学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
既存建築物に対する制限の緩和に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。既存建築物や一時的な用途変更には、建物を合理的に使い続けるための緩和があります。しかし、どの規定を緩和するかは個別に決まっており、許可を受ければ全ての安全基準がなくなるわけではありません。
本問の選択肢4は、既存の建物を一時的に興行場として使い、安全上・防火上・衛生上支障がないとして、1年以内の期限付きの許可を受けたケースです。この制度で適用が除外される規定はありますが、出入口その他の避難施設に関する技術的基準まで除外されるわけではありません。興行場は観客が集まる場所なので、利用期間が短くても、一度火災が起これば大勢の人が安全に逃げる必要があります。
例えば、数週間の公演だから狭い出口一つでよい、としてしまうと、会場内の人数に対する避難の安全が失われます。期限は利用の長さに関する条件、避難施設は一回の事故に対する備えです。両者を分け、緩和対象の条文に避難施設の規定が含まれるかを確かめるのが本問の要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)正しい記述です。法改正前には適法だったものの、新しい排煙基準に合わない既存部分について、所定の増築では基準をさかのぼって適用しない扱いがあります。増築部分と既存部分を開口のない耐火構造の床・壁で区切るなどの条件が必要です。煙や火熱の影響が安易に相互へ広がらない構成にするためです。単に部屋を増やせば常に既存部分が免除されるのではなく、区画と所定の基準への適合を確認します。
選択肢2
(2)正しい記述です。全体計画の認定は、複数回に分ける工事を一つの最終計画として審査し、最終的に法令へ適合させる制度です。既存の利用状況などのやむを得ない事情があり、途中段階の安全などの条件も満たす必要があります。本問では最後の工事に着手するまで当該基準の適用が猶予されます。永久に適合させなくてよい制度ではなく、工事の順序と最終状態を行政が確認して認める猶予です。
選択肢3
(3)正しい記述です。特殊建築物の耐火等の基準についても、火熱遮断壁等で分けた所定の増築では、既存部分に適用しない特例があります。火熱遮断壁等は、通常の間仕切りより強い火災への対応を前提に、部分間の火熱の影響を遮るものです。増築部を安全上独立した部分として扱えることが緩和の条件になります。耐火建築物の規定すべてが無条件で免除されるのではなく、対象規定と区切り方を対応させます。
選択肢4
(4)誤りです。1年以内の一時的な興行場への用途変更について許可を受けても、出入口その他の避難施設の基準は適用されます。短期間の利用であっても、観客が集まる瞬間の危険が小さくなるとは限らないからです。『期限付き許可を受けた』ことだけで適用除外の範囲を広げています。正しくは、制度が列挙する規定に限って緩和され、避難経路など必要な安全条件を確保したうえで利用します。
周辺知識
既存不適格建築物とは、建てた当時は適法だったのに、後の法改正などで現在の基準と合わなくなった建物です。初めから法令に違反して建てた建物とは区別します。すべての既存建物を法改正のたびに直ちに建て替えさせるのは難しいため、一定の範囲で従来の状態を認めています。
一方、増築、用途変更、大規模な修繕などは、建物の危険や使われ方を変える機会です。そのため、新しい基準を既存部分にも適用することがあり、これを一般に遡及適用と呼びます。ただし、工事の規模や防火上の分離方法などに応じた緩和もあります。『既存部分はいつも免除』『工事をすれば必ず全て改修』のどちらでもありません。
本問は、区画によって部分ごとに扱う特例、工事を段階化する全体計画、一時的利用の許可という三つの仕組みを比較しています。前二者では分離方法や最終適合、一時的利用では期限と許可の条件を確認します。どの仕組みでも、免除されるのは指定された規定だけだと押さえると、似た制度を混同しにくくなります。