学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
構造強度に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。許容応力度とは、材料の断面1mm²当たりなどに生じる力について、設計上許す上限です。圧縮は材料を押し縮める力、引張りは引き伸ばす力をいいます。地震や強風のような短期の力と、建物の重さのように継続する長期の力では、法令の許容値を区別します。
径32mmの異形鉄筋について、短期の圧縮の許容応力度は、国土交通大臣が材料の種類・品質に応じて定める基準強度Fです。選択肢4のようにFを1.5で割りません。仮にFが345なら、短期圧縮の許容値は345となります。
なお、32mmは『径28mmを超えるもの』の区分です。この区分の長期圧縮はFを1.5で割った値を基本としつつ195の上限もあります。したがって『長期なら単純にで終わる』と覚えるのも不十分です。本問で読む表の位置は、異形鉄筋、径28mm超、短期、圧縮という四つの条件で決めます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。層間変形角は、上下の階の横方向のずれを、その階の高さで割った値です。例えば高さ3mの階で上下に15mmの横ずれが生じると、変形角はです。許容応力度等計算では、地上部分について所定の地震力でこの変形が限度内かを確認します。部材が壊れなくても、建物が大きくゆがむと壁や設備などに被害が出るので、強さと変形を別々に調べます。
選択肢2
(2)正しい記述です。百貨店売場の柱・基礎用の積載荷重は2,400です。積載荷重は人や商品の重さなどで、柱が支える床が5つある場合、垂直圧縮力の計算では係数0.8を使えます。よってです。多くの床で最大の荷重が同時に載る可能性を考慮した低減です。床そのものを設計する荷重や、地震力計算用の荷重にも、この値を無条件で使うわけではありません。
選択肢3
(3)正しい記述です。特定天井は、落下すると人へ重大な危害を与えるおそれのある所定の天井です。限界耐力計算を行う場合は、告示の構造方法または大臣認定によるとする当該仕様規定の適用が除かれます。ただし、天井が落下しない安全性まで不要にはなりません。計算方法によって安全性の確認の仕方が変わるという意味です。保有水平耐力計算など別の方法で、同じ仕様まで省けると一般化しないことが大切です。
選択肢4
(4)誤りです。異形鉄筋の短期圧縮の許容応力度はFであり、ではありません。径32mmという条件で表の径28mm超の行へ進み、さらに短期の圧縮の欄を読みます。長期の欄にはと数値上限があるため、横の欄を読み違えるとこの誤答になります。例えばなら、短期は345、長期圧縮は195です。荷重の継続時間による違いまで合わせて比較します。
周辺知識
構造の数値問題では、まず『何を設計するための数値か』を決めます。同じ売場でも、床板はその床の人や商品を直接支え、下階の柱は複数階の重さをまとめて受けます。地震力の計算では、地震時に一緒に動く重量を考えます。この違いから、積載荷重の表には複数の欄があります。用途が合っていても、計算対象の欄を間違えると正しい荷重になりません。
応力度は、部材全体にかかる力そのものではなく、断面の単位面積当たりの負担です。同じ力でも太い部材なら広い面積で分担でき、応力度は小さくなります。これを材料の許容応力度と比較して安全を確かめます。基準強度Fは材料ごとの基準となる強さで、長期・短期の許容値や数値上限と同じ意味ではありません。
また、強度が足りても変形が大きすぎれば、窓や間仕切りが壊れることがあります。逆に骨組が安全でも天井が落ちれば人に危害が生じます。構造設計は『応力度』『変形』『部材の落下』など異なる危険を重ねて検討するもので、一つの計算が通れば全項目が自動的に安全になるわけではありません。