学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
建築物等の各部の寸法に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。大規模な路外駐車場の普通自動車用車路では、原則として一方通行は3.5 m以上、対面通行は5.5 m以上が必要です。したがって設問の対面通行6 mは足りますが、一方通行3 mが不足しています。二つの寸法をまとめて誤りとせず、どちらが基準を下回るかを一つずつ判定します。
車路は車を止める駐車ますではなく、車が走行して駐車場所へ出入りする通路です。車体の幅だけあればよいのではなく、運転のずれ、壁や柱との距離、旋回やすれ違いの余裕が必要です。一方通行でも、車の幅が約2 mだから3 mで十分と感覚だけで判断してはいけません。
駐車料金の徴収部分で歩行者の通行に使わない箇所などには別の取扱いがありますが、本問にはその限定条件がありません。普通の車路の原則を用います。他の選択肢の寸法も、頭上を安全に通る、車椅子から移る、座ってカウンターを使うという動作と結び付けると意味が分かります。数字を覚えるだけでなく、測る位置と利用場面を確認する問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。階段では段の幅や高さだけでなく、頭上の空間も必要です。段鼻は踏面の先端、段裏は上の階段の下面を指し、その間に2 mの最小寸法を確保することで頭をぶつけにくくします。人は上り下りの途中で体が上下に動き、避難時には前を見ながら移動するので、静止した身長だけを基準にできません。仕上げや突出物によって有効な高さが減らないかも確認します。
選択肢2
(2)適当です。浴槽深さ500 mm、移乗台とエプロンの高さ450 mmは、車椅子から座って浴槽へ移る動作に配慮した寸法です。エプロン高さは浴槽外側の縁の高さで、内側の底から縁までの深さとは測る起点が違います。台と縁を同程度の高さにすると、腰を大きく持ち上げずに横へ移しやすくなります。数値だけでなく、手すり、足の動き、車椅子を寄せる場所、介助者の空間も合わせて検討します。
選択肢3
(3)不適当です。普通自動車用車路の原則は一方通行3.5 m以上、対面通行5.5 m以上です。一方通行3 mは0.5 m不足し、対面通行6 mは基準以上です。車路と駐車ますの幅を混同しないようにしましょう。また料金徴収箇所などの特例は、それに対応する条件があるときに適用するもので、大規模駐車場の車路全体を3 mにしてよいという意味ではありません。複数の寸法がある肢では、各々の適否を分けて説明します。
選択肢4
(4)適当です。高さ700 mmのローカウンターは椅子や車椅子に座った姿勢、高さ1,000 mmのハイカウンターは立った姿勢で使うことを想定した計画です。利用者の姿勢によって、書く、物を渡す、職員と話すときの使いやすい高さが変わります。車椅子で使う低いカウンターは、天板の高さだけでなく膝や足が入る下部空間も必要です。低い台を用意しても下が収納で塞がれていれば、正面から近づいて使いにくくなります。
周辺知識
建築の寸法は、身体や道具が占める寸法と、動くための余裕から考えます。車椅子の幅が通るだけでは、曲がる、扉を開ける、便器へ移る動作はできません。同様に車路も車体の幅だけ、階段の頭上も人の身長だけで決めることはできません。利用者が途中でどの姿勢を取るかを連続して想像します。
有効寸法は、実際に使える内側の寸法です。柱の中心間や壁の下地間の寸法が十分でも、仕上げ、手すり、扉、設備が出っ張れば使える空間は小さくなります。入口の幅、通路の幅、頭上高さなどは、図面上のどこからどこまでを測るかが重要です。
また法令の最低寸法と、使いやすさを目指す設計標準や推奨寸法は同じとは限りません。最低値を満たしても、利用する人や道具、混雑の程度によってはより大きな寸法が必要です。本問では各記述の根拠と測定位置を押さえつつ、寸法の意味を動作で説明できることを目指します。例えば浴槽の深さと縁の高さを混同しなければ、500 mmと450 mmが同時に成立する理由も分かります。