学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問25
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。バリアフリー法の建築物移動等円滑化基準は、高齢者や障害のある人などが建物へ入り、必要な室や設備を利用できるようにする基準です。飲食店は不特定多数の人が利用する特別特定建築物に当たり、本問の2,000m²の用途変更は所定の規模に該当します。
適合させる範囲は、飲食店へ変更する部分だけではありません。道路等からその部分の利用居室までの経路、所定の便所や駐車施設、それらと利用居室をつなぐ経路などにも適用されます。利用居室は客が食事をする室など、利用の目的となる部屋です。
例えば、元の倉庫内に車椅子で動きやすい飲食スペースを設けても、道路から店までの既存通路に階段しかなければ、そこへ到達できません。客席は使えても便所へ行けない状態も、必要な利用を確保したとはいえません。選択肢1は変更部分だけで足りると範囲を狭くした点が誤りです。ただし既存建物の無関係な全ての室を一律に改修するという意味ではなく、法令が定める変更部分と関連する設備・経路を対象にします。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。2,000m²の飲食店へ用途変更する部分だけでなく、そこにある利用居室へ道路等から到達する経路、所定の便所・駐車施設、それらをつなぐ経路等も適合させます。『既存の部分だから対象外』と切り捨てると、入口の前に段差が残るなどして店を利用できなくなるためです。正しくは用途変更部分と、その利用に必要な法定範囲を一体で確かめます。既存建物すべてを無条件に対象とする扱いとも異なります。
選択肢2
(2)正しい記述です。車椅子使用者用客室に設ける便所は、原則として車椅子で使える便房を必要としますが、その客室のある階に所定の共用便所がある場合の特例があります。本問では同じ階に、不特定多数が利用する車椅子使用者用便房を備え、男女別ならそれぞれ1以上という条件を満たしています。別の階に一つあるだけでは同じ条件になりません。使う人が実際に到達しやすい代替便所があることを確認します。
選択肢3
(3)正しい記述です。案内所を設ける場合、人による案内で補えるため、昇降機や便所の配置を点字等で示す所定の設備を省略できる扱いがあります。点字表示が不要になるのであって、視覚障害のある人への案内自体が不要になるわけではありません。案内所まで利用しやすい経路も別に検討します。『設備で位置を知らせる』方法と『案内所で知らせる』方法を制度上の代替として理解します。
選択肢4
(4)正しい記述です。移動等円滑化経路に設ける屋外の傾斜路は、段に代わる場合は幅120cm以上、段と併設する場合は90cm以上です。傾斜路だけで通行を受け持つ場合と、歩ける人は階段も選べる場合で必要幅を変えます。3,000m²の老人ホームは対象規模です。幅だけでなく勾配や踊場等の条件もありますが、本問の二つの幅の組合せは適切です。120と90をどちらの場合の数値かとセットで覚えます。
周辺知識
バリアフリーを考えるときは、個々の設備を点として見るのでなく、移動の連続性をたどります。道路から敷地へ入り、建物の入口を通り、目的の室へ行き、便所や駐車場を利用するまで、一か所でも通れなければ全体として目的を果たせません。本問の用途変更の適用範囲も、この連続した経路を確保する考え方です。
『移動等円滑化経路』は、段差や幅、昇降方法などについて所定の条件を満たす経路です。建物内の全ての通路が同じ指定になるわけではなく、法令でつなぐべき場所の間に必要な経路を確保します。増築や用途変更では、その対象部分と関係する経路の範囲を図面に線で示すと、既存部分で改修が必要な箇所も把握できます。
また、車椅子だけが対象ではありません。視覚障害のある人には位置を知る案内や誘導、段の手前を知らせる措置などが重要です。案内所で代替する特例も、情報が届く仕組みを変えるのであって、情報提供をなくすものではありません。設備を省ける規定を読むときは、代わりに何を確保しているかまで考えると理解が深まります。