学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
避難施設等に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。百貨店では、建物に不慣れな多くの客が一斉に避難します。本問は床面積の合計が1,500m²を超え、5階にも売場があるため、屋上広場や二つ以上の直通階段に加え、5階以上の売場に通じる直通階段の少なくとも一つを『特別避難階段』にする必要があります。
避難階段は、火に強い壁や戸などで火災から守った階段です。特別避難階段はさらに、階段室へ直接煙が入りにくいよう、バルコニーまたは付室という間の空間を経由する構成にします。火災階の戸を開けても、煙がそのまま階段全体に流れ込みにくくする考え方です。
選択肢1の屋上広場を設けることや二つ以上の階段を設けること自体は正しいものの、階段を全て通常の避難階段とするだけでは足りません。数だけ二つ用意しても、煙から守る性能の追加条件を満たさないからです。『階段の必要本数』と『各階段に要求する構造』を分けて確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。各階が売場の5階建て・5,000m²の百貨店なので、屋上広場と二つ以上の直通階段を確保するほか、5階の売場へ通じる階段の一つ以上を特別避難階段とします。通常の避難階段を二つ設けただけでは、この追加条件を満たしません。屋上広場は一時的に避難する空間ですが、そこまで安全に移動できる経路も必要です。広場の設置と階段の保護は、それぞれ別に満たします。
選択肢2
(2)正しい記述です。6階以上に居室があると二つ以上の直通階段が原則必要ですが、小規模な居室面積に、有効なバルコニーと屋外避難階段等を備える例外があります。本問は耐火構造なので、その面積限度が200m²となり、6階の200m²は範囲内です。ほかの階も共同住宅の居室合計が200m²を超えないため、設問の条件では二階段義務が生じません。階段が一切不要になる意味ではありません。
選択肢3
(3)正しい記述です。非常用照明は停電時にも避難路を照らす装置ですが、施行令でまとめて『学校等』と呼ぶ用途は設置義務の適用除外です。この法律上のグループには、学校のほか体育館、水泳場、スポーツの練習場なども含まれます。本問のスポーツ練習場はその対象で、2階の居室から地上へ通じる廊下・階段にも設問の設置義務はありません。2,000m²という面積だけで一般原則に戻さない点が要点です。
選択肢4
(4)正しい記述です。全館避難安全検証法は、建物全体から人が安全に逃げ切れるかを計算で確かめる方法です。避難時間による方法では、人が逃げ終わるまでの時間と、煙などが避難を妨げる状態になるまでの時間を比べます。高さによる方法では、避難に支障が生じない高さに煙などがとどまることを確かめます。単に出口までの距離だけを測るのでなく、火災と人の移動の両方を扱う制度です。
周辺知識
避難計画では、『逃げ道がある』『その道まで行ける』『移動中に火や煙に襲われない』の三つを重ねて考えます。二つの階段が必要な場合も、一方が使えなくなったときにもう一方へ逃げられることが目的です。階段室を火に強くしても、その入り口が煙で満たされれば使えないので、特別避難階段では付室などを置いて煙の侵入も抑えます。
避難階とは、直接地上へ通じる出入口がある階です。必ず1階という用語ではありませんが、本問では1階と明示されています。直通階段は、途中で別の階段に乗り換えず、その避難階などまで連続して通じる階段です。『直通』は一直線の形という意味ではなく、折返し階段でも構いません。
同じ避難関係でも、階段の本数、非常用照明、排煙は対象や除外が異なります。例えば本問のスポーツ練習場の非常用照明の除外を見て、すべての避難規定が不要と結論してはいけません。用途、面積、階、構造、特例の条件を、その設備ごとの条文で確かめる必要があります。