学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問22
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築士法上、建築士事務所の登録の取消し等の処分の事由に該当しないものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。この問題は、個人の建築士に対する処分と、建築士事務所の登録取消し等の処分を区別します。事務所に所属している人が違反したからといって、どのような違反でも自動的にその事務所の処分事由になるわけではありません。違反した人の立場と、事務所の仕事との関係が重要です。
一般の所属建築士について、事務所の登録取消し等と結び付くのは、当該事務所の業務として行った違反などです。選択肢3では、その事務所の業務ではない行為について、建築基準法違反により本人の免許を取り消されています。この条件だけでは、列挙された事務所の処分事由に当たりません。
対して選択肢2は管理建築士です。管理建築士は事務所の技術面の管理を担う中心的な立場なので、その事務所以外の行為による建築士免許の取消しでも、事務所の処分事由となります。選択肢2と3は違反の内容が似ていても、管理建築士か一般の所属建築士かが違います。正解3を『事務所外なら本人にも責任がない』と理解しないことも大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)処分事由に該当します。延べ面積300m²を超える建物の新築に関する設計または工事監理を、他事務所へ一括して委託することは禁止されています。自分の事務所は名目上受注するだけで、全部をほかへ渡す丸投げを防ぐためです。設備や構造など業務の一部を適切に分担することとは区別します。300m²超、新築、業務全体の一括委託という本問の条件が、禁止の対象へ当てはまります。
選択肢2
(2)処分事由に該当します。管理建築士は、その事務所が技術上適正に業務を行えるよう管理する責任ある立場です。その人が建築士免許の取消しを受ければ、違反が当該事務所の仕事でなくても、事務所の登録取消し等の事由となります。個人の資格が失われることが、事務所の管理体制へ直接影響するからです。一般の所属建築士について要求する『当該事務所の業務として』という条件を、そのまま当てはめません。
選択肢3
(3)この条件では処分事由に該当しません。管理建築士ではない一般の所属建築士が、事務所の仕事以外で違反したケースだからです。本人の建築士免許が取り消されることと、その事務所の登録を取り消す等の根拠があることは別に判断します。選択肢2との違いは人の役割です。ただし、事務所の仕事として違反した場合などは扱いが変わるので、『所属建築士の違反では事務所は処分されない』と一般化してはいけません。
選択肢4
(4)処分事由に該当します。建築士でなければできない設計を、事務所の業務として無資格の所属者に行わせたためです。図面作成の補助作業と、資格者の判断・責任で行う設計業務を区別します。事務所に資格者が一人いるから、ほかの無資格者も資格が必要な設計を独立して担当できるわけではありません。事務所の名義だけを使って資格制度を形だけにする行為を防ぐための規定です。
周辺知識
建築士の『免許』と建築士事務所の『登録』は別の制度です。免許は個人が資格を持って設計等を行うためのもので、登録は設計等を業として行う事務所の体制を把握するためのものです。違反があったときも、個人の資格への処分と、事務所への処分は、それぞれ法令上の事由を確認します。
事務所の中では、開設者が事務所を設ける主体、管理建築士が技術面を管理する人、所属建築士がその事務所の設計等を担当する人です。開設者と管理建築士が同じ人の場合もありますが、役割の区別は変わりません。本問は、特に管理建築士と一般の所属建築士で処分事由の範囲が違う点を問います。
処分事由に『該当する』ことは、どの事例でも即日必ず同一の処分になるという意味ではありません。法律が処分を行う根拠として挙げている事実に当たるかという問題です。解く際は、『誰が』『どの事務所の業務で』『何をした』『どの処分を受けた』の四点を並べます。よく似た文章でも、このうち一つが変わると事務所への扱いが変わります。