学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問29
問題・正答・学習用解説
問題
各法律に基づく「計画」について、所管行政庁による認定を受けることで、建築基準法に基づく規定の適用を受けないことを説明する次の記述のうち、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。省エネ性能向上計画の認定に伴う本問の特例は、所定の床面積を『容積率』の計算に算入しない扱いです。『建蔽率の規定を適用しない』のではありません。
容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合です。建蔽率は、敷地面積に対する建築面積の割合で、基本的には建物が地面を覆う広がりに関係します。両方とも面積の割合ですが、分子が違います。省エネ性能を高める設備などを設けるため、通常の建物より床面積が増える所定の部分について、容積率計算から一定範囲を除くことで、性能向上を進めやすくします。
例えば省エネ設備を収めるために必要な所定の床面積が特例の対象となっても、それによって建物を敷地いっぱいに広げてよいことにはなりません。建蔽率の限度は別に検討します。また、不算入は対象部分や上限が定められており、認定建物の延べ面積全部が消える制度でもありません。本問は耐震、バリアフリー、長期優良、省エネという認定の名称だけでなく、その認定に伴う効果を正確に結び付けることが中心です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。耐震改修計画の認定には、所定の条件で既存不適格としての扱いを継続し、法第27条第2項や容積率・建蔽率の規定について特例を受ける仕組みがあります。耐震補強のため壁や柱等を加えることで、別の規定への適合が妨げとなる場合に改修を促す制度です。認定基準の中で安全性等も確認するので、どんな増築でも自由にできるという意味ではありません。補強の計画と特例の条件を一体で読みます。
選択肢2
(2)正しい記述です。バリアフリー法の認定計画には、移動等円滑化のための所定の昇降機、廊下、便所等について、通常より増える部分の床面積を容積率算定で不算入とする特例があります。車椅子の転回のため便所等を広げると、利用できる室の面積が減ってしまう負担を軽減する考え方です。建物全体の床面積を除くのではなく、法令が指定する部分と限度の範囲で計算します。
選択肢3
(3)正しい記述です。長期優良住宅の認定計画に係る住宅は、特定行政庁の許可の範囲内で容積率の限度を超える特例を受けられます。長く使える住宅に必要な構造等と市街地環境の調整を図る制度です。ここでは『認定』に加えて『許可の範囲内』という条件があります。長期優良住宅に認定されたことだけで、建築主が任意に床を増やせるわけではありません。二つの手続の役割を区別します。
選択肢4
(4)誤りです。省エネ性能向上計画に伴う特例は、所定の床面積を容積率の計算から除くもので、建蔽率の規定を適用しない制度ではありません。容積率は各階の床の合計、建蔽率は建築面積を基にします。省エネ設備のために床が必要になることを考慮した特例なので、その効果を建物の地面への広がりの制限まで拡大してはいけません。『建蔽率』を『所定部分の容積率不算入』へ訂正して理解します。
周辺知識
建物の性能向上に伴う認定制度は、より安全で使いやすく、長く利用できる建物を普及させるために設けられています。しかし性能を高めると、設備や補強材、広い通路などのため面積が必要になることがあります。その負担を調整するのが、容積率などの特例です。性能を高めたご褒美としてすべての規制を外す制度ではありません。
例えば100m²の敷地に建築面積60m²、各階60m²の2階建てを造ると、建蔽率は60%、容積率は120%です。ある床面積が容積率不算入になっても、建築面積60m²そのものが減るとは限りません。同じ建物の二つの割合を実際に計算すると、選択肢4の取り違えが分かりやすくなります。
また、認定と許可の違いにも注意します。計画が所定の性能等の基準に合うことを認定する手続と、周辺環境への支障などを踏まえて限度超過を認める許可は、別に要求される場合があります。制度を覚える際は、『何の計画』『誰の認定』『追加の許可が要るか』『どの条文のどの部分が変わるか』を組み合わせると、よく似た特例を混同せず整理できます。