ別の問題に答える手段です。
災害復興でも、住戸の戸数を満たすことと安心して暮らせることは同じではありません。以前は挨拶を交わしていた隣人と離れ、体調の変化に誰も気付かない状況が生じることがあります。食堂や縁側状の廊下は、用事のついでに顔を合わせる機会をつくります。ただし、交流施設を造れば自動的に交流が生まれるわけではなく、運営や住民の意思も大切です。
事例を覚える際は、所在地と形の暗記に加え、「既存の何を残し、何を加え、どんな暮らしを支えるか」と整理します。これなら改修、復興、コレクティブ住宅の違いを、具体的な計画と結び付けられます。