学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
既存建築物の活用や資源循環に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。法定耐用年数は、減価償却の計算で資産の取得費を各年へ配分するための税務上の年数です。建物に住んでよい期間や、解体しなければならない期限を定めるものではありません。法律に基づく年数という名前から、物理的な寿命の上限と取り違えている点が誤りです。
減価償却は、長く使う建物の費用を取得した年だけへ一度に計上せず、一定の方法で使用期間に対応させて配分する考え方です。例えば計算の仕組みを単純化すると、長年使う設備の費用を毎年少しずつ経費として扱うことに相当します。その計算期間が終わっても、建物が突然使えなくなるわけではありません。
実際の建物の使える期間は、構造体の状態、雨漏りや腐食、地震への安全性、設備の更新、維持管理、用途への適合などによって変わります。法定耐用年数を過ぎても適切に修繕して使える建物がある一方、その年数内でも重大な損傷があれば安全に使えない場合があります。既存建物の活用を判断するときは、税務上の数字と現物の調査結果を分けることが必要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。令和5年住宅・土地統計調査では、2023年10月1日時点の空き家が約900万戸とされています。ここには売却・賃貸用や二次的住宅なども含まれるので、すべてが放置され危険になった建物という意味ではありません。ただし使われず管理も不足すると、雨漏りや部材の落下、雑草、防犯など周辺の問題につながります。利用可能な段階で活用し、使わない間も適切に管理するという総合的な対応が必要です。
選択肢2
(2)適当です。建設リサイクル法の特定建設資材は、コンクリート、コンクリート及び鉄からなる建設資材、木材、アスファルト・コンクリートです。例えば鉄筋コンクリートは二つ目に当たります。これらを分別して解体し、再資源化などへつなげることで、混合したまま捨てる量を減らします。鉄やガラスなど建設に使う全ての材料が、この法律上の名称で指定されているわけではありません。日常語の建設資材と法令の限定した用語を区別します。
選択肢3
(3)適当です。長期優良住宅は、建てたときだけ性能が良ければよいのではなく、良好な状態を長く維持することを目指します。そのため構造上重要な部分、雨水の侵入を防ぐ部分、給排水設備などについて点検・補修の計画が必要です。例えば屋根や外壁の防水を確認し、劣化が進む前に直すことは、内部の木材や鉄筋の損傷を防ぎます。維持保全計画は、将来の管理を具体化して建物の長寿命化を支える仕組みです。
選択肢4
(4)不適当です。法定耐用年数は税務上の減価償却のための基準で、居住できる期限ではありません。帳簿上の価値が減ることと、建物の安全性が低下することは別の評価です。例えば同じ年齢の二棟でも、漏水を放置した建物と定期的に補修した建物では状態が違います。既存建物の使用継続は現物の調査や必要な改修を踏まえて判断し、法定耐用年数だけで使用禁止や安全保証を決めないことが重要です。
周辺知識
建物の寿命には複数の意味があります。物理的な寿命は材料や構造の劣化に関係し、機能的な寿命は間取りや設備が利用者の要求に合わなくなることに関係します。経済的な判断では維持費や収益、更新費なども比較されます。税務上の耐用年数は、これらと関連はしても同じ尺度ではありません。
例えば構造体が健全でも、配管が古く更新しにくい建物では利用継続に困難が生じます。逆に設備を交換しやすい空間や点検口を用意し、間取りを変えやすくしておけば、生活や用途の変化に対応して長く使えます。長寿命化は頑丈な材料だけで実現するのではなく、直しやすさと管理の仕組みを含みます。
資源循環では、使える建物を活用し続けることが、解体と新築による資源消費を抑える方法になります。解体が必要な場合も、材料を分別し再利用・再資源化につなげます。ただし保存すれば常に最善とは限らず、安全性、必要な改修量、エネルギー性能なども評価します。本問の統計、リサイクル、維持保全、減価償却は、既存建物を見る異なる視点として整理しましょう。