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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    音圧レベルが等しい純音を聴くと、一般に、100 Hzの音より1,000 Hzの音のほうが大きく感じられる。
  2. (2)
    内装材の吸音率が室内で一様な直方体の室において、その室の平面寸法は変えずに天井の高さを12\displaystyle \dfrac{1}{2}倍にすると、残響時間は12\displaystyle \dfrac{1}{2}倍になる。
  3. (3)
    単一材料からなる壁体の遮音性能について、質量則によれば、壁の面密度を2 倍にすると、透過損失の値は約6dB増加する。
  4. (4)
    孔あき板と剛壁との間に空気層を設けた吸音構造において、空気層の厚みを2倍にすると、共鳴周波数は12\displaystyle \dfrac{1}{\sqrt{2}}倍になる。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。天井を半分の高さにすると室容積は半分になりますが、音を吸収する壁面の面積も減ります。「容積だけが変わり、吸音力は変わらない」として残響時間を半分にした点が誤りです。
残響時間は、音源を止めた後、音圧レベルが60dB減衰するまでの時間です。よく音が混ざる室では、サビーンの式 T=0.161VSαˉ\displaystyle T=\frac{0.161V}{S\bar\alpha} で概算します。V\displaystyle V は室容積、S\displaystyle S は床・天井・壁を合わせた室内表面積、αˉ\displaystyle \bar\alpha は平均吸音率です。室が大きければ音が残りやすく、吸音力 Sαˉ\displaystyle S\bar\alpha が大きければ速く減衰する関係を表しています。
床面積を変えず高さを半分にすると、床と天井の面積は同じでも、周囲の壁の面積は半分になります。吸音率が同じでも総吸音力は減るので、容積の減少による残響短縮の一部が打ち消されます。そのため残響時間は短くなるものの、一般には元の半分より長くなります。変化前後で式の分子だけでなく分母も書き直すことが、比の問題を正しく解く手順です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。純音は、一つの周波数だけを持つ音です。周波数Hzは1秒間の振動回数で、100Hzは低い音、1,000Hzはそれより高い音です。耳の感度は周波数で違うため、同じ音圧レベルでも同じ大きさには感じません。一般に100Hzの低い音は、1,000Hzの音より耳の感度が低く、同じ大きさに感じさせるにはより大きな音圧が必要です。物理的な音圧のレベルと、心理的な音の大きさを区別することが本肢の要点で、単に「低い音はいつも静か」という意味ではありません。

選択肢2

(2)不適当です。残響時間は容積に比例する一方、吸音力に反比例します。高さを半分にすると壁面積も減るため、室内表面積は一定ではありません。例えば床10 m×10 m\displaystyle 10\,\mathrm{m}\times10\,\mathrm{m}、高さ4mなら、容積400立方メートル、表面積360平方メートルです。高さ2mでは容積200、表面積280になります。同じ吸音率なら残響時間の比は、次のとおりです。
200280400360=914≃0.64\begin{aligned}\frac{\frac{200}{280}}{\frac{400}{360}}&=\frac{9}{14}\\&\simeq0.64\end{aligned}
0.5ではありません。数値例でも、壁面積の変化を無視した誤りを確認できます。

選択肢3

(3)適当です。面密度は、壁1平方メートル当たりの質量で、単位は kg/m2\displaystyle \mathrm{kg/m^2} です。質量則では、壁が重いほど音によって動かされにくくなり、透過する音が少なくなります。面密度を2倍にしたとき、透過損失の増加は 20log⁡102≃6 dB\displaystyle 20\log_{10}2\simeq6\,\mathrm{dB} です。透過損失は大きいほど遮音性が高い指標です。ただしこれは質量則が成り立つ範囲の関係であり、共鳴や一致効果などによる遮音低下を含めて、どの周波数でも必ず6dB改善すると断定するものではありません。

選択肢4

(4)適当です。孔あき板の穴の中の空気を重り、背後の空気層をばねと考えると、共鳴吸音の仕組みを理解できます。背後の空気層が厚いほど、空気のばねは柔らかくなり、ゆっくり振動するため共鳴周波数が下がります。他の寸法が同じなら f∝1d\displaystyle f\propto\frac{1}{\sqrt{d}} で、d\displaystyle d は空気層の厚さです。厚さを2倍にすると、周波数の比は次のようになります。
f2f1=d12d1=12\begin{aligned}\frac{f_2}{f_1}&=\sqrt{\frac{d_1}{2d_1}}\\&=\frac{1}{\sqrt{2}}\end{aligned}
厚さに単純反比例して半分になるのではなく、平方根に反比例する点を確かめます。

周辺知識

音響の計算は、響き、遮音、共鳴のどれを扱うかで式が変わります。響きの長さは、室内で音が繰り返し反射して徐々に失われる現象です。残響時間では容積と吸音力を比較します。遮音は、音が壁を振動させて反対側へ伝わる現象で、単一壁では質量が重要になります。共鳴吸音は、特定の周波数で空気や板がよく動くことを利用し、その振動のエネルギーを摩擦などで失わせます。
比の問題では、変更前を添字1、変更後を添字2として、残響時間の比を次のように書くと、変わる項を見落としません。
T2T1=V2V1⋅S1S2⋅αˉ1αˉ2\frac{T_2}{T_1}=\frac{V_2}{V_1}\cdot\frac{S_1}{S_2}\cdot\frac{\bar\alpha_1}{\bar\alpha_2}
今回、平均吸音率は同じですが、容積と表面積の二つが変わります。
また、吸音率を上げればどの音でも同じように響きが減るとは限りません。材料の吸音率は周波数で変わり、孔あき板の共鳴吸音は特にある周波数帯に効きます。体育館の長い響きを抑えたい場合と、機械室から隣室への音を減らしたい場合では、必要な対策が違います。まず現象を日常の言葉で言い直し、その現象の式を選ぶことが大切です。