学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問9
問題・正答・学習用解説
問題
便所・洗面所に関する次の記述のうち、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(国土交通省)」(令和3 年3 月)に照らして、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。問題が指定する令和3年3月の建築設計標準では、乳幼児用おむつ交換台の壁取付方式の図に、奥行60 cm程度、幅70 cm程度の例が示されています。設問の引出し寸法500 mm、すなわち50 cmは、この利用を想定した奥行として不足します。奥行と幅、壁・床取付方式と壁取付方式を取り違えず、図のどの寸法を読むかが重要です。
おむつ交換台は、開いた台に乳幼児を寝かせ、保護者が身体を支えながらおむつを替える設備です。収納時に薄く収まることだけを優先し、使用時の台を小さくしすぎると、身体を安全に支える範囲や介助する動作に無理が生じます。設置する空間も、台を開いた状態で保護者やベビーカーが通れるかまで確認します。
この60 cm程度は指定資料にある設計例の寸法として理解し、全製品に共通する法定最低値と読み替えないようにします。他の選択肢は、車椅子の回転・移乗の空間、操作部の分かりやすい配置、座位で使う手すりの高さに配慮した計画です。便所の使いやすさを、単に設備の有無ではなく具体的な動作から考える問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。指定の標準にある壁取付方式の図では、台を開いたときの奥行が60 cm程度、幅が70 cm程度で、500 mmの奥行は不足します。壁・床取付方式の別図の寸法と混ぜず、対象方式の引出し方向を読み取ります。台の利用時には乳幼児を支え、保護者が身体から手を離さずに作業できることが必要です。台自体の大きさだけでなく、ごみ箱や荷物置きの位置、扉や通路との干渉まで含めて設計します。
選択肢2
(2)適当です。直径1.8 mの円が内接する空間は、車椅子がその場で方向を変えるための余裕に関係します。内法は壁の内側の使える寸法で、柱の中心間の寸法ではありません。オストメイト用流しは人工肛門・人工膀胱などを使用する人が装具を扱う設備で、通常の便器だけでは代替できません。各設備を置いた後も回転、接近、移乗の空間が確保されるよう、便房全体の配置を確認する必要があります。
選択肢3
(3)適当です。操作部の位置を共通化すると、視覚障害者が初めて入る便房でも、紙巻器などを手掛かりに洗浄ボタンや呼出しボタンを探しやすくなります。洗浄を紙巻器の上、呼出しを同じ高さの後方へ200 mm離す配置は、その考え方に沿います。呼出しは困ったときに助けを求める装置なので、洗浄と誤操作しにくい形や色の違いも重要です。見た目の統一だけでなく、触れて位置関係を理解できることが目的です。
選択肢4
(4)適当です。水平手すりを便座の座面から250 mm上に設けると、座った姿勢で上半身を支える際や、立ち上がる際に力を加えやすくなります。L型の縦部分は立位での支持などにも役立ち、可動手すりは移乗の際に上げて空間を確保できます。高さの基点は床ではなく便座の座面です。床から250 mmに付けると低すぎるため、数字だけを記憶せず、どこから測る高さなのかを動作と一緒に押さえます。
周辺知識
バリアフリートイレには、利用者によって異なる機能が求められます。車椅子使用者には回転や移乗の空間、オストメイトには装具を処理する設備、乳幼児連れにはおむつ交換や一時的に座らせる設備、視覚障害者には見つけやすく識別しやすい操作部が必要です。大きな一室にすべてを詰め込むだけでは、設備が動作を邪魔したり利用が集中したりします。
このため施設全体で機能を分散させ、どこに何があるかを表示することも大切です。ベビーカー利用者がおむつ交換のたびに一つしかない車椅子使用者用便房へ集中しない計画は、双方の待ち時間を減らせます。異性の介助者と一緒に利用できる配置も検討します。
さらに、設置しただけでは使いやすさは確保できません。折り畳み台を開くと出入口が塞がれないか、手すりが上がるか、呼出しボタンへ転倒した姿勢からも届くか、荷物を置いても動けるかなど、使用中の状態を確認します。指定資料の寸法はこうした動作を具体化する手掛かりです。原図の矢印、単位、取付方式を確認して読み取ることが、数値の丸暗記より確かな理解につながります。