学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問26
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。令和7年4月からの省エネ基準の制度では、増築・改築に際して基準に適合させる対象は、原則としてその増改築部分です。既存の事務所へ500m²を増築する本問で、建築物全体を必ず基準へ適合させるとした点が誤りです。
増築は、既存建物に新しい床面積を付け加えることです。例えば1,500m²の事務所に500m²を増築して合計2,000m²にする場合、この制度の適合義務は増築する500m²を対象として考えます。既存の1,500m²すべてを同じ工事で省エネ改修する義務へ自動的に広がるわけではありません。
この点は令和7年4月の見直しによるため、以前の年度の増改築後の建物全体を扱う制度と区別します。同時に、新築等で省エネ基準への適合を求める対象は住宅や小規模な建物にも拡大しています。『対象建物が広がった』ことと、『増改築時にどの部分を対象とするか』は別の変更です。両者を混ぜず、出題年度の制度で判断することが本問の中心です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。本年度の制度では、原則として増築する500m²の部分を省エネ基準へ適合させます。『建築物全体』ではありません。新しく造る部分の性能を確保しつつ、既存建物のすべてに同時改修を要求しない範囲へ見直されています。例えば既存部分の窓が古いことだけを理由に、増築に伴う適合義務の対象を全窓へ広げるわけではありません。令和7年4月より前の増改築の扱いをそのまま使わない点が重要です。
選択肢2
(2)正しい記述です。建築士は設計を行うとき、委託した建築主へ、その建物の省エネ性能や性能向上に役立つ事項を説明するよう努めます。努力義務とは、法律が取組を求めるものの、『必ず説明しなければならない』という義務と文言・扱いを区別するものです。窓の断熱や空調の効率などが暮らしや光熱費にどう関係するかを、建築主が理解して選択するための役割があります。本年度の条文の表現で判断します。
選択肢3
(3)正しい記述です。請負型規格共同住宅等を年間1,000戸以上建設する対象事業者は、住宅トップランナー制度の基準へ適合させるよう努めます。規格化した住宅を大量に供給する事業者の設計や設備の選び方が、多数の住戸の省エネ性能を左右するためです。『棟』でなく『住戸』を数える点も重要で、例えば一棟20戸の集合住宅なら20戸です。個別建物に求める最低基準の適合義務とは別の取組です。
選択肢4
(4)正しい記述です。建物の省エネ性能をさらに高めるための修繕も、性能向上計画を作成し、所管行政庁へ認定を申請できます。新築だけに限る制度ではありません。既存建物の断熱や設備を改善する工事でも、計画が認定基準を満たすかを審査してもらえます。基準に適合しなければならないという義務と、より高い性能の計画について認定を申請できるという任意の制度を分けて理解します。
周辺知識
省エネ性能は、暖冷房、換気、照明、給湯などで使うエネルギーをどれだけ少なくできるかに関係します。壁や窓から熱が出入りしにくくする断熱と、必要な仕事を少ない電力や燃料で行う設備の効率化を組み合わせます。単に我慢して空調を止めることを建物の性能向上というわけではありません。
法律には、最低限の省エネ基準への適合、大量供給事業者の性能向上を促すトップランナー制度、より高い性能の計画を評価する認定制度などがあります。それぞれ対象者と目的が異なります。『努めなければならない』は努力義務、『申請することができる』は任意の申請、『適合させなければならない』は義務という文言の差にも意味があります。
既存建物への増築では、新旧の境目が重要です。本年度は新しい部分の性能を確実に確保する仕組みとして読みます。旧制度の解説で『建物全体』と書いてあっても、その年度では正しい場合があります。過去問では現在の制度をすべての年度へさかのぼって適用せず、法改正の前後で対象範囲を図に分けると理解しやすくなります。