学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
ホテルに関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。ホテルの客室から直通階段までの歩行距離は、建物の構造、室の種類、内装、階の高さによって限度が変わります。主要構造部が耐火構造である本問のホテル客室の基本値は50mです。
一般には、居室と地上までの主な廊下・階段等の壁・天井を準不燃材料の仕上げにすると、火災が広がるのを抑えられるため10m加算する緩和があります。しかし15階以上の居室には、この10m加算を適用しません。本問は15階の客室なので、準不燃の内装でも限度は50mのままです。60mとした点が誤りです。
さらに15階以上では、所定の準不燃仕上げがない場合には基本値から10mを減じる扱いがあります。つまり、この客室の区分では、15階以上で準不燃仕上げありなら50m、なければ40mです。仕上げを安全側にした効果はありますが、60mにまで伸ばせるわけではありません。まず基本の表を読み、次に内装による加算の可否、最後に15階以上の扱いを確認すると、例外を二重に誤適用せず判断できます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。敷地が二つの用途地域にまたがる場合、用途制限は原則として敷地の過半が属する地域の規定を全体へ適用します。合計1,650m²のうち、近隣商業地域850m²が半分の825m²を超えます。近隣商業地域ではホテルを建てられるので、本問の敷地に新築できます。第二種中高層住居専用地域800m²の部分があることだけで、敷地全体をホテル不可とは判断しません。
選択肢2
(2)正しい記述です。ホテルなどの所定の用途では、準耐火構造の床・壁や所定の防火設備で100m²以内に区画した部分は排煙設備の適用除外となります。本問は耐火構造等で区画した30m²の客室なので、その条件を満たします。3,000m²という建物全体の大きさだけで各客室に一律の排煙を要求するわけではありません。小区画で煙や火災の広がりを抑える条件を、設置義務の原則とあわせて確認します。
選択肢3
(3)誤りです。15階以上の居室は、所定の準不燃仕上げによる10mの距離加算の対象外です。耐火構造のホテル客室の基本値50mに、10mを足して60mとすることはできません。客室だけでなく地上へ通じる主な経路まで準不燃にしても、階数の条件は残ります。高い階では地上までの避難に時間がかかるため、階段に入るまでの水平な移動も厳しく扱うという制度の関係を押さえます。
選択肢4
(4)正しい記述です。1階が避難階のホテルで、3階以上にある50m²の客室は、採光上有効な窓があるだけでは非常用照明の設置を省けません。採光窓は日中の自然光に関する条件ですが、非常用照明は夜間の火災や停電時にも室や避難路を照らす設備です。異なる目的の設備なので代わりにはなりません。30m²以内の室などに関する所定の除外を、50m²の客室へ広げることもできません。
周辺知識
ホテルでは、利用者が建物の内部を十分知らず、寝ている間に火災が起きることも考えます。そのため、客室から階段までの道、煙の広がり、停電時の明るさを、それぞれの規定で守ります。窓があればすべての安全が確保されるわけではなく、窓の採光、排煙、避難への役割も区別します。
歩行距離は、室の最も不利な部分から実際の経路に沿って階段まで測ります。部屋の扉からだけ測るのではありません。例えば客室内を8m進んで廊下に出て、廊下を45m進んで階段なら、合計53mです。15階の本問では50mを超えるため、階段や客室の配置を見直す必要があります。
内装の準不燃化は、火災拡大を遅らせて避難に使える時間を確保する措置ですが、高層階ほど距離緩和に限度があります。『50に10を足す』だけでなく、15階以上では加算がなく、所定の内装がなければ減算するという順序を把握します。また、排煙の区画による例外と非常用照明の除外は条件が違うので、片方が不要という結論をもう片方へ流用してはいけません。