学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
保有水平耐力計算によって安全性が確かめられた建築物に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、高さが4mを超える建築物とする。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。建物の構造安全を確かめる方法には、部材の寸法やつなぎ方を具体的に決める『仕様規定』と、力や変形を計算して安全を確かめる方法があります。保有水平耐力計算は、大きな地震で建物が変形した段階まで考え、建物が耐えられる水平力が必要量以上あるかを確認する方法です。
この計算で安全性を確かめた建物では、適用しなくてよいと定められた一部の仕様規定があります。鉄筋コンクリート柱の主筋を帯筋と緊結するという施行令第77条第二号もその一つです。主筋は柱の長さ方向に入る鉄筋、帯筋はその周囲を帯のように囲む鉄筋、緊結はしっかり結び付けることを意味します。
したがって、本問で計算後も必ずその仕様によらなければならないとした選択肢1は誤りです。ただし、鉄筋の配置や柱の安全性を考えなくてよいという意味ではありません。また、コンクリートの最低強度やかぶり厚さなどは適用が残ります。『詳しく計算すれば全ての仕様が不要』と広げないことが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。保有水平耐力計算を行う場合、柱の主筋と帯筋の緊結に関するこの仕様規定は適用除外になります。主筋は曲げなどに抵抗し、帯筋は主筋の外側を囲んで柱の変形や壊れ方に関わる鉄筋です。これらが重要でなくなるのではなく、計算で安全を確かめる場合に、法律が特定の仕様の適用を外す仕組みです。『緊結しなくてもどんな柱でもよい』という施工上の勧めとして読んではいけません。
選択肢2
(2)正しい記述です。コンクリートの四週圧縮強度は、所定の供試体を作って4週間後に押しつぶす試験で確かめる強さです。最低値は12、軽量骨材を使う場合は9で、保有水平耐力計算を行ってもこの規定は残ります。計算では材料に一定の品質があることを前提にするため、計算方法が高度でも品質の最低条件を省けません。設計でこれより大きな強度を指定する場合は、その指定も満たします。
選択肢3
(3)正しい記述です。かぶり厚さは、鉄筋の外面からコンクリート表面までの距離で、鉄筋をさびや火熱から守る層です。直接土に接する壁では、原則4cm以上とします。この規定は長期の耐久性にも関わるため、保有水平耐力計算後も適用されます。例えば地中の壁で鉄筋が表面ぎりぎりにあると、現在の計算上の耐力が足りても、湿気などで劣化して将来の性能を保ちにくくなります。
選択肢4
(4)正しい記述です。高力ボルトは鋼材を強く締め付けて接合するボルトです。その孔は原則としてボルト径より2mmを超えて大きくしてはいけません。例えば径20mmなら、孔径は原則22mmまでです。大きすぎる孔は所定の接合性能や施工条件に影響します。この孔径の規定は保有水平耐力計算を行う場合も適用が残ります。同じ接合部の規定でも、適用除外となる別の項と混同しないことが必要です。
周辺知識
構造計算の問題では、『計算の名前』と『省略できる仕様の範囲』を対応させる必要があります。許容応力度計算は、想定した力に対して各部材の負担が許容値を超えないことを確かめる考え方です。保有水平耐力計算はさらに、大きな地震で一部が変形しても建物全体が倒壊しない力の余裕を確かめます。限界耐力計算にはまた別の検証と適用範囲があります。
計算で直接扱う性能の一部は、決まった寸法や配筋方法に限定せずに確かめられます。しかし材料の品質、さびや腐朽への対策、鉄筋を覆う厚さなどは、計算した性能を実際の建物で長期間保つための基礎条件です。そのため『耐久性等関係規定』として残るものがあります。
例えば、数字の上で十分な耐力が出ても、鉄筋が早期にさびて断面が減れば、その計算の前提は崩れます。試験では、ある規定が大切そうかという印象で判断せず、施行令第36条が計算方法ごとにどの条・号を除いているかを確認します。本問は四つのうち、柱主筋と帯筋の緊結だけが該当するという比較です。