学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問3
問題・正答・学習用解説
問題
西洋の歴史的な建築物(所在地)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。パルテノン神殿が古代ギリシアの建築で、外周にドリス式の列柱をもつという部分は適切です。しかし、クリアストーリーと呼ばれる高窓から神室を採光したという説明は当てはまりません。クリアストーリーは、中央の高い空間の壁が両側の低い屋根より上へ出た部分などに窓を設け、上方から光を取り込む仕組みです。
パルテノン神殿は、アテナを祭る神室を外周の列柱が囲む構成です。列柱は外観のリズムと周囲の歩廊をつくり、神室は神像を納める場所です。中央の高い身廊と両側の低い側廊をもち、その上の高窓から光を入れる教会堂などの断面構成とは区別します。古代の採光の細部についての推定を、クリアストーリーという確定した特徴へ置き換えてはいけません。
他の選択肢は、大きな屋根をどう支え、内部にどんな空間と光をつくるかが対応しています。パンテオンは円形ドームの頂部開口、ハギア・ソフィアは曲面を介して支える大ドーム、サン・カルロは楕円と曲面を用いたバロックの空間として整理します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。外周のドリス式列柱は正しい特徴ですが、神室をクリアストーリーで採光したという部分が違います。ドリス式は柱とその上の部分の比例・構成に関わる古典建築の形式で、高窓の形式とは別です。パルテノンは神室を列柱が取り囲む神殿として捉えます。クリアストーリーは、高い中央空間と低い脇の空間の屋根に高低差をつくり、その差を利用して採光する断面の仕組みなので、名称が指す構成を図として想像しましょう。
選択肢2
(2)適当です。古代ローマのパンテオンは、直径約43 mの巨大なドームで円形の内部空間を覆います。頂部にはオクルスと呼ばれる円形の開口があり、そこから光が入ります。柱と梁を並べるだけでなく、コンクリートなどによる曲面の構造で大空間をつくる点が特徴です。天窓からの光は時間とともに内部を移動し、ドームの形を感じさせます。パルテノンと名前が似ていますが、列柱で囲むギリシア神殿と巨大ドームのローマ建築を分けます。
選択肢3
(3)適当です。ハギア・ソフィアでは、四角い支持部分の上に円形のドームを載せるため、ペンデンティヴという球面三角形状の曲面を介します。四角の四隅から円へなめらかにつなぐ部分、と考えると分かります。長手方向へ進むバシリカ式の性格と、中心のドームの下へ空間が集まる集中式の性格を組み合わせたビザンチン建築です。大きい丸屋根という外形だけでなく、下の平面と屋根をつなぐ技術まで押さえます。
選択肢4
(4)適当です。ボッロミーニによるサン・カルロ・アッレ・クァットロ・フォンターネ聖堂は、曲面を用いて動きのある表情をつくるバロック建築です。ファサードは建物の正面で、凹む面と張り出す面が組み合わさります。内部も楕円形を基にした平面とドームによって、視線が連続して流れるような空間です。単純な直線と円だけを並べるのではなく、曲線や奥行きの変化を使って空間を演出する特徴として理解できます。
周辺知識
西洋建築史では、屋根を支える仕組みと内部空間の関係を見ると流れを理解しやすくなります。柱と梁による構成では、柱をどの間隔で並べるかが空間を左右します。アーチ、ヴォールト、ドームなどの曲面構造では、圧縮する力を周囲へ伝えながら広い空間を覆えますが、横へ広がろうとする力を支える壁や支持部も必要です。
古代ギリシアの神殿は、神像を納める神室と周囲の列柱の構成が重要です。古代ローマではコンクリートなどを用いて巨大な内部空間を発達させました。ビザンチン建築ではドームを教会堂の空間へ組み込み、後のバロックでは曲面や光を使って動きのある印象を強めます。時代の違いは装飾名だけではなく、空間の使い方にも現れます。
採光も構造と一体です。頂部に孔を開ける、中央の屋根を高くして高窓を設ける、壁に窓を設けるといった方法では光の方向が違います。建物名を覚えるときは「上から光が落ちる円形空間」「高窓が並ぶ長い空間」のように、平面・断面・光を結び付けると、本問のような誤った組合せを判別できます。