学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
都市計画やまちづくりに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。住民と市町村が地域の将来像を話し合い、身近な道路や建物の建て方などのルールを決める説明は、「地区計画」の基本的な考え方です。「高度利用地区」は、土地をまとまりとして有効に使い、市街地の機能を更新するための、より具体的な都市計画上の制度です。
ここでいう高度利用は、単に建物を高くすることではありません。敷地を小さく分けて低い建物を密集させるより、建物を集約し、必要な床面積と道路沿いの空地を両立させるような利用を考えます。このため、容積率の上限だけでなく下限、建蔽率の上限、建築面積の下限などを定めます。容積率は各階の床面積の合計と敷地面積との比、建蔽率は建物が地面を覆う面積と敷地面積との比です。床面積を確保しながら地上には余裕を残す、という組合せをイメージすると理解できます。「将来像をみんなで決める」という広い説明と、土地利用の密度を具体的に調整する制度を区別する問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。総合設計制度は、一定の敷地規模や空地などの条件を満たし、良好な市街地環境に役立つ建築計画を総合的に評価する制度です。例えば歩行者が通れる空間や広場を整備する貢献と、容積率などの緩和を結び付けます。ただし「空地があれば必ず床面積を増やせる」という自動的な仕組みではありません。周辺への影響などを審査し、特定行政庁の許可を受ける、という手続まで含めて本肢は適切です。
選択肢2
(2)適当です。緑化地域は、市街地の緑を確保するため、対象となる新築・増築に敷地面積に対する一定割合の緑化を求める制度です。都市では建物や舗装が増えると植物の育つ場所が失われがちなので、建築の機会に緑を確保します。単に「緑を増やしましょう」と勧めるだけでなく、一定規模以上の建築について義務として扱う点が特徴です。対象規模や緑化率は指定等により決まるため、全国一律の任意の数値を当てはめません。
選択肢3
(3)不適当です。本肢のように地区の特徴や住民の意向を踏まえて将来像と具体的なまちづくりを定める説明は、地区計画に対応します。高度利用地区は、容積率の最高・最低限度、建蔽率の最高限度、建築面積の最低限度等によって土地の合理的な利用を誘導する制度です。名称の「高度」を「高度な住民参加」と読むのではなく、土地の使い方の密度や建物の集約と結び付けます。制度名だけを地区計画に直すと、記述の趣旨が通ります。
選択肢4
(4)適当です。伝統的建造物群保存地区が守るのは、価値のある一棟だけではなく、複数の建物と一体になって歴史的な町並みをつくる環境です。例えば宿場町では、町家の連なり、道との関係、塀や水路などにも意味があります。市町村が都市計画又は条例で地区を定める点も適切です。その中で特に価値が高いものを国が「重要伝統的建造物群保存地区」に選定する段階とは、主体と手続を分けて理解します。
周辺知識
都市計画制度を覚えるときは、「何を改善するか」「何を決めるか」「誰が決めるか」の三点を一緒に整理します。総合設計は一つの建築計画の公共的な貢献を評価し、許可を通じて規制を緩和する仕組みです。緑化地域は緑の不足、伝統的建造物群保存地区は歴史的な町並みという、守る対象が比較的明確です。
一方、地区計画は、地区の道路や公園、建物用途、敷地の大きさや壁の位置などを地域に応じて整える道具です。高度利用地区は建物を集約し、必要な床と地上の空間を確保するための密度のルールに着目します。「高さだけを制限する高度地区」とも名称が似ていますが、同じ制度ではありません。
例えば敷地1,000㎡に延べ面積3,000㎡なら容積率は300%です。建築面積が500㎡なら建蔽率は50%になります。この二つを別々に調整すれば、床を上方向に重ね、地上の半分を空けるような計画も考えられます。制度の数値は、こうした街の形や使いやすさに結び付いているのです。