学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
日本の歴史的な建築物(所在地)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。慈照寺、いわゆる銀閣寺の東求堂にある同仁斎は、書院造の初期の姿を伝える四畳半の部屋です。現存最古とされる付書院と違い棚をもつという部分は適切ですが、様式を数寄屋造とした点が違います。室町時代の足利義政の山荘に関わる建物として、後の和室につながる室内の構成を読み取れます。
付書院は窓際に設けた机状の造作で、光を受けながら書物を読んだり物を置いたりする場に由来します。違い棚は高さをずらして組み合わせた棚です。これらが畳敷きの室内に固定された造作として組み込まれ、座って生活し、書物や道具を扱い、客を迎える空間の形を整えていきました。
数寄屋造は、茶の湯の美意識を住宅などへ取り入れ、素材や細部の趣味、軽やかさなどを重視する形式です。同仁斎が後の茶室文化とも関連することから、数寄屋造そのものと短絡しないようにします。「茶に関係がある建物はすべて数寄屋造」ではなく、その建物が建築史上どの構成を代表するかを区別するのが解答の鍵です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。権現造は、神を祭る本殿と、拝礼する拝殿を、石の間などの中間部分で結ぶ複合的な社殿形式です。日光東照宮はその代表例です。本殿と拝殿を単に離して並べるのではなく、異なる役割の空間を一つのまとまりにつなぐ点が特徴です。屋根や装飾だけを見るより、平面で「本殿―石の間―拝殿」という接続を押さえると理解できます。名称の権現と、徳川家康を祭る東照宮の性格も関連付けられます。
選択肢2
(2)不適当です。同仁斎は書院造の初期の代表例です。付書院と違い棚は、後の格式ある和室の座敷飾りへつながる重要な要素で、単なる持ち運べる家具ではなく、建築に組み込まれた造作です。数寄屋造は茶の湯の趣味を取り入れた住宅などの形式なので、同仁斎の歴史的な分類と取り違えています。四畳半という広さや茶との関連だけで様式を決めず、室内構成の成立を示す書院造の例として覚えます。
選択肢3
(3)適当です。懸造は、山の斜面などから床を張り出し、その下を長い柱などで支える造り方です。東大寺二月堂では高低差のある地形に対して舞台状の床を設けています。平地を大きく削って建物を置くのではなく、斜面の上に水平な活動の場をつくる構造と理解できます。修二会という法要を行う場でもあり、床の形は見た目だけでなく行事の空間と関係します。「懸」は宙に浮いて無支持という意味ではありません。
選択肢4
(4)適当です。大社造の代表である出雲大社本殿は、二つの屋根面が頂部の棟で合う切妻造で、棟に直角な妻側から入ります。正面は柱によって二つの間に分かれ、その片方を入口とするため左右非対称になります。妻入は入口が屋根の三角形の側にあると考えると分かります。外観が対称的な屋根だから出入口も中央、と推測しないことが大切です。入口の位置は内部の柱や神座など、祭祀の空間構成と結び付きます。
周辺知識
日本の歴史建築の名称には、分類の軸が混ざっています。切妻造や入母屋造は屋根の形、妻入や平入は入口と屋根の棟の方向関係、懸造は斜面に対する床の支え方です。一方、書院造や数寄屋造は住宅や室内構成の様式、権現造は本殿と拝殿などの接続形式です。すべてを同じ一覧の暗記語にすると、何を見分ける名前かが分からなくなります。
書院造は室町時代から近世にかけて発達し、畳敷きの室内や固定した造作などを通じて、後の和室の基本につながりました。数寄屋造は茶の湯に由来する素材感や趣味を取り入れ、書院造の要素とも組み合わされます。様式は突然完全に入れ替わるものではなく、相互に影響しながら展開しています。
建物を覚える際は、まず誰が何のために使うか、次に平面と断面がその用途へどう応えるかを見ます。祭る場所と拝む場所をつなぐ東照宮、書斎の室内を整える同仁斎、斜面に法要の場をつくる二月堂という関係まで説明できれば、名称だけを入れ替えた選択肢にも対応できます。