学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅰ(計画) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
建築及び都市の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。障害、年齢、体格などの違いによらず、できるだけ多くの人が利用しやすいように考えるのはユニバーサルデザインです。フェーズフリーデザインは、普段の生活と災害などの非常時という状態の区切りを越えて、日常に使う物や空間を非常時にも役立てる考え方です。両者は両立できますが、着目する違いが別です。
例えば段差のない広い出入口は、車椅子、ベビーカー、荷物を運ぶ人など様々な利用者を助けるので、ユニバーサルデザインの観点です。一方、普段は人々が集まる交流施設が、災害時にも安全に滞在し生活を支えられるよう設備や使い方を整えるのは、フェーズフリーの観点です。単に非常用品を倉庫へ置くことだけを指すのではなく、日常に使う機能が非常時の価値にもつながることを重視します。
本問は新しい用語の名前だけでなく、その考え方が「何と何の隔たり」を扱うかを問うています。ユニバーサルデザインは利用する人の多様性、フェーズフリーは利用する状況の連続性と整理すれば、説明の取り違えを見抜けます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。循環経済は、資源を採って製品を作り使った後に捨てる一方向の流れを改め、長く使う、修理する、再使用する、材料を循環させる考え方です。建物やインフラを長持ちさせ、空き家を活用することは、新たな材料消費や廃棄を抑える働きがあります。さらに地域交通や二拠点居住など、地域にある空間や資源を使い続ける生活圏も関連します。ごみを分別することだけに限定されない点が重要です。
選択肢2
(2)適当です。ウォーカブルは歩けるという意味ですが、単に歩道が存在するだけでは十分ではありません。安全に歩け、途中に座る場所や立ち寄る店があり、歩くこと自体が心地よい街を目指します。車道・歩道・沿道建物・広場を一体で改善し、人が滞在し交流できる場所を増やす取組です。歩行者だけを想定して交通機能を無視するのではなく、公共交通や荷さばきなどとも調整して、日常の移動と街の活動を支えます。
選択肢3
(3)適当です。アフォーダンスは、環境が行為者に提供する行動の可能性に関わる考え方です。丈夫で適度な高さの縁は「腰掛けられそう」、持ちやすい形は「つかめそう」と感じさせます。しかし同じ縁でも幼児には高すぎ、歩行が不安な人には支えが必要かもしれません。知覚される可能性は能力や経験、要求などで異なります。単に物に一つの用途名が付いているのではなく、環境とそれを使う人との関係として捉えます。
選択肢4
(4)不適当です。記述が説明するのはユニバーサルデザインです。フェーズフリーは、日常と非常時という二つの状態を分けすぎず、普段の便利さが非常時にも役立つようにする設計です。例えば普段から使う照明が停電時にも必要な明るさを供給できることは、その観点で検討できます。誰が使うかを広く考えることと、いつ・どの状況で使うかを連続して考えることは別の軸です。どちらも良い設計の理念であることだけで同じ語にしないようにします。
周辺知識
計画用語を理解するには、その言葉が解決しようとする問題から考えると役立ちます。循環経済は資源の使い捨て、ウォーカブルは歩くことの不便さや街の居心地、アフォーダンスは環境と行動の関係、ユニバーサルデザインは人の違いによる利用しにくさ、フェーズフリーは日常と非常時の隔たりに着目します。
例えば駅前の広場を改修する場合、既存の舗装や建物を活用するのは資源循環、日陰とベンチを設けるのは歩きやすく滞在しやすい環境づくり、段差を抑えて誰でも利用しやすくするのはユニバーサルデザインです。その広場を災害時の一時滞在や情報提供にも役立てる計画はフェーズフリーにつながります。同じ場所に複数の考え方を重ねられます。
また設計者が意図した行動と、利用者が実際に感じ取る使い方は一致するとは限りません。現地で多様な人の行動を観察し、試用や意見交換を通じて改善することが重要です。用語を説明文のラベルとして覚えるだけでなく、具体的な場所のどの課題に作用するかを説明できるようにしましょう。