学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
建築設備に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、エレベーターは、所定の特殊な構造又は使用形態のものを除くものとする。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。避難階にある非常用エレベーターの乗降ロビーの出入口から、所定の通路・空地等に接する屋外出口の一つまでの歩行距離は、30m以下です。選択肢の40mではありません。
この距離は、建物内の人が逃げる距離だけを考えた規定ではなく、消防隊が屋外から非常用エレベーターへ速やかに近づき、上階で活動できるようにするための配置条件です。消防隊は重い装備や資器材を持って移動するので、ロビーが建物の奥へ遠く離れていると、上階への到達が遅れます。
歩行距離とは、実際に歩く通路に沿った長さです。平面図上の二点を直線で結んだ距離ではありません。例えばロビーから廊下を18m進み、曲がって屋外出口まで15mなら、歩行距離は33mとなり、この限度を超えます。30mという値を暗記するだけでなく、起点はロビーの出入口、終点は条件を満たす屋外出口、測り方は通行経路に沿う、と三つを一緒に押さえることが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。限度は40mではなく30mです。避難階のロビーの出入口から、所定の屋外出口まで実際の経路に沿って測ります。廊下の折れ曲がりや壁を無視した直線距離ではありません。例えば直線では25mでも、廊下に沿うと35mになる配置では適合しません。非常用エレベーターを設置するだけでなく、消防隊が屋外からそこへ到達しやすい場所に配置することまでが法令の要求です。
選択肢2
(2)正しい記述です。昇降路はかごが上下する空間で、床先は乗場の床と、かごの床の端を指します。この二つの床のすき間は原則4cm以下ですが、乗用・寝台用以外で、安全上支障のない大臣指定の構造方法を用いるものには例外があります。荷物用などの所定の設備の構造を考慮した扱いです。一般の人を乗せる乗用エレベーターまで、『安全そうだから』という独自判断ですき間を広げられるわけではありません。
選択肢3
(3)正しい記述です。高さ20mを超え、避雷設備がない既存不適格建築物へ大規模の修繕を行う本問では、避雷設備の基準へ適合させる必要があります。既存不適格は、建設時の適法な状態を一定範囲で認める制度ですが、対象となる工事を行っても永久に旧状態を維持できる権利ではありません。避雷設備は雷の電流を安全に地面へ流し、建物の火災や損傷を抑えるために設けます。
選択肢4
(4)正しい記述です。冷却塔は空調設備で使った水等の熱を屋外へ放出する設備です。地階を除く階数11以上の建物の屋上に置く場合、主要部分を不燃材料にするのが原則ですが、告示で定める防火上支障のない構造方法なら、不燃材料以外を使う例外があります。高い位置の設備火災は消火しにくいための規定です。例外は材料を自由に選べるという意味ではなく、指定された構造の条件を満たして使います。
周辺知識
建築設備の安全規定は、設備ごとの事故の起こり方に対応しています。エレベーターの床のすき間は足や物の挟まりに関係し、避雷設備は雷電流による火災や損傷、冷却塔の材料は屋上火災の拡大に関係します。一見ばらばらな数値でも、『何から人や建物を守るか』を考えると記憶がつながります。
非常用エレベーターは、通常のエレベーターに非常用電源だけを付ければよい設備ではありません。乗降ロビーの防火、屋外からの経路、消防活動に必要な機能などを一体で確保します。火災時に一般利用者が自由にこれに乗って避難することを基本にした制度とは区別します。
本問の数値も測る対象を添えて整理します。30mは避難階のロビーから屋外出口への歩行距離、4cmは乗場とかごの床の水平なすき間、20mは避雷設備の設置を検討する建物高さ、11は冷却塔の規定で数える地上の階数です。単位や起点を省いて数だけ覚えると、別の設備や避難規定の数値と取り違えやすくなります。