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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問9

問題・正答・学習用解説

問題

表に示す条件の、拡散性の高い室A、B、Cに、同じ音響パワーをもつ音源があるとき、それぞれの室内の平均音圧レベルの大小関係として、最も適当なものは、次のうちどれか。
室名室表面積(m2\displaystyle \mathrm{m^2})平均吸音率
A4000.25
B2500.10
C1000.40

選択肢

  1. (1)
    A> B> C
  2. (2)
    A> C> B
  3. (3)
    B> A> C
  4. (4)
    B> C> A

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)のB>C>Aです。比較の鍵は、部屋の大きさだけでも、吸音率だけでもなく、両方を掛けた「吸音力」です。吸音率は、壁などに当たった音のエネルギーがどれくらい吸収されるかという割合です。吸音力は、各面の面積にその吸音率を掛けて合計した値で、平均吸音率を使えば As=Sαˉ\displaystyle A_s=S\bar\alpha と求めます。
各室の吸音力を、室表面積と平均吸音率から計算します。
室Aでは、
As=400×0.25=100 m2\begin{aligned}A_s&=400\times0.25\\[4pt]&=100\,\mathrm{m^2}\end{aligned}
室Bでは、
As=250×0.10=25 m2\begin{aligned}A_s&=250\times0.10\\[4pt]&=25\,\mathrm{m^2}\end{aligned}
室Cでは、
As=100×0.40=40 m2\begin{aligned}A_s&=100\times0.40\\[4pt]&=40\,\mathrm{m^2}\end{aligned}
Aが音を吸収する能力が最も大きく、Bが最も小さいことが分かります。
同じ音響パワーの音源が鳴り続けると、入る音のエネルギーと室内で吸収される量が釣り合う状態になります。吸音力が小さい室では、吸収によって失われにくい分、音が反射を繰り返してたまり、平均音圧レベルが高くなります。よって吸音力の大小A>C>Bを逆にして、音圧レベルはB>C>Aです。「吸音率最大のCが最も静か」としない点が重要です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。Aを最大としていますが、Aの吸音力は 400×0.25=100 m2\displaystyle 400\times0.25=100\,\mathrm{m^2} で、三室の中で最大です。同じ音源パワーなら、音を最も多く失わせるAは平均音圧レベルが最も低くなります。Aの表面積400平方メートルが最大だから音も大きい、と考えたなら、面積の役割が逆です。本問の表面積は、音を吸収する面の量を増やす側に働きます。またBとCでは吸音力25対40なので、B>Cという部分だけは合っていますが、全体の順序は成り立ちません。

選択肢2

(2)不適当です。A>C>Bは、計算した吸音力の大小そのものです。しかし問われているのは平均音圧レベルなので、その順を逆にする必要があります。吸音力が大きいほど反射音のエネルギーが失われやすく、室内にたまる音は小さくなります。水槽に同じ量の水を入れ続けるとき、排水口が大きい水槽ほど水位が低く保たれるのに似ています。音を入れる音響パワーを給水、吸音を排水、たまる音を水位に対応させると、吸音力と音圧の大小が逆になる理由を理解できます。

選択肢3

(3)不適当です。Bは吸音力 250×0.10=25 m2\displaystyle 250\times0.10=25\,\mathrm{m^2} で最小なので、音圧レベル最大とした部分は正しいです。しかしAとCを逆にしています。Cは吸音率0.40でAの0.25より高いものの、表面積は100平方メートルしかなく、吸音力は40平方メートルです。Aは100平方メートルなので、全体としてはAの方が多く吸音します。材料の吸音率という単位面積当たりの性能と、部屋全体にどれだけの量を使っているかを掛け合わせて判断します。

選択肢4

(4)適当です。各室の吸音力はB25、C40、A100 m2\displaystyle \mathrm{m^2} で、小さい順にB、C、Aです。同じ音響パワーで、拡散性が高く反射音がよく混ざるという条件では、平均的な音のエネルギーは吸音力の小さい室ほど大きくなります。したがって平均音圧レベルはB>C>Aです。表を解く際には、まず各行へ面積×吸音率\displaystyle \text{面積}\times\text{吸音率}を書き、次に「吸音が大きいほど音圧は小さい」と矢印を逆向きにすると、計算の誤りと大小の取り違えを別々に点検できます。

周辺知識

吸音と遮音は別の働きです。吸音は、その室の中で反射する音を減らして響きを抑えることです。遮音は、壁などを通して隣室へ音が伝わるのを抑えることです。室内に吸音材を貼って響きを減らしても、薄い壁の透過性能がそのまま高くなるとは限りません。
吸音力の単位が平方メートルなのは、「吸音率1の面なら何平方メートル分に相当するか」で表すためです。例えば吸音率0.25の面400平方メートルは、理想的に全て吸う面100平方メートル分に相当します。この考え方なら、吸音率が高い小面積と、吸音率が低い大面積を公平に比較できます。
本問の条件で反射音を主体に単純化すると、音圧レベル差は吸音力の比の対数で求められます。BとAの差を計算すると、次のようになります。
まず、吸音力の比を求めます。
10025=4\frac{100}{25}=4
この比の常用対数をとり、10を掛けます。
10log⁡104≃6 dB10\log_{10}4\simeq6\,\mathrm{dB}
Bが約6dB高い関係です。吸音力が4倍でも音圧レベルが4分の1という言い方はしません。デシベルは比を対数にした尺度だからです。音源のすぐ近くの直接音が強い場所ではこの単純な比較が崩れるため、「拡散性の高い室」「平均」という設問の条件にも意味があります。