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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問28

問題・正答・学習用解説

問題

以下の条件に該当する建築物の新築に係る設計及び管理に際して、「戸」に係る建築基準法その他の法令の規定の適用に関する設計者及び管理者の判断として、次の記述のうち、誤っているものはどれか。【条件】用途:劇場階数:地上5階建て延べ面積:2,500m²(各階の床面積500m²)

選択肢

  1. (1)
    客席からの出口に設ける戸の構造を、客席からの避難を想定して、外開きとした。
  2. (2)
    エントランスホールの出入口に設ける戸を、自動的に開閉する構造とし、かつ、その前後に高低差を設けないようにした。
  3. (3)
    防火戸について、その閉鎖の支障になる物件が放置されたり、みだりに存置されることがないように管理することとした。
  4. (4)
    屋内避難階段の出入口に設ける防火戸について、熱感知器によって自動的に閉鎖する構造とした。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は4です。屋内避難階段は、火災時に人が地上へ逃げるための保護された経路です。階段室に煙が入ると、煙が上へ広がって多くの階の人が逃げられなくなるため、入り口の防火戸には火炎だけでなく煙への対応が重要になります。
この防火戸を、普段は開けておき火災時に自動で閉じる形式とする場合は、原則として煙を感知して閉鎖する構造とします。選択肢4のように熱感知器で閉鎖するだけでは不足します。熱感知器は温度の上昇などに反応しますが、その温度になる前に煙が廊下へ流れ、開いている戸から階段へ入るおそれがあるからです。
正しくは、所定の煙感知により閉鎖する構造など、避難階段の防火戸に求める条件を満たします。『火災を感知する装置なら熱でも煙でも同じ』ではありません。劇場は多数の観客が一斉に動く建物なので、客席出口の外開き、入口の使いやすさ、防火戸の閉鎖を妨げない管理も重ねて必要です。戸の材料だけでなく、開く方向、閉じるきっかけ、日常の管理までが安全に関わります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正しい判断です。劇場の客席から出る戸は外開きとし、避難する方向へ開くようにします。観客が出口へ集まって後ろから押す状況で、内開きの戸を手前へ引こうとしても開けにくくなるためです。ここでの外は建物の屋外に限らず、客席から出る側を指します。日常に一人ずつ通れば開けられるかだけでなく、大勢が一斉に出口へ向かう火災時の使われ方に合わせた構造です。

選択肢2

(2)正しい判断です。2,500m²の劇場で、エントランスホールの戸を自動開閉とし、前後の床に高低差を設けないことは、車椅子使用者などが通りやすい構成です。重い戸を引きながら段差を越えるような操作は負担や危険になります。戸の有効幅などの別の条件も満たす必要がありますが、本問の開閉方法と床の条件は適切です。設備があるだけでなく、戸に近づき通り抜ける一連の動きで評価します。

選択肢3

(3)正しい判断です。防火戸は、火災時に確実に閉じて区画をつくることで性能を発揮します。開閉範囲に荷物を置いたり、閉じないよう物を挟んだりすると、法に適合する戸でも機能しません。そのため閉鎖の支障となる物を放置・存置しない管理が必要です。例えば普段の搬入が便利だから台車で戸を開けたままにすることは、避難経路へ煙を通す原因になります。設計後も利用状況の管理が安全を支えます。

選択肢4

(4)誤った判断です。屋内避難階段の入り口の防火戸を随時閉鎖式にする場合、原則として煙を感知して閉じる構造が必要です。熱だけで作動する方式では、感知器付近の温度が十分上がる前に煙が階段へ流れ込むおそれがあります。炎が来るまで待たず、避難を妨げる煙に早く対応する必要がある場所だからです。訂正する箇所は熱感知器の部分で、所定の煙感知による閉鎖等の条件に合わせます。

周辺知識

建物の戸には、人を通す機能と、火や煙を止める機能があります。避難出口では人の流れを妨げない開き方が必要で、防火区画の戸では必要なとき閉じることが必要です。一見反対の要求ですが、普段の使い方と火災時の動きを設計し、どちらも成立させます。
常時閉鎖式は普段から閉じた状態を保ち、通行後も閉まる戸です。随時閉鎖式は普段開けて使える一方、所定の感知や操作で火災時に閉じる戸です。後者ではどの感知器で作動するかが重要です。煙は炎や高い温度より先に離れた場所へ広がることがあるので、階段など避難路を守る部分では煙の早い検出が必要になります。
法令の安全は、竣工時に設備が取り付いていれば終わりではありません。感知器が働き、戸が閉まり、その前に障害物がなく、人が安全に通れる状態を維持する必要があります。劇場のように客が入れ替わる建物では、利用者の慣れに頼ることもできません。自動開閉の入口、外開きの客席出口、防火戸の管理は、それぞれ異なる危険に対応する一連の対策です。