学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅲ(法規) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
地上8階建ての共同住宅における直通階段について、階段の両側に手すりを設けるなど、建築基準法施行令第23条第1項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができる階段の構造方法とする場合で、直上階の居室の床面積の合計がA欄のときに、B欄の蹴上げ及び踏面の寸法の組合せとして、建築基準法上、誤っているものは、次のうちどれか。| A欄 | B欄 | ||
|---|---|---|---|
| 直上階の居室の床面積の合計 | 蹴上げ | 踏面 | |
| 1. | 190m² | 23cm | 19cm |
| 2. | 200m² | 22cm | 21cm |
| 3. | 300m² | 21cm | 23cm |
| 4. | 400m² | 20cm | 24cm |
選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。蹴上げは一段上がる高さ、踏面は足を載せる段の奥行きです。蹴上げが大きく踏面が小さいほど急で、避難時にも転倒しやすくなります。そこで階段を使う人数に関係する『直上階の居室の床面積』に応じて寸法を変えます。直上階とは、いま調べている階段のすぐ上の階です。
本問の共同住宅では、その面積が200m²を超える階の階段に、蹴上げ20cm以下、踏面24cm以上が必要です。両側の手すりなど告示の条件を満たしていても、この区分の寸法は緩和されません。選択肢3の300m²は200m²を超え、蹴上げ21cmは上限より1cm高く、踏面23cmは下限より1cm浅いので、両方が不適合です。
一方、200m²以下の区分なら、本問の代替基準により23cm以下・19cm以上とできます。『手すりがあれば全ての階段が23cm・19cmでよい』と一般化せず、まず面積区分を決めるのが判断の順序です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適合します。直上階の居室の合計190m²は、200m²を超えません。この区分の通常の寸法は蹴上げ22cm以下・踏面21cm以上ですが、本問は両側手すりなど、同等以上の安全性を確保する告示の構造方法を採用しています。その場合は23cm以下・19cm以上とでき、23cmと19cmはちょうど限度を満たします。通常基準だけを当てはめると、誤って不適合と判断してしまいます。
選択肢2
(2)適合します。200m²ちょうどは『200m²を超える』区分に入りません。数学の不等号でいえば、厳しい区分の条件は200より大きい場合で、200以上ではないからです。蹴上げ22cm・踏面21cmは、この区分の通常の基準を満たし、代替基準の23cm以下・19cm以上も満たします。代替基準を採用しても、必ず23cm・19cmにする必要はなく、それより昇降しやすい寸法を選べます。
選択肢3
(3)適合しません。直上階の居室300m²は200m²を超えるため、蹴上げ20cm以下・踏面24cm以上が必要です。21cmは高すぎ、23cmは浅すぎます。この区分は、両側に手すりを設けたからといって23cm以下・19cm以上の区分へ移りません。例えば蹴上げを20cm、踏面を24cmへ直せば、問われている二つの寸法条件は満たせます。1cmずつの違いでも法定の限度は超えられません。
選択肢4
(4)適合します。400m²も200m²超の区分ですが、蹴上げ20cmは上限以下、踏面24cmは下限以上です。『以下』『以上』はいずれもその数値を含むため、限度と同じ寸法でも適合します。300m²と400m²でこの設問の寸法区分は変わりません。面積が大きい選択肢を機械的に不適合とするのではなく、その区分に対して段の高さと奥行きが安全側にあるかを一つずつ比べます。
周辺知識
階段の規定は、幅、蹴上げ、踏面、踊場、手すりを組み合わせて安全を確保します。幅は同時に通れる人数に、蹴上げと踏面は歩きやすさに関わります。踊場は途中で水平になる部分で、連続して転落する危険を抑える働きもあります。どれか一つが十分だから、ほかの寸法を自由にしてよいという仕組みではありません。
法令の『代替基準』は、通常の決め方とは別の条件の組合せで同等以上の性能を確保する方法です。本問では手すり等の条件と寸法の表を一組で読みます。告示で緩和される階段の種類と、通常の寸法のままの種類があるため、表の全てを同じ数値へ置き換えてはいけません。
また、一戸建て住宅内の階段に用いる23cm以下・15cm以上という特例を、共同住宅の共用階段へそのまま使うこともできません。住人一世帯が使う階段と、多くの世帯が避難する共用階段では使われ方が違います。『用途→共用か専用か→面積区分→採用する基準→各寸法』と順に整理すると、よく似た数値の混同を防げます。