学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の各部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。寒冷地で外壁のタイルを選ぶ際は、吸い込んだ水が凍ることで生じる凍害への抵抗を確認します。Ⅰ類からⅢ類へ変更することは、一般に吸水しやすい方向への変更であり、寒冷地だからという理由にはなりません。水がタイル内部の孔に入り、それが凍って体積を増すと、繰返しによって割れや欠けが生じるおそれがあります。
陶磁器質タイルのⅠ・Ⅱ・Ⅲ類は吸水率による分類です。Ⅰ類は強制吸水率3.0%以下、Ⅱ類は10.0%以下、Ⅲ類は50.0%以下という区分で、一般にⅠ類は緻密な磁器質に相当します。ただし分類名だけで耐凍害性が完全に保証されるわけではなく、製品の用途表示や耐凍害性を確認して選ぶ必要があります。
また、タイルの表面だけでなく、裏面や目地から入る水、下地の状態、排水の仕組みも関係します。寒冷地対策は単に材料を硬そうなものへ替えることではありません。水が入る経路と凍結する条件を考え、適切な製品と納まりを組み合わせることが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。吊り天井は地震時に建物本体とは異なる揺れ方をするため、周囲の壁へ衝突すると端部が壊れたり部材が外れたりするおそれがあります。問題が指定する、隙間を設ける仕様ルートでは、周囲に60 mm以上のクリアランスを確保します。これは揺れる余裕を設ける考え方です。すべての天井で隙間60 mmだけあれば安全という意味ではなく、吊り材や斜め部材、接合など他の条件と一体で満たす必要があります。
選択肢2
(2)適当です。スタッドは壁の板を支える細い柱状の下地です。両面の板を同じスタッドへ固定すると、その部材を通って振動が伝わります。千鳥配置は両側の支持をずらし、直接つながる振動経路を減らす方法です。中空部のグラスウールは空洞内の音響エネルギーを吸収し、反射や共鳴の影響を抑えます。両者は違う経路への対策なので組合せに意味があります。ただし端部やコンセント周りの隙間なども遮音性能を左右します。
選択肢3
(3)不適当です。Ⅲ類はⅠ類より一般に吸水率が高く、内部に入った水の凍結による損傷が問題になりやすい方向です。寒冷地で使うからⅢ類へ替えるという判断は逆になります。水が氷になると体積が増し、細孔の中で圧力を生じることが凍害の仕組みです。実際には吸水率だけでなく耐凍害性の確認された製品を選び、雨水の侵入や滞留を抑える納まりとします。Ⅰ類という表示を万能な保証とするのも避けましょう。
選択肢4
(4)適当です。オープンジョイントは、外側の継目を完全に密閉するだけに頼らず、内部の空間の空気圧を外気に近づけることで、圧力差が雨水を押し込む作用を抑える考え方です。入った水は重力で外へ排出します。ただし室内まで自由に空気を通すわけではなく、室内側の気密層などが必要です。「外側で止める」「圧力差を小さくする」「入った水を排出する」という役割を組み合わせた二段階の防水として理解できます。
周辺知識
建築の細部は、力、熱、音、水などがどの経路を通るかを考えて計画します。地震時に天井が壁へぶつかる経路を隙間で避ける、壁下地を通る音の振動経路を千鳥配置で減らす、タイルの孔に入る水と凍結に備える、外壁目地の圧力差と排水を制御するというように、本問の四つはいずれも具体的な経路への対策です。
防水は、表面に防水材を塗れば終わりというものではありません。重力、風圧、毛細管現象などで水が移動するので、継目や端部の納まりが重要です。オープンジョイントでは外気に通じる部分と室内を守る気密部分を分け、排水口をふさがないようにします。
遮音も同様に、板の性能だけでなく周囲を通る音を考えます。壁の上が天井裏でつながっていると、壁を厚くしても音が回り込むことがあります。材料の分類や寸法の数字を覚える際は、それがどの現象を抑えるための条件かを併せて理解しましょう。部材単体の性質と、組み立てた建物全体の性能が同じではないことが、各部設計の重要な視点です。