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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問27

問題・正答・学習用解説

問題

以下の条件に該当する建築物の新築に係る設計に際して、「外壁の開口部」に係る建築基準法その他の法令の規定の適用に関する設計者の判断として、次の記述のうち、誤っているものはどれか。【条件】用途:共同住宅構造:鉄筋コンクリート造階数:地上5階建て建築物エネルギー消費性能基準に係る地域の区分:6

選択肢

  1. (1)
    耐力壁である外壁の開口部について、その周囲に、径12mmの補強筋を配置した。
  2. (2)
    外壁の開口部について、断熱性能の高い窓を設けて、単位住戸の「外皮平均熱貫流率」が0.50W/(m²・度)及び「冷房期の平均日射熱取得率」が2.5となるようにした。
  3. (3)
    外壁の開口部のうち、避難階段から屋外に通ずる出口について、屋内からかぎを用いて解錠できる戸を設け、かつ、当該戸の近くの見やすい場所にその解錠方法を表示することとした。
  4. (4)
    「延焼のおそれのある部分」に位置する外壁の開口部において、加熱開始後20分間の遮炎性能を有する防火設備を設けた。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。避難階段から屋外へ出る出口の戸は、屋内からかぎを使わずに解錠できる構造とする必要があります。さらに、戸の近くの見やすい場所へ解錠方法を表示します。選択肢3は表示を行っていますが、『かぎを用いて』解錠する構造としている点が誤りです。
火災の際は停電や煙で見通しが悪くなり、利用者が慌てることもあります。そのとき担当者が持つかぎを探さなければ開かない戸では、階段まで安全に逃げられても最後に閉じ込められます。解錠方法の表示があっても、必要なかぎが手元になければ操作できません。したがって、表示と、かぎなしで操作できる構造の両方を満たします。
例えば屋外からは防犯のため施錠していても、屋内からは所定のつまみや操作装置で開けられる構成なら、防犯と避難を両立する考え方になります。本問のほかの選択肢は、外壁の開口部を構造、断熱、防火の面から検討しています。同じ窓や戸でも役割ごとに異なる基準が重なることを理解して、それぞれ判断します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)正しい判断です。耐力壁は、地震や風などの横からの力にも抵抗する壁です。窓や戸の開口を設けると力の流れが途切れ、周囲へ負担が集中するため、所定の補強筋を配置します。RC造耐力壁の開口部周囲の補強筋は径12mm以上という規定があり、本問の12mmはその最低径を満たします。単に窓枠を丈夫にすることとは違い、壁内部の鉄筋で力を伝えられるようにする補強です。

選択肢2

(2)正しい判断です。地域区分6の省エネ基準では、外皮平均熱貫流率の基準値は0.87、冷房期の平均日射熱取得率は2.8です。本問の0.50と2.5はそれぞれ以下なので、両方の条件を満たします。前者は建物の外周から熱が逃げる・入る程度、後者は夏に日射熱が入りやすい程度を表します。いずれもこの比較では小さい方が安全側です。断熱窓の名称だけでなく、住戸として計算した二つの値を確認します。

選択肢3

(3)誤った判断です。屋内からは『かぎを用いずに』解錠できる戸にします。近くに解錠方法を書いても、かぎを探す操作を必要とする構造は避難の妨げになります。例えば管理人しかかぎを持っていないと、不在時に逃げられません。避難する人がその場で操作できることが必要です。防犯のため屋外からの開放を制限することと、屋内からすぐ屋外へ逃げられることを分けて戸の機構を選びます。

選択肢4

(4)正しい判断です。本問の5階建て共同住宅で、延焼のおそれのある部分の外壁開口部には、所定の防火設備が必要です。通常の火災による火熱を受けて20分間、反対側に炎を出さない遮炎性能は、その要求に対応します。延焼のおそれのある部分は、隣地境界等からの距離に応じて定める範囲です。開口部は壁が途切れる場所であるため、耐火性能のある外壁だけでなく窓や戸にも火を通しにくい性能を持たせます。

周辺知識

外壁の窓や戸は、明るさや出入りを確保する一方、構造、防火、熱の出入りの弱点にもなり得ます。耐力壁に窓を開けると壁の力の伝達が変わり、火に強い壁へ普通の開口を設けると火炎が通りやすくなり、断熱した壁でも窓から熱が出入りすれば省エネ性能が下がります。このため、同じ開口を複数の法律上の視点で検討します。
外皮とは、屋根、外壁、床、窓など室内と外気側を隔てる部分です。外皮平均熱貫流率は、その外周全体の熱の通しやすさを平均した値です。冷房期の日射熱取得率は夏の日射の入りやすさに関係するので、断熱を高めるだけでなく、ガラスの日射遮蔽や日よけなども影響します。地域区分は気候の違いに対応し、地域6の基準値を別の地域へ無条件で使うわけではありません。
避難の戸では、防犯と避難を両立させる必要があります。外から簡単に入れないことだけを優先し、中からも開けにくくしてはいけません。構造の性能、火を遮る性能、熱の性能、操作の安全を項目ごとに整理すると、一つの性能を満たせば全部適合という誤解を避けられます。